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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
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車内

「さてと、あそこまで全力な水本(みずもと)君は見たことなかったなぁ。どうして逃げたのかな?」

 問い詰めるというか追い詰める言い方はやめようね、胸が押し潰されそうになるから。

「逃げたわけではないですよ」

「敬語使ってるから怪しいね」

 何この人、目が怖いよ。ヤンデレルートとかに入っちゃうのかよ。どこのあやせさんだよ。

 あんな恐い言い方されたら、俺じゃなくても、誰だって逃げるだろ。

「たまには休みたいってことですよ。毎日毎日やるような部活ではないでしょ、『恋愛相談部』って」

「サボり癖って、一度ハマると抜けられないよ」

「サボろうとしたわけではない。休みたいだけ」

「同じだと思うんだけど」

「サボるのは、行きたくないから休もうとする。休みたいというのは、行きたいけどどうしても休憩が必要でやむを得ず休もうとすることですよ」

 まさに論破してやったぜ。

「休憩が必要って割に、全力で走ってたけど」

「休憩は別に体だけではない。心の休憩が必要だってこともある」

「じゃあ、今、何かに悩んでるんだ? どうして、相談してくれないの? 部活でも出来るじゃん」

「心を休めるためには一人でいなければならない」

「じゃあ、何で車に乗ってるの? 一人でいたかったなら断ってもよかったんだよ」

 何故この人は諦めてくれないんですか? どんだけ責めてくるんだよ。

「断れる雰囲気では無かったんで」

「ごめんなさい、今度からは気を付けるね」

 よし、これでこの件は終わり。

「それでも、部活休むなら一言でいいから私に言ってもらいたかったよ」

 もうやめてくれませんか? これ以上この話しても幸せになれないんだよ。

「それはごめんなさい。次から気を付けます」

「それで・・・本当はサボろうとしたんでしょ?」

「いい加減にしてください」

 嘘は貫き通してると、いつか嘘ではなくなる。誰かの名言っぽい風けど、多分誰もそんな言葉は残してない。

「まぁ、明日もあるし、土日挟んだら勝手に謝ってくれるかもしれないし」

 何か不穏な予感しかしない。

 空本(そらもと)さんってこんな子だっけ? 結構サディストな感じがするんですけど。部活に行くのが鬱になりそう。


 それから俺の家に着くまで、尋問が続いた。

「それじゃ、また明日ね」

「はぁ……送ってくれてありがとうございます」

 俺は(じごく)から降りていく。普段より楽に帰れるのに疲れる帰宅って何なんですか?

 俺は決めた。絶対に軽々とサボってはいけない。


「ただいまー」


 やはり響いてくるのは俺の声だけだ。

 中学生のときは、家に帰って誰もいない時って、大体興奮して叫んでいたことがあったが、最近は誰もいないことが多すぎて、何も興奮しない。

 今日はせっかく早く帰れたから、真面目に勉強でもしておこう。最近、運動をしてないな。

 たまには体育館でバレーボールでもやりに行こうかな? やることがあまりにも無さすぎて、趣味の一つや二つは作ってたら、楽しくはなるだろ。

 次の土曜日は久しぶりに体育館を借りに行って、バレーボールのサーブの練習でもしよう。


 またしても、金曜日がやって来る。

「今日は部活に来るんだよね?」

「も、もちろんですよ」

 挙動不審とはこの事である。


「空本さん今日は変だったね?」

「どうして?」

 村上(むらかみ)君が疑問に思ったのか、そんなことを呟く。

「いや、何となくなんだけどね。今日はちょっと機嫌が悪い様な感じがしてたから」

 そんなこと分かるの? 流石は女子に近い雰囲気を持つ男子、村上君ですね。

「そうなんだ」

 チャイムが鳴り、そこで会話は区切りを付ける。

 ガラガラと教室のドアを開けて、先生が入ってくる。学校生活にも慣れて、ワクワク感というものが無くなってる。五月の下旬には試験。六月には文化祭が待っている。そういう学校行事でも無い限り、学校生活のスパイスがほとんどない。

 もっとも、俺は中三の文化祭の時に自分のクラスの雰囲気を破壊をしてしまうという大失態を犯したんだけどな。あれで同学年に嫌われまくったな。

 でも、あれをやったことは自分の中では面白いとは思ってるから前向きだよ。



「やっと来た。今日もサボるのかと思ってた」

 どうしてこんなことを言われてるのかというと、帰りのホームルームが終わってから先生に職員室に呼ばれて、色々と手伝わされていたのだ。

「今日もじゃなくて、昨日は休んだだけだから。それに空本さんも昨日休んだから同じだよ」

 同罪だよ同罪。

「さて、恋愛相談今日は来るかな?」

 話を逸らすのが上手いんだか下手なのか。

「もしかして怒ってた? 休んだこと」

「別に怒ってはないよ」

 それは怒ってる人が言うんだよ。

「そういえば、部長ってどっちだっけ?」

「部長?」

 俺が少し気になってたことだった。部長を決めてたのかどうか忘れてたから。

「それなら、水本君がやればいいんじゃないの?」

「俺やりたくないです」

「この部活で一番力になってるのは水本君なんだから、やった方がいいよ」

「うーん」

 内心、言わなきゃよかったと思ってる。

「部長と言っても、運動部じゃないから、特に重要なことでもないんじゃないかな」

「じゃあ、空本さんがやったら?」

「私よりも水本君の方が向いてるから・・・決定」

 決定されちゃいました。文化部の部長って、何もしなくてもいいのだと思うけど、変な重荷がある。


「明日から土曜日だぁ」

「ゆっくり休めるね」

「勉強中心になるから、休めるわけでもないよ」



 部活も終わり、週末を迎える。


 あっ、メールが来た。誰からだろう。

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