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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
77/112

コンビニ

「夜空いてますか? 会いたいよー」

 真由(まゆ)からだった。久しぶりのメールに若干の喜びを噛みしめてから、メールの返信をする。

「大丈夫です。晩ごはんの後でもいい?」

 そういえば、今日は13日の金曜日だったような・・・何か不幸とか起きないことを願いつつ、鼻歌をしながら歩いていく。


 今日は体育の授業により、筋肉痛があったり無かったりと普段使わない筋肉をいきなり動かすと、尋常ではないぐらい疲れと眠気で満ちてしまう。

 晩ごはんをとっとと食べ、パーカーを羽織って真由にメールをする。三十分後に家の前で集合ということにしておく。女の子には出かけるのに準備があるという知識が俺にはある。

 かくいう俺は、準備をすることもない。身だしなみも整ってるし、必要なものは財布ぐらいだ。携帯の充電は・・・まぁ、使うこともなし、帰ってきてからでも大丈夫だろう。

 メールをしてから二十分後。

「ちょっと、外に出てくる」

「うーん、いってらっしゃーい」

 俺は妹のこういうところが好きだ。普段はお兄ちゃんと呼ぶけれど、良い意味で俺にそこまで関心がない。ちょっとは心配とかしてくれてもいいのに。


 外は春も過ぎ去って暖かいのかと思ってたが、今日はそこまでだ。パーカーを着てきたのは正解だ。

 少しの時間を待つのは日常的なものだ。でも、夜に人の家で待つのは犯罪臭がするから気落ちする。下手すりゃ職務質問、略して職質される。

 真由の家の玄関からいってきますと声が聞こえてきた。大体二週間ぶりぐらいに実物に会う。写メが送られてきたのもあるけれど、やっぱり話したい。


 ガチャとおそらく玄関を開ける音が出た。

「待っててくれたんだ。ごめんね急に」

「全然待ってないから」

 少しよそよそしいな。引っ越しとかするフラグなのか? はたまた何万人に一人がなる病気だったりするのか? それなら俺は真由を支えるぞ。

「それじゃあ、どこか歩こっか」

 今日の真由はなんか寂しそうな雰囲気をかもし出してるんだよな。どうしたんだろう?

「その前に、どんだけ薄い格好なんだよ」

 俺は真由に自分のパーカーを着させる。肩は丸出しで短めのスカート履いて、胸もちょっと強調してるし、さすがに夜にその服は危ない。

「ありがと・・・すぅーー。ふふっ」

 短時間でそこまで臭いは付かないから。そんなクンクンしなくてもいいんだよ?

「じゃあ、近くのコンビニまで歩く?」

「うん」

 近くのコンビニまでと言ってるけど、そこまで近くでもない。歩けば十分ぐらいかかるところだ。

 どうしよう? 手でも繋いだ方がいいのかな? 恋人でもないのに繋ぐのはダメなのか。

 よし、手を軽く握ってみて嫌って顔をしたら、すぐに放そう。自分の手を近づける。


 ギュッ。


 軽く握ると、強く握り返された。真由の指が俺の指と指の間に絡めてくる。恋人繋ぎだったのだが、握り返されるとは思っていなかった。

 パーカーの下は半袖のために涼しいけれど、体の中から熱が伝わる。汗がどんどん出てくる。

「コンビニで何買うの?」

「えっ、えーと、雑誌でも買おうかな~?」

 金曜日に売ってる雑誌って文字どおりフライデーぐらいしか無いのかな? そもそも金曜日に売るのかな?

「私は飲み物でも買っちゃおうっと」

「奢るぞ」

「やったぁ」

 繋がっている手をぶんぶん振りまくる。

 真由は幼さが残ってるから可愛いよなぁ。

「・・・ねぇ、腕組みたい」

「腕?」

「手よりも腕でやってみたい」

 真由が俺の腕にギュッと抱きついてくる。

 これはこれで最高じゃねーか。こんなことするこは小学生の低学年以来だったような。これは自慢が出来る。


「そういえば、最近、学校とかどう?」

 会話に困ったら、相手のことを聞こう。ただ、今の質問は父親かと言われてもしょうがない。

「学校は特に何にもないよ。でも、文化祭の準備がそろそろ始まりそうだったよ」

「文化祭そんなに早いの?」

「六月の初めだからちょっと早いかも」

「合唱の練習とかするの?」

「うん」

 合唱か・・・今年は静かにしておこう。

「翼は文化祭いつ?」

「俺の高校は、六月の中頃だったけど」

「そんなに変わらないんだね」

「金曜日と土曜日でするからしんどいけどな」

「土曜日遊びに行ってもいい?」

「うーん」

 真由が上級生にナンパとかされたら嫌だな。それに真由だったら、俺に話しかけにきたりするから、変な注目を集めるのは嫌だし、丁重に断るべきなのか、真由に楽しんでもらえる方がいいのか?

「来ない方がいいかもな」

「どうして?」

 聞かないで欲しい。単純に独占欲が勝ってるというだけなんだから。こういうのって迷惑がられるんだよな。今度からは気を付けるべきだな。

「もしかして、心配してくれてたり?」

「・・・・・・はい」

 図星はやめてよ。幼馴染の鋭さがここにきて刺さってくるとは想定外だ。

「翼は優しいから好きだよ」

「照れるからやめてください」

 究極的に恋人に近い存在になってる。でも、いつもよりパワフルさに欠けてるような。

「真由、元気ない?」

「元気ならあるよ」

「ほんと?」

「うん。でも・・・あまり(つばさ)には会わないようにって二人で約束してたから」

「約束って、会わないとかじゃなくて、部屋に入らないってことだけだから、会うのはいいんだよ」

 実際には、会わないどころかメールとかもしてくれなかった。やり過ぎなのではと思う。

「約束破ったらペナルティとかもあるかもだし」

「ペナルティって例えば?」

「それは・・・・・・公では言えないこと?」

 つまりエロい罰ゲームをするってことですか?

「ずっと寂しかったから、会えてホッとしてるけどこの時間がゆっくり過ごせたらいいなぁって」


「・・・コンビニ着いたよ」

 無理矢理話を終わらせる。これ以上聞いたら多分告白したくなってしまう。こんな時間を過ごせたらと思ってるのは真由だけではない。


 俺も同じことを考えている。

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