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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
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手料理

 空本(そらもと)さんの家に行ったのが、昨日だった。

 あれから、家に帰ると、真由(まゆ)が部屋で寝ていたのは、さておいて、疲れてしまった。

 真由の寝顔は可愛かったのだが、人の家庭の事情を聞くのは、あまり耳にいいものではないな。

 真由と・・・もうそろそろ話さそうかな。


「ただいま」

 し~ん。

スベったあとにこれ言われると、本当に心折れる。言ってる側に悪意とかあると思うんだよね。


 今から、買い物に行けば、晩ごはん作れるかな?

いや、今日は冷凍食品で我慢してもらおう。


 部屋に行き、カバンを置いて出かけようとした。

 電気をつけると、ベッドで、真由が寝ていた。

前もこんなことがあったような……。

 変に起こさないようにしよう。多分、自分で起きてくれるだろうし、抱っこプレイは当分ごめんだ。

 それにしても、真由って可愛いよな。

 ふと、真由の寝顔を見る。やっぱり可愛い。

 真由の髪の毛に触れてみる。

 朝に真由を抱きしめて思ったのは、真由の髪は、いい匂いがしていて、サラサラで触り心地がいい。

 真由が起きないように慎重に触っていく。


「うぅ~ん」


起きたかな? いや、寝返りを打っただけだった。

もうすぐ起きちゃいそうだな。

 でも、出来るなら今すぐ後ろから抱きしめたい。

というか、俺、真由にフラれたんだよな。

諦めをつけないと……まだ好きだったのかよ。

 それでも、真由の髪の匂いをかぎたい。

静かに近づいていく。完全に俺は変態である。

 すぅぅー

 スゴくいい匂いでした。堪能しました。

 ありがとうございました。

心のなかでアンコールの声が鳴りやまない。

 どうしよう? もう一回? やっちゃう?

・・・・・・よし、もう一度トライ。

 再び、真由に近づいていく。


 ピピピピピピピピピピピピピ。


 突然目覚ましのような音がけたたましく鳴った。

俺は、とっさにどこか隠れようとした。

それと同時に真由が起きかけていた。

 隠れようにも、自分の部屋だから意味がない。

ここは、

「うぅ~ん」

「真由~、そろそろ起きてください」

「うん? あっ、(つばさ)~、おかえり~」

「うん。ただいま」

「それじゃあ、起きよっかな」

 ヨイショと真由がベッドから下りていく。

気付かれてないのかな? それだったらいいけど。

 あっ、そうだ。晩ごはん買いに行かないと。


 リビングに行くと、真由がキッチンにいた。

「真由、今日はどうしたの?」

「うん? 晩ごはん作ってあげようっかなって思ってたの」

「作れるの?」

「料理も出来るんだよってちゃんと見せないといけないと思ったからね」

「真由の手料理ですね」

「もちろん、家でも練習とかしてるから心配しないでいいよ。いつも、(そら)ちゃんとか翼ママのために作ってたんでしょ。たまには休んでね」

「お気遣いありがとうございます」

「いえいえ、これも幼馴染の役目ですよ」

 作ってくれるというお言葉には甘えるが、さすがに今から一人ではちょっとしんどいかもしれない。

「少し手伝おうか?」

「大丈夫だって、ありがとっ」

「とりあえず、絆創膏とか持ってきておくね」

「怪我する前提とかやめてよね!」

 まぁ、真由が大丈夫だって言ってるから、とりあえず、お皿とかだけは用意してあげよっと。

「大丈夫だって~」

「違う、違う、お皿取ってあげようとしただけ」

「そうだったの? 早とちりしちゃった」

「じゃあ、遠くから見守っておくね」

「こうしてると、新婚さんの気分になるね♪」

「そうかな?」

「そうなの!」

 あ~あ、ちょっと不機嫌になっちゃったじゃん。


「お兄ちゃん、ただいま~」

「あっ、空。おかえり~」

「空ちゃん、おかえりなさい」

「真由さん、ただいま」

「晩ごはんは、真由さんが作ってるの?」

「何だか張り切ってて、せっかくだから作ってもらおうかなって」

「そ、じゃあ、着替えてくるね」

「いってらっしゃ~い」


「二人って仲良しね」

「まぁ、一般的な家庭に比べたらそうなるかな?」

「うらやましいなぁ」


 真由が頑張って料理をしているときに、俺たちはのびのびとテレビを見ているのでした。


 そして、ご飯がまず炊けて、

「もうすぐで出来そうだから待っててね」

 俺たちは、ソファーから離れて、テーブルのところで座って待つことにした。

「は~い。完成だよ」

 出てきたのはレバニラ炒めでした。

「「「いただきま~す」」」

 複数人で食べる晩ごはんは、おいしいな。

 真由の手料理を初めて食べたのだが、結構旨い。

 ちゃんと料理出来るんだな。女子力高っ。

「翼、お味はどうですか?」

「うん。美味しいよ」

「そ、そう? よかった~」

「真由さんの料理美味しいね」

「空ちゃんもありがとね」

 幸せな時間は過ぎていき、洗いものをする。

 真由もやろうとしたのだが、全部やらせるわけにはいかないということで、やめさせた。


「それじゃあ、お邪魔しました~」

「晩ごはん作ってくれてありがとな」

「また、作りに行ってあげるからね」

「よろしくお願いいたします」

「それじゃ」

 真由が颯爽と帰っていき、自分の部屋に戻った。


 これが昨日の出来事でした。


 そして、今日も部活が始まる。

 ちなみに、村上(むらかみ)君と遊びにいく約束はゴールデンウィークの水曜日に決まった。楽しみだ。


「失礼します」

「水本君、少し遅かったね」

「うん。ちょっとね」

「・・・」

「・・・」

 なんか会話が弾まないな。空本さんのお父さんから接してあげてほしいとか言われてもなぁ。

どうしようもないものはどうしようもない。

「今度の土曜日は、何買うの?」

「えーと、一応ビニール袋とか手袋とかそういう感じのものかな?」

「お金はどうするの?」

 出してくれるんですか? ゴチになりますか?

「俺が出すよ。別にそんなにお金がかかることは無いだろうし、大丈夫だろ」

「私も出すよ」

「いいって」

「よくない。割り勘でもいいからお願い」

「・・・分かりました」

 会話が終了します。

 まぁ、これが俺たちの日常なんだと思うよ。

 俺も空本さんもめちゃめちゃ喋りまくるようなタイプじゃないし、というかあんまり喋らない。


 そして、時が過ぎていく。

 恋愛相談はあれっきり一件もなかった。

 明日は何か来てくれるといいな。


「それじゃあ、部活終わろっか」

「そうだね」

 基本的に、部室の鍵は俺が返しにいく。

 今日も明日も、来週もずっとね。


 徐々に長くなる日の入りを感じて帰っていく。


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