友達のお姉さんは恋愛対象に入るのかな?
「それじゃあ、お風呂入ります」
「お先にどうぞ」
俺は浴室に行った。冷静に考えたら、海お姉ちゃんが最後に入ることになりそうだな。それって、ダメなんじゃないでしょうか。
俺は部屋に帰っていった。
「海お姉ちゃん、先入っていいよ」
「えっ・・・急にどうして?」
「何となく、俺が最後に入った方がいいと思ったんだけど、海お姉ちゃんはお客様なわけだから、最後に入ってもらうのは失礼かと思ったからで」
「言いたいことは何となく分かったから、私が先の方が良いってことよね?」
「そういうこと」
「翼君がそう言ってくれるなら、甘えさせてもらいます」
海お姉ちゃんは、カバンからスウェットなのかパジャマなのか部屋着なのか、まあ何かしらの着替えと隠しながら持っているそれは、多分、その、下着なのかと推測する。
「それじゃあ、お先にお風呂いただきますね」
「ごゆっくりー」
海お姉ちゃんが部屋から出ていき、一人の時間が出来てしまった。取り残された気分だ。
「布団敷いとくか」
リビングまで行き、布団を持ち運ぶ。そこまで重くもないので、楽々と部屋まで行ける。
「まさか、二人きりになっちゃうなんて・・・」
私は、泊まるために持ってきた着替えを置き、服を脱ぐ。鏡に映った下着姿の自分の体を見る。
ちょっと太ってきたかな? 自分の腹を摘まもうとしてみる。少しプニュっとしていた。
いや、男の人はガリガリよりもちょっとムッチリしている女性の方が好きだと聞いたことがある。
これぐらいでいいんだと思い込むしかない。
少し大きめのブラを外し、下も脱いでいく。生まれたままの姿になり、お風呂場のドアを開ける。
ポチャン。
静かに入っても出る音。今、ここに私がいるという実感が湧いてくる。好きな人の家のお風呂場。
弟の策略によって、一人でここに泊まることになって、内心ビビっている。
でも、チャンスとも捉えている。
そもそも、こっちに来てから翼君とはそんなに会うことがない。たまたま買い物に付き合ってもらったりしたこともあるけれど、頻繁にはない。
少ない機会で何かしらの進展があればいいなぁ。そんなことしか考えてない。今日がそんな日だ。
「ふぅ・・・」
疲れが抜けていくように息を吐く。
浴槽の中で軽く背伸びをしてから、体を洗うために一旦出る。シャワーから温かいお湯を勢いよく出て頭からかける。長い髪を洗うのは時間がかかる。
しっかり頭と体を洗い、もう一度浴槽に入る。
「さてと・・・上がろっかな」
体が火照ってしまい、頭が少しボーッとする。
お風呂場から出て、バスタオルで体を拭く。ドライヤーを借り、髪の毛を乾かしていく。
髪がほとんど乾いてきたので、ドライヤーのスイッチを切り、元あった場所に戻しておく。
大体一時間ほど経ってしまったのだろうか、私は脱いだものを持って翼君の部屋に帰っていく。
すると、ベッドとは別にお布団が敷いてあった。
「やっぱり、一緒に寝るのはマズイと思って」
私は純粋に、そんなことは言わないでと思った。
翼君は、私のことをちゃんと考えてくれたのだと思うけれど、私は一緒に寝たい。
「そう・・・だよね」
思いとは裏腹に力無き言葉が喉の奥から出てきてしまう。
次は翼君が風呂に入る順番だ。もし、布団を片付けてしまえば、一緒に寝られるのかな?
「海お姉ちゃん、何だか元気が無かったような」
海お姉ちゃんがお風呂から戻って来てから少しだけ元気が無く、調子が悪いように見えた。
何かしてしまったのではないかと不安が残る。
自分の部屋から出て浴室に行った。俺は服を全部脱いでいく。脱いだものを洗濯かごに入れ、風呂場に入る。
「お風呂上がりました」
自分の部屋に戻ると、海お姉ちゃんがベッドの上でのんびりとくつろいでいた。
俺は敷いていた布団の上に座り、のんびりとくつろぐ。見た目にはくつろいでいるが、やっぱり元気がさっきより無い風に感じる。
「う、海お姉ちゃん、何か遊ぶ?」
「うーん」
特に返答もなく、質問は流されていった。
これはなるべくソッとしておかないといけないシチュエーションだ。変な質問はNGだ。
「一緒に寝るのって、久しぶりで懐かしいなぁ」
海お姉ちゃんが先に言葉を出した。
だが、言葉とは違い、懐かしさを思い出しているような感じでは無かった。
「そ、そうだね」
噛みまくりの自分は緊張していた。
「ふぅ」
ため息を出し、海お姉ちゃんはベッドで背伸びをする。
「もう、寝よっか」
海お姉ちゃんは、そう言ってベッドの布団に入ってしまった。何かこのままでは嫌な予感がした。
「海お姉ちゃん、もう寝るの?」
「うん」
布団の中から声が出てくる。こもっている声だ。
どうしよう? 何か話を続けないと海お姉ちゃんが寝てしまう。何が一番効果的なんだろ。
「つ、翼君!?」
「ご、ごめん。元気が無かったようだったから、何か悩みでもあるんだったら相談に乗るから」
俺は布団の中に入ってしまった。向かい合わせになってしまい、海お姉ちゃんが近くに感じられる。
「そ、そ、相談なんか無いよ!?」
海お姉ちゃんの声が少し明るさを取り戻した。
けれど、不安だった。だから、俺は海お姉ちゃんと一緒の布団で寝ることを決意した。




