表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
80/112

後輩と過ごす昼

「いらっしゃいませー、何名様ですか」

「二人です」

「ただいま、禁煙席が満席となっておりまして、喫煙席になりますが、よろしいでしょうか?」

 俺は玲那ちゃんに目で問いかけたかった。

「玲那ちゃんは、禁煙席がいいよね?」

「うん。タバコの臭いはちょっと・・・」

「禁煙席が空いたら案内してもらえますか?」

「では、こちらに名前を記入してもらって、禁煙席の方に丸で囲ってお待ちください」

「分かりました」

 俺はボールペンで自分の名字を書き、店員の指示に従い丸を囲う。

「お昼ってやっぱり混んでますね」

「そうだな」

 一応、財布の中身を確認はしたが、大丈夫な金額は入っていたため安心だけはしておく。

「あっ、そうだ、連絡先教えてください」

「アドレスでいい?」

「先輩はラインとかやってないんですか?」

「やってないんですよー」

 そもそも、グループになるほど友達いないし、二人きりのグループになるならメールでいい。

「・・・・・・そうですね、先輩とはメールでやりとりしたいかもしれないです」

「気使ってくれてありがとう」

「それじゃ、アドレスと電話番号教えてください」

 連絡先に男子の名前がほとんど無いことに気づいてしまった。本当に友達がいないんだな。

「メール送りますね」

 自分の携帯の着信音が鳴る。

「来た。登録しとくね」

 連絡先を保存して、待ち合い席に並んで座る。


「やっぱり、この時間は人がいっぱいですね~」

「ランチタイムだし、家族連れが多いようだな」

「疲れちゃいましたね」

「俺も久しぶりに運動したから疲れたー」

「久しぶりってどういうことですか?」

「最後にやったの、受験のちょっと前だったから、二月ぐらいだったかな?」

「これからは、毎週するんですよね?」

「うーん、毎週とまではいかないけど・・・」

「二名でお待ちの水本(みずもと)様~」

「あっ、呼ばれた」

 変なタイミングで呼ばれて、会話は中途半端なまま終わってしまう。

「こちらへどうぞー」

 二人用テーブルで、ソファー側を玲那(れな)を、俺は椅子の方に座った。これがさりげない優しさだと俺は信じてるよ。


 メニューを開き二人で注文を決める。思ったより顔が近くて少しドキドキする。更年期かしら?

 自分はオーソドックスなハンバーグを頼もうとした。玲那は少し悩んでいた。

「何頼む?」

「うーーん、和風スパゲティにしまーす」

「ドリンクバーもいるよね?」

「それはもちろんですよ」

 呼び出しボタンを押し、店員さんが注文を取りに来る。互いが決めたものとドリンクバーを二つ頼んだ。

「荷物見てるから先にドリンク行っていいよ」

「あ、ありがとうございます。お言葉に甘えます」

 席を立ち、玲那がドリンクバーまで歩いてく。少し並んでいるようで時間がかかりそうだ。

「お待たせしましたー」

「じゃあ、俺も行ってくる」

「いってらっしゃーい」

 玲那はがっつり炭酸飲料を並々入れていた。女の子って大体、カフェラテ的なもの入れてくるイメージだけど。

 結局、自分も炭酸飲料を注いで席に戻る。

「それじゃあ、先輩・・・かんぱーーーい」

「かんぱーい」

 ずっと思ってたけどテンション高すぎるよね。

 ゴクゴクと喉を通っていくシュワシュワした炭酸が疲れを飛ばしていく。

「ぷはぁ」

 ビールでも飲んでらっしゃるのか? この子面白いな。友達だったら最高なんだろうな。

「あー、毎週は来れないって話だったんですけど、どうにかなりませんかね? 私も先輩と練習したいんです。何とか毎週土日のどっちかでいいんで一緒に練習しませんか?」

 私も先輩と練習したいんですって、まるで俺も玲那と練習したいみたいじゃないか? まぁ、したくないって言ったら嘘にしかなりませんけど。


「毎週は無理かもしれないけど、なるべく・・・お望みには応えようと思う」

「具体的には?」

「えーと、例えばある週が無理だったら、その次の周は土日の二日とも練習するとか?」

「なるほどー、いいですね!!」

「月に四回ぐらいは一緒に練習出来るはず」

「分かりました。それで手を打ちましょう」

 俺、この子の扱い方全然分からない。


「こちらハンバーグでーす。鉄板の方熱くなってますので、ご注意ください。こちら和風スパゲティでーす。ご注文は以上でよろしいですか?」

「はい」

 そう言ったのと同時ぐらいで他のテーブルに注文を取りに行っていた。大変だな。バイトするならしんどくないのがいいな。

「「いただきます」」

 ナイフとフォークでハンバーグを食べやすい大きさに切り刻み、それをライスと一緒に箸で食べる。

 箸でハンバーグ食べるって変なのかな?

 それにしても、ハンバーグとライスって、ベリーにデリシャスでホットホットしてて、アイウォントウォーターって気分になる。

 俺が欧米化してしまったようだ。


「先輩、ハンバーグ一口くださーい」

「いいよ」


 気軽にいいよって言ってしまったが、箸は変えた方がいいのだろうか? 自分が使ってる箸を相手は気にするのではないか?

 いや、考えるな。感じろ。

 俺は勇気を振り絞り、自分の箸でハンバーグを一つつまみ、彼女の口へと運んでいく。


「熱いから気をつけてね」

「はーい・・・・・・ハフッ、熱い熱い」


 彼女のハフハフと言っているその表情は可愛いけど、少しだけエロさも垣間見える。中学生に俺は何を考えているんだろう。俺は性欲強いのかも。


「先輩、代わりにスパゲティあげます」

「いや、いいよ」

「はいはい、あーん」

 フォークに絡まったスパゲティの固まりを無理矢理に口に入れられる。

「おいしいですか?」

「うん。おいしいよ」

「じゃあ、もう一口いっちゃいましょう」

 なんだその飲み会みたいなノリ。

 俺はもう一口いただき、俺ももう一口彼女にハンバーグを食べさせる。やはり、少しエロい。


「ふぅ、おいしかったー。ごちそうさまー」

「先輩食べるの早いですね、私はもう少しなんで、ちょっと待っててくださいね」

「いやいや、ゆっくり食べていいから、ドリンク取ってくる。なんか持ってこようか?」

「それじゃあ、先輩と同じのを一杯」

「了解」

 グラス二つ分を持ち、テーブルに置く。運動してすぐに食べたら眠気がやっぱり来る。軽く欠伸をして、身体を背筋から伸ばしていく。

「先輩、退屈してるんですか? それなら、早く食べないと」

「いや違うから、単純に眠くなっただけだから」

「それが退屈って言うんじゃないですか?」

「運動して食べたからだよ」

 ちょっと背伸びの運動をしただけで相手にそんな思いをさせるなんて、人間って面倒くさいな。

「ふぅぅ、ごちそうさまです」

 食べ終わって、一息をつく。さすがに食べてすぐ体を動かしたら吐き気とかくるから、ゆっくり飲み物を飲みながら、談話でもする方がいい。


「せんぱーい、勉強教えてくださいよー」

「また、今度な」

「じゃあ、来週は勉強の用意もしてきます」

 あっ、来週も練習あるのかと心の奥で呟いた。

 それにしても、同じ学校でもないのに、先輩と呼ばれるのは違和感があるな。もし来年、玲那が常清高校に来るなら先輩って正式呼ばれるんだろうな。


 こんな感じで談笑してから、お会計に向かった。

「私も出しますよ」

「俺が出すから」

「誘ったのは私ですから、少しは出させて下さい」

 二人で合計は二千円もいかない。果たして、彼女にいくらの支払いを求めればいいのでしょうか? 弁護士のみなさん教えてください。

「じゃあ・・・・・・やっぱり俺が払う」

 後輩に支払いを要求するのは恥ずかしい。

 彼女は引き下がろうとしなかったが、この混む時間帯にレジも並んでいた。彼女も諦めがついた。

「先輩、ごちそうさまでした!!」

「うん」

 ちゃんとごちそうさまでしたと言ってくれるのが好感が持てるよね。


「それじゃあ、今日はお開きということで」

「そういえば、先輩って彼女いるんですか?」

「いや、いないけど」

「じゃあ、立候補してもいいですか?」

「えっ!?」

 俺は素で反応してしまった。

「ハハッ、冗談ですよー」

「で、ですよねー」

 どうやって、そんな冗談を覚えたんですか? そんな男心をくすぐるようなことを言ってはだめ。勘違いをしてしまうから。

「でも、少しは考えておいてくださいね♪」

「あっ、うん」

 帰り道にこんな話をしないでもらいたい。


 ここでお別れという場所に到着したらしい。

「それじゃあー、また来週ー、メールもしてきてくださいよー。絶対ですよー」


 彼女は嵐のように去っていった。


 汗が染み込んでる着替えはスポーツバッグの中にある。なるべく早く洗濯をしないとな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ