祝・高校入学 2
Lovely sisters Love 第2話です。
今回は少し過去にも触れました(?)
隼人になったつもりでお楽しみください。
私立水瀬川学園―県内有数の進学校であるこの高校を志望する受験生は後を絶たない。西野隼人その人もそんな受験生の中の1人である。ただ隼人は他の受験生とは少し変わっていた。多くの受験生はこの学校の名前と進学校としての実績で選び受験してる。だが隼人は「自分の姉ちゃんたちが通ってるから」という理由で選んでいる。他人には決して言えないほど不純な動機である。
だが、県内トップクラスの進学校である水瀬川学園に入学するというのはそう容易なものではない。それは隼人も重々承知していた。進路決定に伴う相談面接で隼人は「絶対水瀬川に入りたいんです!」と強い意思表示を見せていた。現実はどこまでも残酷であり、隼人の成績は水瀬川学園には到底届かないものであった。
―絶対に姉ちゃんと同じ学校に入る―
決意を新たに一生懸命隼人は勉強した。それこそ寝る間を惜しむようにして。ここまで隼人を動かすのは将来への希望や誰かからの期待などではない。ただただ姉への愛着と固執のみである。
同様に高校受験を控えた聡美は迷うことなく水瀬川学園受験を決意。隼人とは対照的にその成績は申し分なく、合格圏内を維持し続けた。
結果は2人とも無事合格という形にはなった。聡美は危なげもなく通過したのに対し、隼人は瀬戸際での合格というハラハラする受験となった。
「姉」という存在は、どんなエンジンよりも力強く隼人を引っ張っていく。
その存在が隼人の動力源となり、たゆまない努力を産み、このような結果を産んだことは疑う余地もないことである。
「隼人ちゃん、さっちゃん、入学おめでとう~」
正門前でそう言って迎えてくれたのは、西野家長女、西野心春。心春は隼人たちの2個上で、春から高校三年生となる。心春は長女でありながら、おっとりした性格であり、いつも場の雰囲気を和ませてくれる癒しの存在である。隼人たちの高校受験を終えたばかりだというのに、心春の大学受験が控えているというのは、両親にとっても大きな心労となることだろう。
「ありがとうここ姉、こんなとこにいて平気なの?」
「ほんとは在校生は体育館で待機なんだけど~えへへ」
心春は言葉を濁した。どうやら抜け出してきたらしい。
「りの姉に見つかったらまた叱られるよ?」
「大丈夫大丈夫~!許可はもらってきたから!」
りの姉こと、柴咲涼乃というのは、心春の同級生である。心春とはいつも行動を共にしていて、お目付け役となっている。
「う~ん、さすがにそろそろまずいかな?涼乃ちゃん怒ると怖いんだよねぇ」
「ここ姉が怒らせるからじゃん…」
ここでハッキリといえば心春の行動も治るのかもしれないが、強く言えないのは隼人の姉への甘さからか、それとも心春というひとが憎めない性格をしているからなのだろうか。
「じゃあ私は戻るねっ!またあとでっ!」
そう言い残して心春は体育館へと戻って行った。
「ほんとに大丈夫かな…」
「隼人じゃないんだから、大丈夫よ りの姉もいるしね」
「そっか」
入学式はクラスごとの入場、クラスごとの席というありきたりなもので、貼り紙の出される昇降口の前には人混みができていた。
「ほんと変わんないよなこれは」
「文句言わないの 早く行くわよ」
同級生たちの波をかきわけ、素早く自分のクラスを確認する。
「俺は4組か…聡美は?見れた?」
「ばかにしてんの?私は2組よ 別のクラスになったわね」
「残念」
「ずいぶん素直ね」
「俺は姉ちゃん大好きだからね」
「場所をわきまえなさいよっ」
聡美と軽口を叩き合ったあとそれぞれのクラスへと向かう。
「じゃあまたあとで」
「ちゃんと友達作りなさいよ」
「わかってる、ありがと」
胸の中は期待と不安でいっぱいになっている。
「せっかく入れたんだ、楽しまないとな」
隼人は足早に自分のクラスへと向かうのであった。
お疲れ様です。
本編はいかがだったでしょうか。
前回の内容は少し短く感じたので、少し伸ばしてみようと思ったのですが、思った以上に伸びてしまいました。
内容・量などのご意見がございましたらぜひぜひお聞かせください。
作品に対しての感想もお待ちしております。
ではまた、第3話でお会いしましょう。
2015/3/18
姫里樋波