表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
53/112

校外活動二日目 (前編)

 朝が来たかもしれない。外はまだ少し暗い。

 多分、誰よりも早く起きたはずだ。

 携帯を見てみよう。四時半。

 二日連続の五時より前に起床となった。

 六時になれば、大音量の音楽が流れて、起こされるらしい。そこから、外に出てラジオ体操というよく分からない流れである。

 二度寝すれば、次に起きるのが中途半端になりそうだった。その結果、俺は部屋を出てみた。

 寝起きは、視界がボーッとしか見えてない。

 そろそろ、眼鏡をかけないといけないかも。

「ふぁぁ~あ」

 欠伸(あくび)が出るのは、当たり前なんだが、目がそんなに潤わない。病気かな?

 部屋の廊下を歩いてみたが、先生がいない。いつも見回りをしているのだろうと思っていたが、案外職務を全うしていないのが分かってしまった。

 俺は宿舎の外で、少し新鮮な空気を吸う。

 適当にうろうろしているが、本当に静かだ。

 特にすることもなくなり、宿舎に戻って、もう一度部屋に行こうとした。


「・・・・・・!!」


 どこからか、怒鳴り声のようなものが聞こえた。

 何を言っているかは、全然聞き取れない。

 声のする方へ向かって、歩き出す。

 徐々に声が大きくなっていくにつれて、恐らく二人の男女が、喧嘩(けんか)しているようだ。

 その声は、宿舎の裏から出てきている。

 こっそり覗き込んだら、入所式のときにいた宿舎の支配人(?)と、多分、その奥さんと思われる人だった。昼ドラなのかと思ってしまう。

 そして、声が聞き取れるぐらいになった。


「あたしは、初めからこんなところに来たくなかったの! それなのに、あんたが自然のなかで働きたいとかわけわかんないこと言うから、こんなことになったのよ!!」

「一体、何が不満なんだよ! 黙って働け!!」

「もう、私出ていく。離婚よ、離婚よ!!」

「あ~、もうっ!! 勝手にしろ!!」

「高校生が帰ったら、出ていくから」

 そして、何かを投げ捨てて宿舎に入った。

 うわぁ、ガチの修羅場じゃねぇか。

 世の中には触れてはいけないことってあるけど、これも多分、その一例だろうなぁ。見なきゃ良かった。あとに続くように支配人の男も入っていった。


「そろそろ戻らないと……」

そんなことを口ずさみながら、表口から入った。


 それから、自分の部屋で荷物の整理や着信音すら鳴ってないのに携帯をチェックするなどの暇潰しを六時まで繰り広げた。

 すると、起床の音楽が流れ始めた。

 ロックという感じの音楽だが、最近の曲というわけでも無さそうな感じだった。

 こういうときに、何の曲か知りたいとすごい思うのは私だけでしょうか? メロディーを覚えよう。

 村上君も水谷君も目が覚めかけていた。


「未来は僕らの手のなか!!」


 あっ、これって多分カ○ジのOPの曲だよな。

 選曲がすごいな。分かるやついるのかな?

 確か、ブルーハーツの曲だったような。

 何で、俺が知ってるかって? 単純に、実写の映画を観て、アニメ化もしてたから、動画で探そうとしたら、このOPと出会って、調べたんだよ。

 それにしても、目覚ましがロックってどうなの? 明日もこの曲で起こされるのか……。

水本(みずもと)君、おはよ~」

村上(むらかみ)君、おはよっ」

 朝の挨拶って、大事だよ。

 水谷(みずたに)君は、まだ布団から出てこようとしない。典型的な男子高校生の朝の過ごし方だな。

「ねぇねぇ、水谷君は起こさなくていいの?」

「そのうち起きるから大丈夫だろ」

 放置プレイって、こういうことを指すんだろ?

「本当に遅れそうだったら、起こすけどな」

「ハハッ」

そもそも朝からラジオ体操やるって、夏休みかよ。初日しか行かなかったっていうぐらいしか思い出が無いんだけどな。



 同じ頃、水本家。

「早く目覚めちゃった……」

 昨日からお泊まりしている(つばさ)の部屋で、私は朝早く目を覚ました。

(はぁ……今日、学校休みたいなぁ)

今の私は、パジャマを上しか着ておらず、下半身は下着のみとなっている。少し湿っているけど……。

ベッドから出て、パジャマを穿いて、部屋を出る。

 リビングには、翼のママがそこにいた。

真由(まゆ)ちゃん、おはよ~」

「おはよーございます」

「朝ごはんなら出来てるわよ」

「ありがとうございます。それではいただきます」

 ありがたく朝ごはんを頂いて、少しだけお願いをさせてもらいたいことを話した。

「あの……今日、学校を休もうと思ってて、もし、よかったら、家事全般を私にさせてもらいたいのですが、いいでしょうか?」

「えっ? 学校休んでいいの?」

「明日は祝日なんで、休みたいなって思って」

「う~ん、私は構わないけど、真由ちゃんがそれでいいって言うなら、お願いしようかな」

「ありがとうございます。精一杯頑張ります」

よし、学校休める上に、翼の部屋の掃除を親公認でさせてもらえる。しかも家には私だけ。計画通り。


(そら)ちゃんは?」

「あの子なら、もう学校に行ってるわよ」

「そうなんだ。それではいってらっしゃーい」


 バタン。

 翼のママが仕事に出かけていった。

 子供の頃なら誰もが経験したことのある、家の独り占めである。ワクワクが止まらない。

 でも、やることはしっかりやらないと!!

 とりあえず、学校に電話でもしておこうかな?

 静に伝えてもらおっと。

「今日学校を休みます。理由は適当に考えといて」

 メールを送り、台所で食器を洗い始めた。



「ラジオ体操なんかしたくないわぁ」

 そんな声が外に出るときに、幾度となく聞こえてきた。気持ちは分かる。

 朝って基本的にお腹が痛くなるんだよな。

「ごめん、先にいってて、トイレに行ってくる」

とりあえず村上君に言い残し、トイレに向かった。


「D組委員長、遅刻だぞ」

少し遅れてしまった。ちなみに委員長は一番前に並ばないといけないから、いないと目立ってしまう。すいませんと謝って、自分の場所に止まる。

本当に遅刻なんかしたくない。


「ラジオ体操第一~」

ラジカセから音源が流れてくる。

 深呼吸して、体を伸ばしていく。何にもしたくないな。やる気が全然みなぎらない。

 今日は、なかなかのハードスケジュールだ。この後は、朝ごはんを食べて、山登って、昼ごはんとなる飯盒(はんごう)炊爨(すいさん)をして、オリエンテーションをして、やっと解放かと思えば、それから勉強をさせられる。簡単に言えば、地獄だよ。

 これが三十代のときに、いい思い出だったなとか思っちゃうんだろうな。

 気が付くと、ラジオ体操は終わっていた。

ほとんど、無意識で体を動かしていたことになる。

「水本君、体は大丈夫?」

 村上君が心配そうに尋ねてくれた。優しいなぁ。

「水本君、調子悪かったの?」

 空本(そらもと)さんも続いて、心配してくれた。泣ける。

「うん、大丈夫だから、朝ごはん食べよっか」

 心配かけまいと、適当に話題を振って逃れる。


 宿舎の朝ごはんは、本当にジャパニーズ朝ごはんという感じだ。

 ごはんに味噌汁と、鯖の味噌煮と海苔と漬け物の五点セットだった。昼まで体が持たねぇぞ!!

 朝ごはんを食べ終わり、周りを少し見渡した。

 宿舎の支配人がいた。多分、調理場には奥さんもいるんだろう。

 早朝の出来事はまだ記憶に残ったままだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ