表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
44/112

二人で買い物 (後編)

「そういえば、あの相談のことなんだけど」

「何かいい解決策見つかったの?」

「いやいや、昨日の今日だから、見つかりはしないよ」

「そうだよね~、ヘヘッ」

 空本(そらもと)さんは、微笑みながら俺に話してくる。

「でも、実際にどうすればいいのかな?」

「どうもこうも、まず、一目惚れした相手を探すことからしないと何も始まらないんだよな」

「どうやって見つけるの?」

「・・・」

何も考えずに答えを出すのは間違っていると思う。

一応、見つける方法はあるにはあるんだけど、とてつもなく面倒くさいのである。

 考えがまとまれば、月曜日にでも言うつもりだ。

「とりあえず、食べよっか」

「そうだな」

 食べ物が来ているのに、食べないのは、食べ物からしたら存在意義が揺らぐぐらいのことだな。

「いただきます」

「いただきます」

 同時にいただきますと言えなかったのは、付き合いの短さが原因なのかもしれない。

食べる音って、「もぐもぐ」か、「バクバク」か、「ムシャムシャ」か、よく分からない。

 口の中で聞こえるのは、「グッチャ、ヌッチャ」って音なんだけど、文字におこすと嫌。

 ハンバーグをナイフで切っていき、ライスと一緒に食べていく。空本さんもスパゲッティをクルクル巻いて食べていく。

 食事をしているときは、喋りたくないのって、普通だと思うんだよね。今もそうだけど。

 食事に集中したいからなんだろうけど、相手が話してるのに、スープをズズーって飲んでる方が相手に対して失礼なはずなんだよ。

 だから、俺は食事をするときは、喋らない。

 結婚したら完全に一家団欒が崩壊するな。

 やっぱり結婚しない方が幸せなのか……。

水本(みずもと)君は、休日とかはいつも、何してるの?」

「何してるかな……」

 ここで、中三のときを振り返ってみよう。

 土曜日は、課題を朝からやって昼までに終わらせて、そこから昼寝をして、起きてからラノベを読んで、風呂入って寝るって感じかな……外出てない!

 日曜日は、土曜日と基本的に同じだが、本屋に行ったり、ゲームセンターに行ったり、外に出ていくこともある。もちろん一人でだけどね。

理由は聞かないでね。泣くからさ・・・

 一歩も出ないことが土日の定番だった俺が、最近では出かけることが多くなった。もしかしてだけど俺って、リア充とやらになってるのかな?

 いやいや、調子に乗ってはいけない。

 きっと、何かに騙されてるはずだ。詐欺だ。

結論として、現在、休日は詐欺の被害に遭ってる。

「特に何もしてないけど、ラノベ読んでるかな」

 詐欺の被害に遭ってるとは言えないまま、会話が進んでいく。何も言えないという心理状態が、詐欺に遭いやすいのだろう。詐欺には気を付けよう。

「空本さんは?」

「私? うーん、美術館に行ったり、映画鑑賞とかしたり、クラシックの音楽聴いたりしてるかな」

 お嬢様の模範解答というべきだな。

 美術館なんかこの近くにあるか? 連れていってもらえるんだろうな。まぁ、羨ましくはない。

 別にツンデレというわけではない。

 美術館なんか行ったって、俺には芸術とか分からないし、絶対、三十分経ったら帰りたくなる。

 静かだけど、厳かな雰囲気があって居づらい。

「へぇ~、一回行ってみたいなぁ、美術館」

 社交辞令のような感覚で言ってしまうのは、本当にあとから厄介になるから注意しないといけない。

「じゃあ、今度のゴールデンウィークとか一緒に行ってみる? ゴールデンウィークなら、展覧会とかもあるから、楽しいかもしれないよ」

 ほら、このような典型的な例が実在する。

 一応、予定を思い出してみる。

 空いているのは、土日と火曜日と木曜日だから、美術館なら、土日がいいのかな?

「土日とか?」

「土曜日は少し休みたいから日曜日がいいかな?」

「それじゃあ、日曜日にする?」

「そうだね。・・・やったー……」

「喜んでもらえて良かったです」


 また約束を交わして、レストランを出ていく。


 今日のメインイベントというか目的のホームセンターに向かっていった。

買うものは、ほとんど決まっているので、あとは、色んなものを見物していくつもりだ。

「ねぇねぇ、なに買うつもりなの?」

「とりあえず、軍手とかビニール袋とかかな?」

「それだけでいいの?」

「いや、見ていく中で、必要そうなものがあったら買うつもりだけど」

「分かった。じゃ、回ろっか」

 カゴを持って、のびのび回りはじめる。

とりあえず、軍手とビニール袋は先に買っておく。

 あとは、何が必要か、少しずつ見ていく。

「あっ、絆創膏とかいるかな?」

「一応、保健の先生は来るらしいし、いらないんじゃないのかな?」

「まぁ、一応買っとくか」

「私に意見聞く意味あったのかな?」

「あるよ~」

「棒読みだし、適当だし」

 ブツブツ言うのはダメだよ。もっとハッキリと言わないと伝わらないよ。


 メインイベントが終わってしまった。

ファミレスの時間の方が長かったような気がする。

 最初の待ち合わせ場所に戻ってきて、

「もう、帰るの?」

「そうだな、用事は終わったし、他に行くところもないみたいだし、帰ろっか」

「じゃあ、私、ちょっと迎えの電話してくるね」

 空本さんが、少し俺から離れて電話をしにいく。

とりあえず、今日の目標は何とか達成できたはず。

空本さんが楽しめたかどうかは、分からないけど、そもそも、そういう目的で来たわけじゃないので、これが正しい。正しいけど少し物足りないかも。

「ごめんね、あと二十分ぐらいしたら来るらしい」

「そうですか、買ったものは俺が預かっとくから」

「大丈夫だよ。私が持っておくから」

「そ、そう? じゃあ、お願いします」

「敬語」

「人にものを頼むときは敬語の方がいいからね」

いくら敬語が嫌だからって、これはしょうがない。

 それから、二十分会話もなく、ひたすら待った。

 すると、車がやって来た。

「水本君、今日はありがと」

「空本さんこそ、付き合ってくれてありがと」

「それじゃあ、また月曜日にね」

「うん。また、月曜日」

空本さんが車に乗り、窓から手を振ってきたので、俺も手を振り返す。


 入学説明会のときも、こんな感じだったなぁ。

 車が走り出していって、静けさが残っていく。

 さて、帰ろうか。

 一人このまま帰ろうとしていた。


 そのとき、


(つばさ)君だよね?」

「えっ?」


 突然、声をかけてきたのは、


(うみ)お姉ちゃん、どうしたの?」


 海お姉ちゃんがそこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ