公園
「ありがとーござーした」
コンビニ店員のやる気ゼロの挨拶を聞き流し、真由とコンビニの外を出て、家まで歩いていく。
真由は歩くのに疲れてしまったらしく、近くの公園に入る。夜なので、もちろん子供とかは俺たちを除いては人っ子一人いない。むしろスポーツ用のジャージを着てランニングをしているおじさんがいるくらいだ。
公園のベンチに腰を落とし、真由は紙パックのレモンティーを、俺は炭酸飲料を購入し、ペットボトルの蓋をひねって開ける。俺のからはプシュッと音が漏れだす。歩いていた分揺られていたのだろう。
「外ってこんなに暗いんだね」
「夜はこんなもんだろ」
「出歩いてるの?」
「たまーにコンビニで買い物するぐらい」
勉強してると、ふと体を動かしたい衝動に駆られるときがある。そんなときにコンビニまで歩いたり走ったりする時間が存在している。家からちょうどいいぐらいの距離のコンビニだからだろう。遠くてもチャリを使えばいいんだけどな。
「ふわぁーぁ・・・ね、眠いー」
真由の欠伸だ。なんと可愛くて可愛いんだろう。
「ここで寝るの?」
「じゃあ、肩貸してね」
真由は頭をコツンと肩の方に乗せてくる。
これは卑怯だ。男子高校生が電車に座ってるときにされたいこと第一位じゃないか! ちなみに第二位は足を踏まれたいだっけ?
「なーんてね、こんなところで寝ちゃったら翼も私も風邪引いちゃうじゃん」
「だ、だよねー」
俺って動揺が見え隠れしているんだよな。あー、すごく恥ずかしいよ。
「ねぇねぇ翼、学校で気になる人っている?」
「・・・・・・」
真由の質問には答えにくい。真由の言う気になる人というのが、好きな人という意味なのか単純に面白い人とかで気になるという意味なのか。
「気になるってわけじゃないけど、一緒にいて楽しいって思う人はいるよ」
「それって、女子? 男子?」
どうしてそこまで聞くんですか?
女子って言ったら真由が怒りそうな予感。だがあえてここは・・・
「両方だよ」
「何それ?」
「言葉通りの意味だよ」
村上君と空本さん、この二人ですけどなにか?
「私は使い捨て幼馴染なんだ」
「俺がいつ使い捨てたんだよ」
「中学校に入ってからだよ」
中学校のことは闇と言っても過言だな。闇ってほどでもない。いじめではなかったし、ずっと一人だったから無視されてるとかも考える必要も無かったし、ただ、自慢にも思い出にもならない。
「ずっと、一匹狼みたいに気取ってたよね」
「的確なご指摘ありがとうございます」
一匹狼というよりぼっち堪能生活してただけ。友達の作り方が分からなかっただけです。
「クラスに見に行っても、読書とかしてたし」
クラスの中でグループがもう出来てたから、そのタイミングで交ざろうとしても、軽く迷惑だろ。だから、やることなくて読書に浸ってたんだよ。
「これからは違うよね? 私とは良い関係になるよね」
「そうなりたいな」
良い関係なんて俺が地方の大学に入って一人暮らしを始めたら解消されるかもしれない。
だから、今だけのんびりこの関係でいたい。
「レモンティー飲む?」
「いや、これあるから」
炭酸飲料を指差し、申し出を断る。
「レモンティー飲む?」
「いや、だから、これあるから」
「レモンティー飲む?」
「いや・・・・・・飲みます」
真由からストローの刺さったレモンティーの紙パックを受け取る。ペットボトルなら間接キスを巧く避けられるんだけど、紙パックとストローなら確実に間接キスコースに流れてしまう。
「じゃあ、俺の飲み物もどうぞ」
真由に飲みかけのペットボトルを渡す。真由は喜んでそれを手にする。
俺は特に気にしてませんよというスタンスでストローを口に入れる。真由がニヤニヤしてこっちをジーっと見てくる。チューと吸ってレモンティーを喉の奥へ流し込む。そこまで好きでもないが、まぁ、美味しかった。紙パックを真由に返す。
「あっ、待って私もこれすぐに飲んで返すから」
ペットボトルを一気に傾けて口の中へ入れる。
「ケホッケホ!?」
勢いよく飲みすぎてむせてしまったようだ。
「大丈夫か? ゆっくり呼吸して」
「う、うん。ケホッ!! だ、大丈夫だよ。ケホ!?」
言ってること真逆なんだけどな。軽く背中をさすって落ち着かせて咳を止めようとする。でも、明日になったらほとんど治ってる。時が解決する。
「あんまり喋るな」
「うぅ、ごめんなさい・・・ケホッ」
「もう夜も遅いし、帰ろっか」
真由は一度、口を尖らせてたが、咳をすると諦めたようにコクンと頷いていた。
「帰りも手を繋いでいたい」
公園は家のすぐ近くではあるけれど、このお願いは聞いてあげるのが俺の正しい正義だ。家までの間も咳を繰り返していた。大丈夫かと聞いたら、大丈夫だよと言い返す。
「急な無茶なお願いに応えてくれてありがと」
「夜にコンビニ行くぐらい無茶でも何でもないよ」
「来月になったら部屋に突入するから」
「お待ちしております」
突然、ギューっと抱きしめられる。
抵抗するだけ無駄だし、抱かれてるのは気持ちがいい。真由とは身体がフィットする。別に他の人と体験してるってわけではないが、なんか真由は妹と比較してだが、抱きしめやすいと感じる。
「これであと半月は耐えられる」
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみ~、翼~」
俺たちを互いに逆の方向を向いて歩いて、玄関に入っていく。もう風呂は沸いているのだろうか?
少し冷えている体を温めたいな。
あっ、真由にパーカー渡したままだった。
また、今度会ったときに言っておこう。
あっ、翼のパーカー借りたままだった。
今度、会うまで大事に保管しておこう。




