約束は突然に
日曜日は、家でゴロゴロしたいもんです。
朝起きると、幼馴染が横で寝息を立てている。
可愛いなぁ、ぷにぷにしてみたいなぁ……
女の子と一緒の布団で寝てるのに、付き合ってないとかほとんどありえないことなんだろうなぁ。
パジャマを着てるんだけど、胸のふくらみがあって、ボタンも少し開いていて、谷間が見える。
このままじゃ、俺の下半身が大変になる。
もういいや、胸ぐらい拝まさせてもらいましょう。
マジマジと胸を見ていると、
「そんなに、おっぱい触りたいの?」
真由は起きていました。俺、ピンチ。
「起きてたら、目開けとけよ」
「話そらしたってダメだよ、おっぱい触りたい?」
男性のなかで、おっぱい触りたくない人はいない。
つまり、おっぱいを触りたいということだ。
「触りません」
欲求に耐えて、俺は真由に目線を送る。
「じゃあ、舐めてみる?」
「もっと、ダメだよ!!」
「昨日は、私、翼のこと舐めまくったから。そのお礼という形で、舐めてもいいよ」
「女の子がそんなこと言っちゃダメです」
真由の性的欲求が爆発しそうになっている。
倫理的な部分で真由を注意しないと、ただの変態になりそうなものだ。
朝から、誘惑に打ち勝って、ベッドから起き上がると、携帯が光を放っていた。
携帯を開くと、メールが一件来ていた。
なんと、あの村上君からだった。
メールが来ていたのは、八時頃だった。
今は、九時過ぎだった。結構寝てたな。
俺は、すぐにメールの内容に目を通した。
「突然だけど、今日どこかに遊びに行かない? 駅前に十時頃に待つつもりだけど、もし、無理だったらメールしてきてください」
俺は悩んだ。
今日は、一応、真由と約束しているから遊びに行くのは出来ないと思っていた。
しかし、十時頃に村上君が待っている。
これを放置することなど俺には出来ない。
気がつくと、俺は私服に着替え始めていた。
「翼~? 何で着替えてるの? 遊びに行くなら私も着替えないと……」
「ごめん、真由……俺、約束守れないんだ」
「えっ?」
「俺、今から行かなくちゃいけないところがあるんだ。だから、この埋め合わせはちゃんとする」
俺は小さいカバンを持ち、部屋から出ようとした。
すると、真由が俺の手を握ってきた。
「約束したじゃん。今日遊びに行くって」
「いってきます」
俺は手を振りほどき、玄関まで走っていった。
「いっちゃ、ダメーーーーーー」
聞く人が聞けばエロく聞こえるかもしれない。
俺は、駅まで自転車で走っていった。
約束の時間。
時よ、ゆっくり進んでくれ。お願いします。
私は呆然とした。
今日遊ぶ約束をしていたのに、肝心の相手がどこかに行ってしまった。
軽くため息をして、翼の部屋のベッドに座る。
突然、一人取り残された私は、床に落ちていたあるものを見つけた。
翼がさっきまで着ていたパジャマだ。
もちろん、それを持ち、まずは嗅ぐ。
そして、布団のなかに持ち込んで、嗅ぐ。
私は禁断の行為に踏み込もうとした。
着てみる。
翼が着ていたものを着てみたい。
私はとりあえず、自分が着ていたものを脱いで、下着姿になる。胸には自信がある。
翼が着ていたものを手に取り、ゆっくりと、肌が触れるように穿いていく。
そして、上を着ていく。まだ、少しだけ暖かさが残っていて、心地がよい。
全体的に大きいサイズなので、ブカブカになる。
その状態で、もう一度布団のなかに入る。
そこから、何をするわけでもなく、翼を身体に感じながら一時を過ごした。
別にエロいことはしてないからね。
待ち合わせと言っていた、駅前についたのが十時を少しだけ過ぎた頃だった。
とりあえず、村上君を探すことから始めた。
前は改札を出た所が待ち合わせした場所だった。
そこに向かうと、村上君がいた。
私服は、男物だけど、女性が着ても普通にありそうなファッションだったので、驚いてしまう。
とりあえず、村上君のところへ駆けていく。
「村上君~」
「あっ、水本君、こっちだよ~」
喋り方がほんわかしていて、力が抜けそうだ。
「ごめんね~。急に遊びに行こうなんて誘っちゃって、断られるかと思っちゃって」
「いやいや、予定とか無かったから」
思いっきり嘘をついてしまった。
後で、本気で謝ろう。埋め合わせは、真由の希望を聞いて、その願いを叶えるようにしよう。
「それで、どこ行くの?」
「え~とね、とりあえず、遊びたかったからまだ具体的には決めてないんだよね」
俺と遊びたいということだったとか、超嬉しいんですけど。ただ、どこ行くかだけは決めといてね。
「じゃあ、ゲームセンターにする?」
「そうだね、水本君ともう一回ゲームセンターに行きたかったんだよ~」
「それじゃあ、行こっか」
前に行ったゲームセンターに行く。
ゲームセンターに到着すると、すぐに太鼓のゲームのところに向かっていく。
前回と同様に、難易度おにでやってみた。
もちろん、完敗でした。村上君、かなりスゴい。
何曲か遊んで、その場を後にする。
「水本君、プリクラでも撮ってみない?」
「プリクラ?」
「うん。記念に撮ってみようよ」
「別にいいけど」
最近のプリクラって、カップル限定とかあったりとかして、一人で撮るのとか無理に近い。
二人で、プリクラを撮る機械に入っていく。
わざわざ、目を大きくしたりとか輪郭とかも変えるつもりはない。それだけは心に決める。
幸い、村上君が女の子として扱われてる感じだったので、店員さんにも特に注意されなかった。
お金を入れて、二人でポーズをとる。
基本的にタブルピースが定番なんだろうなぁ。
顔を寄せあって、写真を撮られる。
特に恥ずかしさというものがない。
一応、相手は男だと分かってるからだと思う。
それから、何枚か撮られて、終わった。
出てきたプリクラを取り、二人の思い出としてそっと、カバンの奥にしまっておく。
それから、いくつかゲームをして、一時間ほど経った頃に昼ごはんを食べに行くことになった。
前、何食べたかな? ファミレスに行ったような気がするんだけど。まぁ、別のところで食べよう。
ラーメン屋に行ってみることにした。
だが、やはり休日。
なかなか、混んでいて行列も出来てたりする。
チェーン店だったら、そんなに混んではない。
「あそこのラーメン屋に行く?」
「分かった~」
入ってみると、何人か椅子に座っていて、俺は名前を書いて、しばらく待つことになった。
名前を呼ばれて、テーブル席に案内されて、メニューを二人で眺めて、注文をする。
「そういえば、水曜からだね。校外活動」
「あー、そうだね、荷作りはもうできた?」
「明日ぐらいにはちゃんと、終わらせとこうかなって……水本君は?」
「俺は、前日にパッと荷物を作るつもり」
「同じ班だから、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
共通の話題ですら、そんなに長くもたない。
コミュニケーションって、本当に難しい。
「そういえば、結局、卓球部に入ってくれなかったんだね……」
村上君の突然の凍るような声に、かなりビビっているんですけど、一応、釈明をしておこう。
「あぁ、色々あって、変な部活に入らされて」
村上君には、報告が遅れました。すいません。
「俺は、運動神経は良い方じゃないから、あんまり入らなくても良かったんじゃないかなって」
「うん。強制は出来ないから……でも、ちゃんと言ってほしかったなぁ」
追い詰め方がスゴいし、えげつない。
「それは・・・ごめんなさい」
空気が淀んできましたけど、注文したものが来る。
二人で、ラーメンをすすって食べていく。
この間に会話が無くなるのは、仕方ないかな。
この場は俺がおごって、店を出ていった。
それから、何時間か遊んだけれど、最初ほど明るくもなく、心の底からは楽しめてない。
学校でも、明日謝っておきましょう。




