校外活動の始発待機組
荷物をほとんど詰め込んで、目覚ましを四時過ぎにセットする。
ため息を吐いて、ベッドに入り込む。
あっ、入所式の挨拶、ほとんど考えてねぇ。
まっ、いっか、適当に言葉を並べて、これから、三日間よろしくお願いしますって最後に言えば、何とかなるだろ。そもそも、じゃんけんで負けて決まったものなんだから――――
散々愚痴を放ったところで、そろそろ眠りにつかないと、明日は早いし、挨拶しないといけないし、地獄だな。そして、俺は十時過ぎには寝ていた。
朝はアニソン。(目覚ましのアラームの話)
とりあえず、布団から出ておかないと二度寝する。
まだ明るくもない外の景色を見て、何にも考えることもなく、自分の部屋から出ていく。
顔を洗い、髪の毛を直して、制服に着替える。
家族は誰も起きていない。寂しいなぁ……
まぁ、普段だったら、こんなに早く家を出るなんてことはないからな。
荷物は体操服とか教科書等が入っているため、結構重くなっている。車で送ってもらいたいと願うのは悪いことではないよね!!
そんな願いは当然却下されているので、荷物を持って静かに玄関に行き、靴を履こうとした。
「おにぃちゃん、いってらっしゃぁい~」
眠そうな声で、空が見送りに来てくれた。
いい妹をもって、俺は大変幸せ者です。
「うん。いってきま~す」
空が手を振っていたので、手を振りかえした。
普段は家から駅まで自転車で走るのだが、今日は荷物が大きいので・・・・・・自転車で行きますよ~
当たり前だろ。歩くバカはいないだろ。
荷物を背負って、ペダルに力を込めて走っていく。
さすがは始発といったところなのか、人がほとんどいないというか、俺以外誰もいない。
始発は五時を少し過ぎた頃に来るので、まだあと十分ぐらい時間が余っている。
多分、これから暇すぎるので、そのための小説をあらかじめ準備しておいた。
そして、その内の一冊を取り出す。
携帯は、なるべく触らないようにするつもりだ。
理由は、言わなくても分かることだけど、敢えて言っておこう。宿舎には、コンセント的なものを使える所がないからである。
まぁ、コンセントが無くても外で充電できる奴もあるらしいけど、残念ながら持ってない。
というか、それほど携帯を使う用事がない。
自虐って心の中で語るものじゃないな。辛い。
読んでいても頭の中に内容が入らないので、しおりを挟んで、鞄の中に戻す。
すると、電車がやっと来た。
改めてホームを見ても、人がいない。
電車内は数人いるだけで、いつもの朝とはまるで違う。荷物が大きいため、座れるのはありがたいことだ。席に座って、窓の外を見ても朝日がやっと出てきたぐらいで眠気がまだ少し残っている。
電車に揺られて降りる駅に着く。
そのホームにいたのは、数人だけで、多分、朝練でこんなに早く来ているのだと思う。
六時半と言っていたのだが、このように六時を過ぎてもいないのに来てしまう。
これが友達いないやつの特性である。
楽しみにしてる訳でもないのに、時間に早く来てしまうという現象。
こっちとしては、遅れるのが嫌なだけである。
というか、本当なら八時到着でも大丈夫なのに……
八時半から先生たちから、出発の挨拶みたいなことをして、それからバスに乗り込む予定らしい。
まっ、バスが来てたらとっとと荷物だけトランクに入れてもらってのんびりしとこ。
五時五十分ぐらいに学校に着いた。
バスはまだ来ておりませんでした。
この付近で待っていたら、滝野君も来るはずだろうし、今はひたすら待っておこうか。
この時間は本当に、苦痛でしかない。
何かしらの楽しみがあればまだしも、この後に待ってるのは、一人の男子の想い人を探すという、マジでつまらなさ全開でやって来る。
朝から待つというのは、別に嫌いというわけではない。物販に並ぶということもしたことあるし、ある程度の暇潰しを持ってきている。始発で行くのはこれが初めてだけれど。
読みかけの本に手を伸ばし、しおりを挟んであるページを開き、文字に目を通し始める。
校門には車が何台か入ってくるのが分かる。
先生が出社して、今から授業やら会議やらで忙しいのだろう。つくづく働くというのは嫌だな。
バイトでもして、耐性でも付けとこうかな?
それから、約三十分。
滝野君が入ってくるのが見えてきた。
目立つように手招きをしているのだが、なかなかこっちに来てくれない。何この仕打ち。
「おはよう、今日は大変っすね」
お前じゃなくて、俺の話だよな、な!
「さてと、作戦でも立ててみるか?」
「何の作戦ですか?」
「見つけるのは、多分出来るけど……話しかけるのはなかなかハードルが高いからなぁ」
「見つけてくれるだけでも、ありがたいっす」
「いや、見つけるのも君だし、話しかけるのも俺じゃなくて君だからね」
話を聞いていないのか分からない。
「クラスが違う訳だし、まず認識してもらうのが一番だから、出会いは記憶に残るようにしないと」
「どんな感じで?」
俺は「結婚不適合者」なんだから、分かるわけないだろ! 自分で考えろ!
「とりあえず、名前とメールアドレスを教えるのがいいんじゃないのか?」
「それだけでいいんですか?」
それだけって言える神経、マジスゴいわ。
俺、絶対そんなこと出来るわけないからな。
「あとは、好意があることも分からせるのがいいかもな」
「何で?」
「俺みたいなのはともかく、君みたいに青春しているイケメンに好意を抱かれるのは、案外、悪いものではないはずだからな」
軽く自分を卑下したところで、説得に入る。
「自信を持って、堂々と行ってこい!!」
説得終了。
「そうだよな。俺頑張って、彼女に好意伝える」
なっ! 男は単純だから、褒められると図に乗る。
まぁ、成功するにしろ失敗するにしろ、この経験自体は、いい方向に向いていくんだろ。
成功すれば、高校生活ハッピーに過ごせる。
失敗すれば、部活に青春を捧げられる。
ただ、やらなければ、どっちつかずになる。
この方法が正しいのか分からないし、間違ってたしても、どこが間違っているのかなんか知らない。
しばらくすると、何人か大きめのバッグを持って来ている生徒が複数で歩いてくる。
「どの娘なんだろ?」
目を凝らして、女子を観察し続けている。
端から見れば、気持ち悪いの一言で片付けられる。
約十分程観察している。
男子も女子がどんどん増えてくる。
なるべくなら、人が多くない時に成し遂げたい。
「あっ!!」
見つかったのかな?
「多分、あの娘だと思うんだよ」
「それじゃあ、いってらっしゃい」
「おぅ、頑張ってくるぜ」
勇者を見送る気持ちが少しだけ分かりました。
遠くから見て、滝野君はメモを渡していた。
多分、アドレスとか名前とか書いてるんだろ。
校外活動中にメールが一件来たら、少しだけ期待してもいいんだと思う。
すると、頭を下げてから勇者が戻ってきた。
「どうだった?」
「一応、友達になってくださいって言って、メールアドレスを渡してきた」
「向こうの反応とかは?」
「ちょっと驚いた感じだったんだけど、大丈夫なはずだと信じたい」
まぁ、やれることはやったから結果を待つだけだ。
「それじゃあ、あとは自分で頑張れよ。分からないことは、友達に聞いて解決しろよ」
「おぅ、また頼るわ」
俺以外の人を頼れよ。それと友達ではないからな。
メールアドレスとか知らないから。
勇者は、再びどこか旅立ってしまった。
「水本君~、おはよ~」
「空本さん。おはよ」
勇者が旅立ってから、数分後にやって来た。
「どうだった? 相談の方は?」
「う~ん。結果次第かな?」
「そっか、私が来なくて大丈夫だった?」
「大丈夫だったけど……どうして?」
「ふ~ん。そうなんだ」
「?」
少しだけ、声が低くなったのが気になる。
「それよりも、入所式の挨拶考えた~?」
「あっ!!」
そして、バスの中で寝ないでずっと考えました。




