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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
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生徒会長

「それにしても、投げやり過ぎたかもね」

 先ほどの相談は、俺が強制終了させてしまった。

 ここまで投げやりだったのは、恐らくこの世界の創生者(さくしゃ)が悪いに決まってる。今頃、ごめんなさいと謝ってることだろう。

「これはこれで、良かったのかもな」

「どうして?」

「だって、これでこの部活の悪評が流れたら、ここに恋愛相談来るやつはいなくなる。俺達は何もしなくてもいい。のんびりと受験に備えることが可能になる」

 計画通りと言わんばかりの結果オーライ感。

 恋愛相談するやつは一度友達に聞いてみればいいのにと思うんだよ。何でこっちに丸投げして、その後に文句とか言わないでほしい。

「受験なんてまだ早すぎると思うんだけど・・・」

「準備に早すぎることはないよ。とりあえず、勉強の貯金を増やすことが大事だから」

「行きたい大学とかあるの?」

「無いよ。ただ、出来るだけ家から自転車で通える範囲ってぐらいの大学に行きたい。あと、受験は早く終わらせたいってのもあるかも」

「じゃあ、ここからだとどこになるのかな?」

「まだそこまで決めてないから、何も言えない」

 一年生の五月で進路の話をしてるって、異常でしかない。いや、進学校なら普通かもしれない。


「生徒会とかに入るの?」


「入りたくはない」

 断固拒否します。人間関係がかなり大事になる上に仲間意識がうざく感じるからであります。

「でも、何かしらのメリットがあるなら入るかも」

 メリットは大学への推薦の時に、学校では何をしていたのかということを書きやすくなること。デメリットは生徒会の活動は一年間続くし、学校行事は誰よりも率先して取り組むなどの労働がある。

「生徒会は今年じゃなくても、来年入ることもできるし、その時に考える」

 そんなことを言いながらも、入ることはしない。

 目立つということが、そもそも好きではない。人前で何かをすること自体に慣れがない。


 けれど、注目はされたいと少しだけは思う。

 こんな矛盾が自分の中で好きなところでもある。


 そろそろ暖かいから暑いに変化しそうなこの時期の部室には、涼めるものが存在しない。

 窓を開けて風が吹けばマシだが、微塵も風が流れない時は、ちょっとした地獄だ。

 だが、部活が終わりそうな時間になると外は夕焼けだ。

 運動部はきっと夜まで部活をするんだろうな。

 甲子園に出場とかしたら、俺は内野席で応援しよう。アルプススタンドはメチャクチャ暑いからな。


「そろそろ終わりにしますか?」

「もうこんな時間か・・・私が鍵閉めるね」

「俺がやりますよ」

「ずっとやってもらってるから、今日は私」


 そう言い、俺から強引に鍵を奪う。



 新しい朝が来た。みんなに訪れる朝だ。

 最近は真由に会ってない分自由な時間が増えた。

 毎日同じ時間同じ電車に乗るということが、作業的な感覚になってきてしまっている。

 制服の移行期間に入ったからか違う高校では、夏服を着ている人が僅かながらいる。

 その僅かが残念ながら男子というのが、俺にとっては辛い現実である。お前らの腕の筋肉が格好良く見えちゃうだろ。ちょっと抱きしめられたいと思っちゃうだろ。


 下駄箱で靴からスリッパに履き替え、教室に向かう。

水本(みずもと)君・・・だっけ?」

 水本君の「も」ぐらいで足を止める。中学校の時に水田という人がいて、「みず・・・」と先生に言われると、ちょっとだけソワソワしてしまう。

 そんな話をしたいんじゃない。俺は呼ばれた方向に顔を向ける。そこにいたのは・・・

「金曜日に風花(ふうか)と一緒にいた子だよね」

「おはようございます。生徒会長」

 生徒会長の東島(ひがししま)さんだった。俺に近づいてくる。

「少しだけ時間を頂けますか?」

「敬語じゃなくてもいいんですよ」

「生徒会長だから、こういうちょっとした部分でも気を使うことを心に刻んでるのよ」

「お疲れさまです」

「生徒会室で話をしましょうか」

 これはもしや恋愛関係のフラグかな?

 冗談ですよ、本当に冗談ですよ? 勘違い野郎とか馬鹿にしないでください。


「入ってもらえる?」

「ここが生徒会室ですか」


 思ったより普通というかつまらない。

 生徒会室には二人きりで他に誰もいない。

 ここで生徒会長に・・・・・・



今、エロいことを少しでも考えた人は想像力豊か。



「それでお話というのは」

「風花のことよ」

「空本さんがどうかしたんですか?」

「あの子と仲良いの?」

「買い物に何回か行った程度の仲です」

「買い物ねぇ・・・」

「それがどうかしたんですか?」

「もしも、あの子と付き合いたいって思ってたらやめておいた方がいいわよ。あの子ほど・・・」

 そこで一瞬言葉が詰まってしまう。

「あの子には気を付けなさい。これは忠告」

「はぁ・・・」

 俺は溜め息のような言葉が出ている。


「自分は何を言ってるんだっていう顔ね、あの子が本当の姿を見せたときは恐いわよ」


 さっきと声色が違う。少し背筋がゾワッとした。生徒会長は空本(そらもと)さんの従姉妹だ。何かを知っているんだろう。

「忠告ありがとうございました」

「風花には内緒にしておいてね」

「分かりました」


 生徒会室を出ていき、教室まで早歩きで行く。


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