入学式
四月七日。
俺の高校生活の始まりの日。
しかし、気分は最悪なものだった。
遡ること二日前。
「水本翼さんを『結婚不適合者』に認定することをここに記す」
封筒のなかに書いてあったそれは、俺の人生のなかで、一番のサプライズだった。
その夜、家族の前でそれを見せると、全員笑っていた。俺は少しだけ泣いていた。
このことは真由には言わないことにした。言えば、色々と問題が起こりそうだったから。
高校生で「結婚不適合者」になるというのは、余程のことがない限り、そうそうあり得ないことだと思う。それにも関わらず選ばれてしまった俺は、ひどいものだ自覚する。
認定された理由などは書かれていなかった。
自分で見つけろ的なことなのだろうと思うが、見つけられる気がしない。
最低三年間は「結婚不適合者」として過ごさなければならない。しかも高校三年間という人生で一番大事で最後の青春の時代に。
まぁ、青春なんかどうでもいいんだけど。
最も、誰にも言わなければいいだけの話だから、普通に過ごせるだろう。そう思ってた俺だったが、入学して、約一週間でその目論見が崩れるということをまだ知らなかった。
進むこと二日。
俺は、電車に乗って、常清高校の入学式に向かっていた。
妹の空と、友人の柳井真由さんに、普通と言われた制服を着ている。新しいカバンの中には、筆箱、財布、あと小説を入れている。電車の中は混んでいるものの、ぎゅうぎゅうというほどのものでもなかった。
電車を降りると、制服を着ている高校生でいっぱいだった。多分みんな新一年生だろう。
俺は少しだけ緊張していた。不安もある。
だから、みんなの後ろをついていく。すると、不安が減ってゆく。
みんなでやれば怖くない理論が成り立つ。
そして、学校の校門の前に着く。
校門の前の看板に、第六十五回常清高校入学式と書かれていた。
俺は初めて高校生になったことを自覚できた気がする。
校門を抜けると、ある一つの行列が出来ていた。俺はとりあえず、その行列の一番後ろに並んだ。行列が前に進むと、クラス分けの貼り紙があった。
そして、貼り紙を見て自分の名前を探す。水本という名前は下から見た方が早い。
俺はD組だった。一学年は三百人。クラスは全部で八クラスで、一クラスでは三十七人のクラスと三十八人のクラスがあった。
特に、同じ中学の人もいないので、一人で体育館に向かうしかなかった。
体育館は、後ろに保護者席があり、その前に新入生が座っている。右がA組。左がH組。俺は、D組のところまで行った。出席番号順で三列に並ぶらしい。
俺の出席番号三十二番だった。そして、十一列目の真ん中の席に座った。隣はどちらも男子。少しだけ気が楽だった。両方女子だったら、地獄だろう。俺は、カバンの中の携帯の電源を切った。
しばらくすると、教頭先生が、マイクの前に立っていて、周りが徐々に静かになっていった。
「ただいまより、第六十五回常清高校入学式を執り行います」
司会の教頭先生が、そう言って、
「校長先生より式辞がございます」
校長先生が、壇上に上がり話始める。
「本日は、大変良いお日柄でーーーー」
以下省略。
校長先生の話が終わり、壇上から降りると、拍手がほんの少しだけ喝采した。
校長先生、頑張ってください。
「新入生代表挨拶。新入生代表一年B組 清水連」
「はい」
すると、眼鏡をかけたいかにも優等生の男子が壇上に上がった。こういうときに茶髪でチャラチャラした奴が新入生代表だったら、俺はキレるよ。
新入生代表の挨拶が始まった。
以下省略。
そして、新入生の担任の紹介が始まった。
俺のクラスの担任は、見た目は、可愛いが多分、三十路手前の女性だと思う。名前は、森野絢夏というらしい。
そして、入学式が終わり、俺たちは教室に向かった。




