表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
73/112

四件目は突然に

「勉強するから」

「うん。了解です」

 部室は今日も閑古鳥がなんたら言ってて、開店休業状態である。そろそろ来てもいいんだよ? お願いだから誰か来て。


「あのー、失礼しまーす」


 ご都合主義でしょうか? 突然来ました。

「ど、どうぞー」

 入ってきたのは、明るめの髪色をしてて、いかにも高校デビューした感じの女子であった。偏見かもしれないけれど、こういう女子は、人のパーソナルスペースにずけずけと入ってくるタイプだろう。


「それでは、学年と名前をお願いします」

「はい、一年C組の今野(こんの)美香(みか)です」

「恋愛相談の方をお願いします」


 せっかく投書箱あるんだから、そっちに悩みを入れてくれればいいのに、何で使わないの?


「もうすぐ三年生は最後の大会じゃないですか? 私はマネージャーやってるんですけど、憧れてる先輩がいるんです。どうにかして気持ちを伝えたいんですよ。何か良い方法とかありませんか?」


「ちなみに部活は何ですか?」

「サッカー部です」

 サッカー部別名チャラチャラしてる人が多い集団ですよね、そのマネージャーってことはその部活の中で彼氏かなんか作っちゃうんだよな。ちゃんと、部員のために色々しないといけないんだぞ。


「ねえねえ水本(みずもと)君、私もちょっと質問していい?」

「俺に聞かなくても・・・どうぞ」

 部長って、どっちだったっけ? 決めたっけ? そこら辺は適当に空本(そらもと)さんにしておこう。

「今野さんはその先輩に告白をしたいぐらいに好きなんですか? それとも、単純に憧れてるだけですか?」

 多分、好きなんだろ。じゃないと、ここに来る理由がない。憧れてるだけなら頑張ってくださいと言えばいいだけだ。好きだから、部活という繋がりが無くなってしまいそうだから、何とかしたいと思うんだろ。

「私はその先輩が好きですけど、でも、告白はちょっと・・・」

 告白苦手な人って、やっぱり多いよな。そう考えると、ある意味俺って超優秀なんじゃね?

「じゃあ、手作りのお守り的なものあげれば? 何て言ったっけ? あれ、ミミンガみたいなやつ」

「「ミミンガ?」」

 俺の頭の回転速度がぐんぐん速くなる。ミミンガみたいな言い方のやつだよ。

 ・・・・・・ミサンガだ。

 あれって、別の言い方があったな。確かプロミスリングみたいなやつ。

 それにしても、ミミンガって何なんだよ。動物じゃねぇか・・・あー、それはモモンガだ。ぐっちゃぐっちゃだな俺の頭の中。

 ミミガーみたいなやつもあったな。全然思い出せないけど、何か料理の名前だったような。

「ごめん、ミサンガミサンガ。あれ作ってあげて、渡してあげたら結構嬉しいとは思うけどな」

「ミサンガですか・・・王道ですけど私以外にもやってる人が居そうな気がするんで、それは無しで」

 何こいつ、超わがままなんですけど。王道で勝負できない人間が勝てると思ってんじゃねぇよ。

 ミサンガだめなら、好きですと伝えた方が絶対に良いんだけどな。告白はしたくないとか、卒業式にでもするなら話は別だけど。

 あー、俺の悪魔が姿を現してきた。常に悪口。

「告白せずにかつ周りに差をつける気持ちの伝え方を考えろってことでいいんだよね?」

「そうですね」

「それを・・・」

 言葉を止めた。このまま言ったら説教に近くなりそうだった。あの後に言いたかったのは、それを人に頼るのって自分で考えてどう思う? これを言いそうになった。本当に止めて良かった。

「まぁ、三人で考えてみよっか」

 空本さんが間に入ってくれる。こういう優しさってファインプレーだね。ありがとう空本さん。


 とは言っても、難しすぎるんだよ。

「どうにかならないですか?」

 今野さんに愛想を尽かされそうだ。アイデアを浮かべたいんだが、全然出てくる気配がない。

「さりげないボディータッチ?」

 合コンで使える戦法を言ってみた。

「何言ってるんですか?」

 当然の返され方だな。そもそもお守りが一番効果的なんだって、どうして分からないの? 男はそのお守りを一生大事にするよ。

「どうしても、ミサンガは嫌なの?」

「嫌って訳じゃないんですけど、やっぱり差をつけたいんですよね」

 差をつけたい系高校生か、そういうやつは後半にさをつめられて抜かされるんだよ。

「そもそもその先輩って彼女はいるの?」

「いないと思います」

 こいつ知らないな。思いますって言う段階で、知らないって言ってるもんだ。もうめんどい。

 結論を言ってあげよう。

「一日一日を大切にするべきだ。ここにいる時間を部活の時間に充てろ。その先輩に毎日話しかけて、色々と情報を得て振り向かせろ。それだけ」

「・・・・・・」

 まぁ、絶句だよな。俺もだよ。ここまでやりがいがあって無い相談だからな。そもそもこんなやつは後輩系ヒロインとしては向いていない。

 甘えてくるような後輩が可愛いんだよ。お前のような厚かましいやつじゃない。

 俺ってとことん性格が悪いんだよな。心の中で悪口を連発してるあたりが人としてクズだな。

 性格悪い系クズ男子高校生。世に出してはダメ。


「ありがとうございました」


 半分ふてくされてるように部室を出ていった。

 見事に解決を出来なかった。


「水本君、あれで良かったの?」

「はぁ、終わったー、こういう相談は投書箱に入れてほしいなぁ」

「結構イラついていたよね?」

「そう見えた?」

「うん。顔はそんなに変わってないけど、声のトーンがちょっと・・・ね?」

「こういうのを隠せるようになりたいな」


 四件目の相談は終わった。

 恋愛相談なんかやめて、勉強会を開きたい。

 家に帰って勉強するか、真面目だな・・・俺。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ