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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
38/112

訪問

 本日も部活であります。

 朝から色々と大変だったが、何とかここまでやって来れた。

 放課後になり、真由(まゆ)に「怪我とか大丈夫か?」とメールを送っておき、教室をあとにする。

 空本(そらもと)さんから何やらお願い事があるらしい。

 昼休みにでも言ってくれたら良かったのに……。

 厄介事ならすぐに断ろう。


水本(みずもと)君、ごめんね。昨日のメールのことだけど」

「別に大丈夫だけど、それでお願いしたいことって何ですか?」

「え~と、単刀直入に言うと、私のお父さんに会ってもらいたいの」

 俺たちは、結婚の予定とかないよね?

「俺がろくでもない男だったら、今回の買い物の話は無しになるってことかな?」

「え、え~と、そういうことになるかな?」

そんな悩まなくても、そういうことになるでしょ。

面倒だな。過保護な親というか親バカというか……

「はぁ・・・誘って悪いんだけど、俺一人で行った方がいいんじゃないのかな?」

「でも、もうお父さんに言っちゃったし……」

 そんなに深刻な話か? これ?

「もしかして、水本君って自分のことをろくでもない男だと思ってるの?」

「男子高校生で『結婚不適合者』になった時点で、ろくでもない男なんじゃないかな?」

「そんなに私のお父さんに会いたくないの?」

 だって、初対面で共通の話題がほとんど無くて、しかも年上なんだぞ。嫌に決まってる。

「会いたくないというより、会ってもどうしようもないからなぁ」

「私が何とかフォローとかするから・・・ね?」

 そんなお願いされたら、断れないじゃないか!

「分かりました。行きます」

「本当? 良かった~」

「それで、いつ行くの?」

「出来れば、今日この後このまま行こうかなって」

こ・こ・ろ・の・じ・ゅ・ん・び。

 盛大にため息が出そうです。

 嫌なことはなるべく先に済ませた方がいいんだけど、そのあとに良いことが無さそうなんだよな。

 ほら、イチゴのショートケーキのイチゴを最後に残す感じ? ちょっと違うか?

 じゃあ、あれだ。嫌いなものを先に食べて、好きなものを最後に食べるタイプのやつだ。これは合ってるはずだ。


「分かった。どうやって行くの?」

「お迎えの車で一緒に行くんだよ」

 冷静に考えれば、それしか方法がないじゃん。

 空本さんの家なんか俺一ミリも知らないからな。

「本当に今から?」

「というわけで、今日は部活休みだね。鍵閉めて早く行こっか」

 何でそんなにウキウキしてらっしゃるんですか? お昼休みですか?

「職員室には、俺が持っていくから、下駄箱で待っててくれていいよ」

「私も一緒に行く。逃げられたら嫌だもん」

 俺って、そんなに信用無いんですか……。


「空本さんのお父さんってどんな人なの?」

「う~ん、一言じゃ言えないかな」

 別に一言でお願いしてはないんですけど。

「会えば、分かるの?」

「とりあえず、会ってみたら分かるかも」

 他人の父親って、そんなに会うことないよな。

俺が知ってる父さん以外の父さんって真由の所と、まこっちゃんの父さんには、一回しか会ってない。

「私のお父さんは、会社の社長さんなの」

「そうですか」

 一般の会社社員である、水本家の父親は、今日も頑張ってます。感謝してますよ。

「うん」

「・・・」

毎回毎回会話がどっかで、途切れてしまうのがやっぱり問題だな。何か、毎日これ言っておかないと、禁断症状とか出てきそうだな。


 職員室に鍵を戻して、下駄箱に向かう。

「一応、校門の前に迎えの車を待たせてるの」

入学説明会のときに見た高級車に乗るのか……俺。

「あの車?」

運転手が車から降りてきて、待っていた。

 乗る気が滅入ってしまう。

本当に俺みたいなのが乗ってもいいのだろうか?

こういうとき、どっち側に乗ればいいのだろうか?

運転手の人が舌打ちとかしないだろうか?

 まだ、会ってない人に被害妄想してる辺り、俺、結構ダメなのかもしれない。

風花(ふうか)さん、それと水本さん、どうぞ後ろの席に」

「は、はい。よろしくお願いいたします」


「はじめまして、水本(みずもと)(つばさ)と言います」

「ご丁寧に、私は運転手の東山(とうやま)連次郎(れんじろう)と申します」

「よろしくお願いします」

「風花さんからいつもお話を聞かせてもらってますよ。水本さん」

 グッとくるシチュエーションですね。

 知らないところで、俺の話題になってるとかね。

「そうなんですか?」

「えぇ、家に着くまでの間、ずっとそういう話で」

 空本さんが全然否定してくれない。

 そういうときは、

「ちょっと、東山さん。そんなこと言わないでくださいよ。恥ずかしいじゃないですか」

 って言えば、俺、多分顔真っ赤にして死ぬ。

「空本さん、俺の話題なんかあるの?」

「うん。あるよ」

「例えば?」

「う~ん。それは秘密」

 俺の話題なんだから、秘密にする必要ないだろ。

「え~、ちょっと教えてよ~」

俺が思う今どきの女子高生演じてみたけど、どう?

「教えてあ~げない」

 マジで頑固だな。

「二人とも仲がいいんですね」

 そんなことはないんですけど。

 まぁ、空本さんがどう思ってるか分からないし、気軽に答えてはいけないな。

「う~ん。そんなことはないけどね」

 気軽に答えちゃった! 

 まぁ、当たり前だからな。会ってまだ一ヶ月も経ってないから。仲良しまでにはなれないだろ。

「空本さんの家って、高校からどれくらいの時間がかかるの?」

「う~ん。三十分ぐらいかな?」

「そんなぐらいですね」

 つまり、あと何分ぐらいこの時間が続くのだろうか大体分かってくる。もう飽きてきたんだもん。

っていうか眠りにつきたい。

それから、二十分ぐらい何の会話ないまま、車は走っていった。外の景色は最高だな。暇つぶし的に。


「もうすぐ到着ですよ」

 東山さんのこの一言で、やっと解放される。

あぁ、でも帰りは、駅まで送ってくれるかな?

 そして、車が止まった。


「到着です」

「ありがとうございました」


 車から降りると、そこには、かなり大きく、お屋敷のような家が建っていた。

 他に言葉が思い浮かばない。


「ここが空本さんの家?」

「うん」


 当たり前のように言ってのけるのが、スゴい。

「それじゃあ、入ろっか」


 俺たちは、門をくぐり、玄関まで向かった。


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