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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
72/112

部活は何もなく過ぎていく

 土曜日。

 本来なら真由(まゆ)と遊ぶという予定だったけれど、真由がメールの返信をしてくれない。寂しいなぁ。

 理由は多分あの約束だからだろう。俺の家に来るなという約束が、発展という発展を遂げて会わない上、メールの返信もしないまでになってしまった。

 自業自得なのか、まぁ、極端な真由も可愛い。

 真由にメールをもう一件だけ送っておく。

「真由に会えなくて寂しいです」

 一分後に返信が来た。

「これ使って」

 本文と共に添付されてきた画像の存在に気づく。

 それを見ると、真由の自撮りの写真なのだが、明らかに胸元を強調した格好だった。単純にエロい。

「使って」という文字の意味が、確実に卑猥なものにしか見えない。流石に幼馴染を使うのは気が引ける。知らない人だからよりエロく見えるという理論がどこかしらにあるのかもしれない。

 ここは、真由のご機嫌を取っておきたい。

「写真もいいけど、実物に会いたいです」

 しかし、それ以降、返信が来ることはなかった。



 (つばさ)からのメールにドキドキする。

 会えなくて寂しいだなんて、私が恋しいって言ってくれてるみたいで嬉しすぎる。

 仕方ないなぁ、私の写真でも使って寂しさをまぎらわしてもらおう。ちょっと胸を大きく魅せて、こんな感じでいいかな?

 パシャ。

 よし、これなら翼は興奮するだろうし、私のこと何十回も見てくれるだろうし・・・

 でも、もしこのちょいエロの写真を何かしらの弱みとして利用されたら・・・


「この写真をばらまかれたくなかったら、俺の言うことを何でも聞くんだぞ」

「は、はい、翼の言うこと何でも聞きます。どんな命令でも言ってください」

「フッフッフッ、そうだな、まずは」

「キャッ、翼何するの?」

「決まってんだろ。お前にとって恥ずかしいこと」

「やめてぇぇ」


 こんなことに発展して、翼のものになったりしないかな? あんなことやそんなことされて、調教とかされちゃったりならないかなぁ。

 シチュエーションを妄想するだけでやばい。

 布団に潜り、翼の顔と声を想像して、自分自身で胸を揉んでみたりして、シチュエーションを一人でだけれど実際にしてみようと試みる。

 これを親に見られたら、一生の恥になりそう。


 それからしばらく布団に籠っていた。

 メールが来ていたのに気付いたのは、妄想が終わって一眠りした後だった。



 特に何もないまま、日曜日も既に夜だ。

 空本(そらもと)さんに明日会って何と聞くべきか、慎重に言葉を選ぶべきだと思い、様々なシチュエーションを想定しながら考える。

 しかし、この想定は大体上手くいかないという事実を俺は知っている。

 部活のときに適当な流れで聞くか。


 とりあえず、携帯をベッドの上に置き、勉強机にて教科書と向き合う。試験の範囲は多分、習ったところ全部だろうから、まず、ノートを見る。

 そこから教科書の例題だったり、演習問題を解いたりして、慣れるまで頑張る。

 暗記系はコツコツとのんびりやっていったら、ある程度の点数なら期待ができる。

 リビングからポテトチップスのコンソメ味を持って上がり、ポテトチップスの中に隠してある小型のテレビを使ってノートに名前を書くこともなく、ただひたすら勉学に励む。ちなみにコンソメ味は家族全員食べれます。


 時間はすぐに経ってしまう。

 今は夜中の一時。そろそろ明日の授業の用意をカバンに入れ、ベッドに携帯の充電とアラームをしておいて、布団をおもいっきり被る。



 月曜日の放課後の部室にて会話が始まる。

「空本さん、昨日の生徒会長とはどういう関係?」

「どういう関係かっていうと、従姉妹に当たる」

「従姉妹? 名字とかは違うけど」

 確か、空本さんのお父さんには弟がいると聞いたような気がする。

「あー、それは、お父さんの妹の娘だから」

「なるほど」

 妹だったら、名字が変わっても普通だし、納得。

「どうやら、生徒会長と色々あるみたいだけど」

「それはもちろん、でも言わない」

 先に言わない宣言をされたら、こっちは聞くことを許されない。要は首は突っ込まないでということだ。

「そうですか、で、結局、あの投書箱って何だったの?」

「多分、喧嘩を売ってきてるみたい」

「よく分からないな」

 本当にその通りだ。喧嘩を売る理由が何なのか、多分、俺には一生分からない。

「あの投書箱開けられるの?」

 その質問に空本さんは何も答えてくれなかった。

 仕方なく、自分で見て確かめることにする。部室を一旦出ていき、投書箱を開けようとする。

 だけれど、取り出し口の存在が無かった。これ何のために作ったんだよ、あの生徒会長。

 入口あって出口なし。一番厄介だよ。壊すのももったいないし、結局、そのまま放置する。

「それで生徒会長と何話したの?」

 もう一度会話をする。関係は聞かないとして、何を話したのかは聞いてみたい。

「特に何も、自慢話を軽くされたぐらい」

「自慢話とは?」

「単純に、一年で生徒会長になったとか期末試験で学年三位になったとか、色々と聞いた」

「生徒会長って、今、二年生だっけ?」

「うん」

「でも、スゴいとは思うけどな、一年で生徒会長って、今年も生徒会長に立候補とかするのかな?」

「聞かなかったけど、多分すると思うよ」

 つまり、二期連続で生徒会長を目指すということか、目立ちたがりな人なんだろうな。

 空本さんがそういえばと一言置いてから言う。

「この部活って、試験一週間前は活動停止なの?」

 当たり前だろと言ってやりたい。運動部ですら活動停止するんだから、この文化系の部活は絶対休みに決まってるでしょと大きな声で叫びたい。

「そうだと思うよ」


 本当に何てことない会話だった。

 ちなみに今日は生徒会長は来なかった。こういう空気も久しぶりだ。今日も恋愛相談をしに来る生徒はいなかった。せめて、投書箱に何か質問でも入ってたらそれを答えるだけで部活をしたと言えるんだけど、如何せん生徒会長があの形の悪い上に、取り出し口がない投書箱作るから、面倒になる。


「今日はこれで終わりにしよう」

「今日は少し早いね、何か用事でもあるの?」

「特にないけど、暇すぎて早く帰りたい」

「そっか、じゃあ終わりにしよっか」


 また、変わらない日常が始まってしまう。


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