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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
41/112

二件目

 金曜日とは、非常に罪な曜日である。

 他の曜日とは違って、俺たちに対して、明日が休みであることをちらつかせて、休みを誘惑する。

 擬人化すると、確実にビッチが出来そう。

 そんなわけで、とっとと行って帰ろう。


 しかし、金曜日の授業でしんどいのは、最後の体育の授業である。

 今日は、集団行動の練習のみで、行進とか列の変形などに時間を使いまくっていた。

 人間的な集団行動がそんなに出来ない俺には、苦手科目であります。

 そして、ラジオ体操第一をやりきって授業終了。


 またしても、放課後。

部活をやる人にとっては、休日も部活があるので、別に金曜日だからどうということもないが、俺たちの部活は土日祝日は、一切しないから嬉しい。

 唯一救いがあるとするならその点だ。

 みんなは、ちゃんと青春するんだぞ。

ちなみに、俺、明日女の子と買い物行くんだぜ。

俺超リア充。そして、青春しまくってる~。

嫌われそうだから、これぐらいにしておこう。

 一応、職員室には寄っていく。

 万が一、空本(そらもと)さんが忘れてて、部室が開いてなかったら、取りに行かないといけないし、面倒だし。

 そのため、空本さんが先に行ってても寄ることにしている。

 結果は、鍵はありませんでした。部室へゴー。


「やっと、来てくれた」

「うん。ちょっと用事で」

 適当な嘘でごまかす。というか、悪いことはしてないから嘘まで吐かなくていいんだけどね。

「やっとってどういうこと?」

「えっ? 別に深い意味はないけど……」

「ゴメンね。ちょっと気になっちゃって」

「ううん。大丈夫だよ」

 この部室って静かだな。

 吹奏楽部の練習とかも少しだけ聞こえてきて、風も吹き抜けていて気持ちがいい。

気持ちがいいというのはエロい意味ではない。

 このまま、二時間ぐらい読書が出来そうだ。


 コンコン。

 今、この場で場違いな音が聞こえてきた。

「どうぞ。入ってください」

 久しぶりに人が来るようだ。

 恋愛相談か? 先生か? どっちでしょう?

「し、失礼します!!」

 すごい、威勢のいい男子の声が飛び出してくる。

 そして、扉が開いて男子生徒が入ってくる。

「一目惚れしました」

 俺にですか? 多分違うんだろうな。

 そんなことより、入ってきていきなり一目惚れしましたってどういうことでしょう?

スリッパを見ると俺たちと同じ青のスリッパだ。

つまり、一年生であるということだ。

一目惚れしたって空本さんのことかな? じゃあ、席でも外そうかな?


「すいません。とりあえず席に座ってくれる?」


状況を整理するには、まず相手を落ち着かせる。

これは、生きていく上で多分必要だ。


「はい!! すいません。突然」

突然すぎて、恐ろしかったよ。夢に出てくるわ。


「さて・・・空本さん?」

「えっ?」

「多分、恋愛相談だから、メモよろしくね」

「は、はい……」

「とりあえず、学年、クラス、名前を言ってくれますか?」

「はい!! 一年G組の滝野(たきの)晋也(しんや)です」

元気がよくてよろしい! でも、少しうるさい!

絶対体育会系の人間だな。部活も野球かサッカー。

 あぁ、俺と相対する種族の人間でした。

「恋愛相談でいいんだよね?」

「もちろんです。そのために部活少し遅れてます」

 早く部活に行け。そして、青春してくれ。

「それで、一目惚れしたって言うのは?」

「はい!! 入学式にスゴい可愛い女の子を見かけたんだけど、まさしく恋に落ちたというか一目惚れしたというか、とにかく好きになりました」

「・・・その相手は?」

 空本さんかもしれないし、空本さんじゃないかもしれないし、一応聞いておきたい。

 すると、空本さんが俺の制服の裾を握ってきた。

「どうしたの?」

 空本さんは、何も答えてくれなかった。

 そして、相談者の滝野君が口を開いた。


「まだ、分かってません!!」


「「はい?」」


「実は、見かけただけで、名前も知らないし、何組かも分からなくて、でも会いたいし、どうしたらいいか分からなくてここに来ました」


「こちらの空本さんではないんだね?」

「あっ、違います」


「はぁ、よかったぁ~」

 空本さんが安堵の息を立てていた。

 まぁ、もしかしたら、告白されるかもしれなかったわけだし、安心するのも無理はない。


「それで、俺たちに何をしてほしいの?」

「その相手を一緒に、探してほしいのもあるんだけど、付き合いたいって思うんだよ。だから、告白のやり方とか教えてもらえたらなぁと」

「探すのは、自分でやった方が効率がいい」

「そうですか?」

「だって、集団で誰なのか知らない人探すのは、目立つからな。それは自分でやるべきだし、上手くいけば、名前を知ることもできるかもな」

「分かりました……すいません。部活に行かないといけないので、告白のやり方は考えてください」


「えっ、ちょ、ちょっと」


「よろしくお願いします!!」


 そして、嵐のように去っていった。

 また、厄介な問題が持ち込まれたようだ。

 というか、この学校告白流行ってんの?


「空本さんは、どう思う?」

「えっ?」

「告白のやり方考えてくれって、どう思う?」

 俺としては、反対だな。自分の言葉で気持ちを伝えないといけないし、ましてやそれを人に頼むなんて俺にはやっぱり分からない。

「私は、少し嫌かな」

とりあえず保留かな? まだ、どうしようない。

 告白を考えるのは別に出来ないことではない。

ただ、相手を知らない上で、それをするとなると、よっぽどのセンスが問われてくる。

 あいにく、俺にはそれを備えてはいない。


 さて、この相談・・・どうしようかな?


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