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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
51/112

校外活動一日目 (前編)

「出欠とりますっ、Are you ready 番号~」

 こんな感じで、出欠取れたらどんだけ楽か。

 俺の隣の空本さんは、のんびりしていた。

 バスの後部座席の人は、騒がしいのは基本だ。

 出欠を取り、バスが出発する。

 窓側の席で、景色を見ながら入所式の挨拶に使えそうな良い言葉が、思い付かないか模索しているのだが、見つからない。


 入所式の挨拶を考えている最中。

「朝早かったんでしょ? 少し寝てたら?」

「ありがと。でも、やらないといけないことがあるから」

 格好良く言っているが、自業自得なんだよな。

「挨拶のやつでしょ? 手伝うよ?」

 ここは、素直に受けとめよう。

「よろしくお願いします」

「敬語をやめなさい」

 毎度毎度の掛け合いで、共同作業が始まった。

「どれだけ考えてるの?」

「ははっ、一行も考えてませんけど、何か?」

「やる気は無いようだねっ」

「退所式は何とかなるかもしれないけど、入所式の挨拶は、結構考えないといえないんだよなぁ」

 退所式は、三日間で経験したことを羅列していったら、それなりにいい挨拶になるはず。

「最初が肝心だから、そこだけ決まれば、絶対に進み始めるから考えてくれませんか?」

「今日は、お日柄も良くとか?」

「本日はお日柄も良く、こうして出会えたことに感謝する万感の思いが胸に秘めていて」

「適当に言っちゃってごめんね」

 詰め込みすぎたら、ダメになるんだよ……

「とりあえず、本日は招いて頂いてありがとうございますって言おうかなって思うんだけど」

「いいんじゃないかな?」

「急に適当になるのやめてくれませんか?」

「そんなに適当な感じだった?」

「言い方がちょっとだけ」

「分かった。これから気を付けるね~」

 まぁ、こんな感じで約二時間程、バスに揺られながら過ごしていて、後ろの方を覗くと、何人か寝ているのだった。

 宿舎に到着すると、バスから降りていく。

 緊張の時間が流れている。刻一刻と近づく入所式の挨拶の時間。何で俺がこんな目に遭わないといけないのか? いや、今はそんなことを考える余裕もなくなっている。終わったら、愚痴ってやる。


 八つのクラスが一同に集まって並んでいる。

 これから、俺はこの軍団の代表ということで、挨拶をさせられるわけなんですよ。スゴいでしょ。

「それでは入所式を始めたいと思います」

 学年主任が言い、外の空気が静寂になる。

 宿舎の人が待っていて、眠そうな生徒たち。

 もしかしたら、俺、挨拶しているときに写真撮られて、卒業アルバムに載る可能性がある。

 それから、校長先生が軽く(約二十分)話をを続けやがった。

「次に一年生を代表して、水本(みずもと)(つばさ)君より入所式の挨拶を行います」

 さぁ、地獄の始まりだ。声飛んでくれないかな?

マイクを渡されて、いよいよ話さないといけない。尋常じゃないハウリングが起きればいいのに。

 校長先生が話してるとき、ずっとそんなことを考え続けていた。

「本日は招いて頂いてありがとうございます」

 とりあえず、最初は噛まずに切り抜けた。

「高校生になって最初の学校の行事で・・・」




「・・・これから、三日間よろしくお願いします」

 俺は頑張った。

噛まなかったのは最初と最後だけ。

外だったので、寒さがあり、ろれつが回らなかったというのもあった。前途多難な幕開けだな。

 あと、拍手はまばらだった。

 校長先生の気持ちが少しだけど、分かったような気がする。


「水本君、お疲れさま♪」

「面白かった?」

「フフっ」

 つまり、笑われていたということですね。

 いいんだよ。爪跡が残せれば何でも。

 俺は今、超絶ポジティブシンキングですから!

 この三日間何が起きても、怖くない。

「それじゃあ、また後でね」

「はいはい」

 これから、男女に別れて別々の宿舎に入って、部屋に荷物を置いてから、大きめの部屋で勉強をさせられるらしい。一応、校外活動とはあるが、実質的には、勉強合宿なので、勉強が中心だ。

「どんな部屋だろうねぇ」

同じ班の村上(むらかみ)君と水谷(みずたに)君と一緒に宿舎に入る。

 当然、エレベーターなんか存在しない。

 階段を上っていき、自分たちの部屋に到着する。

 八畳程の和室で、侵略者は来なさそうだ。

「とりあえず、体操服に着替えて、勉強の部屋に向かわないと」

荷物から、制服を脱いで、それを畳んで鞄に入れ、冬用の体操服を取り出して、それに着替える。

 そして、勉強道具を持って、部屋から出る。


 勉強の部屋に入ると、三分の二程の人が既に来ていた。Cクラスと合同での勉強であり、基本的に数学の勉強を強制的にさせられている。

 出席番号の順番に座っているので、真ん中より少し後ろの席に座ることになる。

 村上君が後ろで、水谷君が前の席だった。

それから、全員が揃ったところで授業が開始した。

 しかし、十分ぐらいすると、演習問題をやらされることになり、ほとんど自習に近いものだった。

 ノートに演習問題を解いていき、習ってる範囲まで大体終わりそうだった。

 朝から大変だった。そして、昼の入所式の挨拶で頑張って、現在、勉強をやっている。

 今日は恋愛相談とかないよな? フリとかじゃなくて、もう本当に今日は休みたいんだよ!

バスの中で寝れなかったのが、結構効いてきてる。


 約一時間勉強をして、これから何するんだっけ?

 しおりを全然見てないから、よく分かってない。

「それでは、晩ごはんまで自由時間です」

 この三日間で、一番動くのは二日目である、

 山登りや飯盒(はんごう)炊爨(すいさん)をしたり、オリエンテーションをしたりするらしい。



「水本君と空本さんは少しだけ残ってね」

 担任の森野(もりの)絢夏(あやか)先生に呼ばれた。

 これは確実に嫌な予感しかしない。


 まだ、校外活動は始まったばかりである。


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