表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
52/112

校外活動一日目 (後編)

「「出張恋愛相談~」」

 イェーイという歓声もなく、いつもはスタジオで収録しているのに、突然、外でロケをすることになった感じだな。

 ある意味、部室(スタジオ)から出てきたって言えば、そうなるのかもしれない。

 ただ、やる気は微々たるものしかない。

 いや、微々たるですら、誇張していると思う。




「ここで、恋愛相談するんですか?」

 森野絢夏(アラサー)は、俺たち二人に言い放った。

毎回毎回、森野(もりの)絢夏(あやか)って、フルネームで言うのも、面倒くさい。あやかから、あやか~・・・・・・

 

 アラサーと呼ぶことにしよう。

「嫌なら、私の合コン体験談とか、婚活体験談の話を今から晩ごはんまで聞くことになるけど?」

 嫌だ嫌だ嫌だ。

 アラサーのそんな話なんか聞きたくない!!

 涙なしには見れない、長編恋愛スペクタクル映画の予感がする。

 というわけで、現在、部室の中と同じように、机と椅子を並べて、疑似恋愛相談所として、オープン初日を迎えました。

「まさか、ここでもするなんてね……」

「まぁ、顧問の地獄の話を聞くよりか、百倍ほどマシな気がするけど・・・誰も来なければ幸せだな」

「夕食って、何かな?」

「哲学的な話? それとも、普通に食べ物の話?」

「食べ物の話」

 だよね~。哲学的な話だったら、語り合い始めたら三時間ぐらい経過しちゃいそう。

「飯とか、肉だけで充分なんだけどな」

 あと、米とかライスとかrizとか

 全部、同じものじゃねぇか。あと、rizはフランス語だからね、読み方は「リ」だから覚えやすいね♪

「野菜もでしょ?」

「野菜も食べれるけど、それ中心はスゲー嫌」

 中学校の修学旅行で、晩ごはんが八割野菜が来たときは、なかなかショックな出来事だった。

 ちなみに、残り二割はrizでしたけどね。

「ちょっと、寝てていい?」

「いいよ~」

 自由時間だから、寝てもいいんだよね?

 中学時代にしまくった、王道の寝かたをする。

 両腕で、輪を作り、手前の腕に頭を置けば、あっという間に眠りにつける。

「おやすみなさい」

 そう聞こえたときには、半分意識が遠ざかっていたのである。だって、四時起きなんだぜ。



「起きてください~、晩ごはんの時間ですよ~」

 体が揺さぶられて、ゆっくり目が覚める。

「あっ、うん、おはようござ~す」

 頭が回らないと、自分でも何言ってんのか、ちょっと、分からなくなりそうになる。

「結局、誰も来なかったの?」

「うん。誰一人来なかったけど」

 空本さんに悪いことしちゃったなぁ。

 ただでさえ、暇なのに、俺は寝ちゃったし、あとでごめんなさいしておかないと。

「明日もするのかな?」

「明日あったら、体験談聞いた方がいいかもな」

「そうかもね」

 このとき、俺は知らなかった。

 我が家にピンチになっているということに……




「おじゃましま~す」

 私は、(つばさ)の家に文字通りおじゃましていた。

「翼~、お話ししよ……って、いないじゃん!!」

「あれ? 真由(まゆ)さん、どうしたんですか?」

「翼は、まだ帰ってきてないの?」

「お兄ちゃんなら、今日から三日間校外活動で、帰ってこないですよ。聞いてなかったんですか?」

「えっ?」

 私にとって、残念なことこの上ないんだけれど。


 でも、待てよ。もしかしたら……


「今日、翼の部屋に泊まってもいいかな?」

「お兄ちゃんいないのに?」

「うん」

「別にいいですよ」

「ありがと~、晩ごはんは作るから」

 私は、着替えと荷物を持ち込むために、一旦、家に戻ることにした。一応、お母さんにも言っとかないと。明日も学校はあるからね。

 お母さんに言ったら、普通にOKを貰えた。

 本当なら翼と一緒がいいんだけど、いないなら、部屋を独り占めするしかない。ヘヘッ。


 いつも入っているのに、少しだけ緊張する。

「失礼しま~す」

 挨拶をして、翼の部屋に入室する。

翼の部屋は、きちんと片付いていて、物足りない。

 ただ、パジャマと思われる衣服がベッドの上に、脱ぎ捨てられていた。ヘヘッ。

「まぁ、まずは、晩ごはんを作って、お風呂に入ってからよね♪」

 楽しみは最後にとっておく理論。

 荷物を置いて、一旦リビングまで向かった。



「なるほど」

 俺たちの晩ごはんは、米・肉・野菜の三拍子が揃った、なんとも体に良さそうな晩ごはんでした。

「それでは、いただきます」

 食事係の代表が、そう言うと同時に、全員が箸を持ち、食事に(むさぼ)りついた。

 昼ごはんは、弁当で、しかも早めに食べさせられたため、多分、運動部に入っているような人からしたら、待ちわびた食事の時間と言えるだろう。

「おいしいね」

 村上(むらかみ)君が笑顔で、こっちを見てくれる。

 癒しとは、こういうことを言うのだろう。

広辞苑に載せても、批判とか一切来ないレベルだ。

 今頃、(そら)もご飯を食べてるんだろなぁ。

・・・大丈夫かな? 心配になってしまう。

 最悪、宅配でもしてくれれば、安心だけど、母さんには出来るだけ早く帰宅してほしい。


 物足りなさも感じつつあるが、晩ごはんの時間が終わる。この場合の物足りなさというのは、満腹感を満たしていないという意味と考えてもらいたい。

 さて、このあとは、いよいよお待ちかねのお風呂の時間、通称バスタイム。

 もちろん、男女別ですけどね。

 もし、混浴とかなら俺、絶対に入りたくない。

 入るとしたら、夜中に一人で入るつもりだ。

「A~D組の男子は、このあとすぐに浴場に向かって入浴してください」

 さて、着替えを持って、大浴場に向かおう。


 何故、学校行事における入浴時間は、こんなにも短いのだろうか? 入った気がしない。

 大浴場に多数の男子高校生が入るということが、窮屈で疲れがたまるというのを分かってほしい。

 男の裸なんか見ても、何の興奮もない。

 ただ、思うのは、運動部の奴は筋肉付いてるなってことぐらいだな。

 明後日帰ったら、最初に風呂に入ろう。




「はぁぁ~、きっもちいぃ~」

 私は今、翼の家のお風呂に入浴中です。

 前の土曜日以来かな~? 翼の家のお風呂に入ったのは。

 これから、楽しみが待っている。ヘヘッ。

 そのためには、体を清潔にしないといけない。

 いつもより念入りに洗い、準備を整える。

 お風呂に入って、一時間ほど経ってしまった。

「そろそろ、上がろうかな……」

 湯船から、一糸(いっし)(まと)わぬ状態で、出ていく。

 華奢(きゃしゃ)とは言わないが、男子が好みそうな、少しムッチリした感じで、理想的な体つきであると自分自身では、自負している。

 浴室から出て、持ってきた下着を着けていく。

 いつも淡い色を好んでいる。変にエロい下着はあんまり着けたいとは思わない。

 最も、翼とそういう雰囲気になったときには、エロい下着で、そういうことを済ませるつもり。

 上も下も着けたあと、私は失敗に気付いた。

 翼のパジャマを着るつもりだったのに、ここに持ってくるのを忘れてしまった。

 まぁ、そんなに問題もないんだけどね。

 今、翼の家には女性しかいないから、安心~。

 私は下着姿のまま、翼の部屋まで戻っていった。

 翼がこんな姿見たら、興奮してくれるかなぁ~。

「はぁ、パジャマだぁ、まずは、においを少し拝借しちゃおうっと、グヘヘ」

 私は翼が着ていたものに、顔ごと突っ込む。

 私はとんでもない変態になりつつある。でも、私は幸せな気分で生きている。

 十分に堪能したところで、今度はそれを着る。

 サイズは、もちろん大きくて合わないけれど、そんなことなんかどうでもいいと思う。

 そして、いよいよ今晩の楽しみが目の前に。

 翼のベッドに入らさせていただきます。

 布団をゆっくりめくり、体をそっと忍ばせて、思いっきり全身を覆い被さる。

 パジャマと同様に、まずは、においをクンクンすることから始める。

「ヘヘヘヘッ、ウヒョヒョヒョ」

完全に危ない人と化しているけど、私にとっては、最高に楽しいことなんだからいいじゃん。

 ここに、翼がいれば、どれだけ興奮するか?

 見られてるってだけで、ヤバイかもしれない。

 そのあと、何をしたかはご想像にお任せします。




 風呂から上がり、やっと自分たちの部屋に戻ってくることが出来た。

 村上君に、どうして担任(アラサー)に呼ばれたのか聞かれたりしたが、特に詳しくは話さなかった。

「さて、そろそろ寝ますか」

「そうだね」

「うん」

 村上君も水谷(みずたに)君も了承があったので、明日も早いので、さっさと布団に入って、寝ることになった。

 修学旅行とかだと、好きな人誰だよトークが始まったりするのが、定番だが、この部屋では、誰一人として、そんなことに興味を示すタイプは一人もいないのである。


 多分、夜中の一時とかそれぐらいの時間。

 三つ並んだ布団の真ん中になったのだが、隣を見ると、村上君の寝顔がそこにあった。

 部屋の電気は真っ暗というわけではなく、豆電球が少し照らしている。

 そんな状態の中で、村上君の寝顔は光り輝いていた。何だろう、すごい良かった。

 拝見できて、思い出になることだろう。

 明日はイベントごとのオンパレードだ。


 気を引き締めて頑張ろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ