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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
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必要なのは

「俺が誘うべきなのか?」

 改めて自分の考えを解き直す。明日の朝になるまではどうなるかは分からない。自分達の協力を向こうが必要としているかどうか。もし、協力するなら責任の重さが一段と大きくなる。

「俺が誘うより、空本(そらもと)さんと羽柴(はしば)さんが友達という設定にして、二人で誘えばいいかもな・・・」

 ふと思うことは俺の必要性。俺はこの作戦にはほとんど不要であると考えてしまう。

「そこから空本さんが俺を誘う方向かもな」

 ベッドから落ちそうになるすれすれの所で俺は寝転んでいる。右腕がだらんとなり、左手で携帯を見る。そろそろ充電が切れそうだった。充電器を探してコンセントに差してから俺は眠りにつく。



「私、そちらの解決策を採用することにしました」

 羽柴さんが指を指したのは紛れもなく俺だった。つまり、今週の土日は確実に潰れることと同義だ。

水本(みずもと)君、私考えたんだけど・・・」

 空本さんが手を挙げる素振りを見せる。

「私と羽柴さんの二人で誘ってからその後で水本君を誘った方がいいかなって思うんだけど、どう?」

 俺も昨日考えたことだ。

「あー、それもそうかもだな。俺が突然誘うってのもちょっとおかしかったかもな」

 ここで俺も考えてたんだよとか言うやつは、負けず嫌いでしかない。というか嫌われるな。

 空本さんも考えてくれていたんだな。もう、俺はこの部活を辞めても特に問題無いかもな。

 退部届けを受理してくれるかな? あの顧問。

 絶対に目の前で破り捨てられそうだな。

「羽柴さんもそれでいいかな?」

「はい、それでいいです」

 部活の活動方向が決定した所で、この後の予定をじっくりと話し合う。しかし、問題も発生する。

「土曜日にしますか?」

 羽柴さんが曜日について尋ねてきたときだ。

「俺は日曜日にしてほしいかな」

「なんか、予定でもあるんですか?」

 一応、バレーボールの練習なんですよね。早見(はやみ)玲那(れな)ちゃんという運命の出会いをしたような雰囲気を持つ後輩。もしかしたら、来年にはこの高校に来るかもしれない女子。

「あります」

「じゃあ、えーと、そ、空本さんも日曜日ということでいいですか?」

「ごめんなさい、日曜日は朝から予定があるから、土曜日にお願いしてほしいの」

 まさかの空本さんが日曜日に予定ある。

 空本さんの予定なら、想像も付かないほどの予定に違いない。対して俺は、将来の後輩とバレーボールの練習という微妙な予定が入ってある。

 これは俺が妥協しないといけないかもしれない。

 あとで、玲那にメールで日曜日にしてほしいと送っておこう。それで無理なら勉強会を土曜日の夕方にしてもらおう。それしかないな。

「俺の用事は大したことないし、土曜日でいいよ」

「水本君いいの? 別に気なんか使わなくてもいいから」

 いやいや、気を使わせるような言い方だったよ。

「時間はどうしますか?」

「二人はどうしたいの?」

 ここで俺の土曜日の運命が決まる。先に答えを言ってくれたのは羽柴さんだった。

「昼前に集合して、そこからご飯食べて、それから勉強会を開きたいです」

「私は何時でもいいよ」

 つまり、昼前ということになる。

 どうしよう・・・玲那が日曜日は無理ですとかメールで返ってきたら、俺詰みそうだ。

「水本君は?」

「昼の一時ぐらいにしてほしい」

 精一杯の発言だった。最悪の場合、練習を終わってからすぐに待ち合わせ場所に向かうとして、練習を早めに終わらせて、そこから一時間かかると想定して昼の一時という結果が導き出された。

 あくまで、最悪の場合。玲那が日曜日でも大丈夫ならそこまでしんどい思いをする必要はない。

「じゃあ、その時間を予定にするけど、その気になる人にも予定があるかもしれないから、なるべくその人に合わせることにしておこう」

「それじゃあ、話し合いはこれで終わりかな?」

 空本さんがそう言い、俺は時計を見る。

 やっと八時になった頃だった。

「それじゃあ、昼休み頑張ってね」

 俺は激励とも言えないレベルの応援をしてから、部室を出ていく。次は放課後に話し合うはずだ。


 俺が出てから、しばらくしても空本さんは教室に来なかった。おそらく、誘う時に何を言うかまだ部室で話し合っているのだろう。


 昼休みになり、空本さんは弁当を持ち、教室を出ていった。俺は心の中で成功を願った。

「村上君は、試験勉強始めた?」

「今日から本格的にするつもり」

「そっか、昨日まで部活だったんだっけ?」

「ほんと、練習って疲れるから家帰ったらすぐに寝るから、普段は朝早くしてる」

 二人で弁当を食べて、のんびりと過ごす。

「水本君は今日の放課後空いてる? よかったら、どっかで一緒に勉強しない?」

「了解。ファミレスとか?」

「どこでもいいよ」

「放課後に歩きながら考えよっか」

 放課後に約束して、俺は先にご飯を食べ終える。


「バレーの練習なんだけど、土曜日に予定が入ったから、日曜日にしてもらえますか?」

 トイレで簡単にメールを送った。

 送信してから一分もしないうちに返信が届く。

「OKです。日曜日楽しみにしてます。時間はそのままですよね?」

 一分でここまで書いたとか最近の中学生って、どんな教育されてるんだ。二十年後が怖い。

「時間はそのままで大丈夫。急な予定変更すみません」

 返信すると、またすぐに返ってくる。

「それじゃあ、今度勉強教えてくださいね♪」

「了解です」

 そう返信してトイレから出ていく。

 とりあえず、最悪の場合は回避できた。


「あっ、水本君」

 トイレから出ると、空本さんと羽柴さんがいた。

「上手く誘えた?」

「上手くとはいかなかったけど、ちゃんと誘うことはできたよ」

「それじゃあ、土曜日もよろしくお願いします」

 羽柴さんは頭を下げてお礼をしてくれた。

「頑張るのは俺たちじゃなくて、羽柴さんだから」

 そこはあくまで言っておく。

「それじゃあ、また土曜日に」


「今日部活どうする?」

 空本さんから会話が始まる。

「俺、ちょっと用事あるから休ませて」

「うん。分かった、詳しいことはメールで」

「了解」


 最大の山を越えて、少しホッとする。


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