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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
37/112

寝起きドッキリ?

「お兄ちゃん」

「ん? どうしたの、(そら)?」

「私とキスして」

「はい?」

「キスして・・・それより抱いてほしい」

「えっ?」

「抱いてほしいっていうのは、そういう意味だよ」

 空がだんだん俺に近づいてくる。

 俺は、思いっきりほっぺをつねる。


 痛くない。


 つまりこれは夢だ。

 夢の中ならいいのかな? いや、ダメだろ。

 夢の中であっても、妹を抱くなどというハレンチな行為は・・・

「お兄ちゃん、私は初めてだから」

「やめましょう。こんなこと」

 夢の中の俺、負けちゃダメだ。負けちゃダメだ。

「じゃあ、抱いてもらうのは我慢する。その代わりキスしてほしい」

「それもダメだ」

「じゃあ、何だったらしてくれるの? 私、お兄ちゃんのこと愛してるのに……我慢できないよ」

何これ、夢の中なんだけど、現実になったら怖い。

「お兄ちゃんと空は兄妹なんだよ。だからそういう感情を持っちゃダメ」

 ラノベとかなら結構いるブラコンとシスコンを軽く否定している。

「抱きしめるだけ。それだけならいいでしょ……」

「分かった。それだけしたら部屋に戻ってね」

「うん……」

 そして、俺は空を力いっぱい抱きしめた。

 すると、空が俺の胸を思いっきり叩き始めた。

 痛い、痛い・・・


 すると、夢の中の世界が消えて現実に戻って、目が覚めた。

(つばさ)、そんな急に抱きつかないでよ……恥ずかしい」

 俺が今、布団の中で、抱きしめていたのは真由(まゆ)だった。

「うわっ」

「うわっじゃないよ。せっかく起こしに来たのに」

 あまり、朝から大きな声を出したくなかった。

 その結果、真由を布団の中に入れて抱きしめた状態のまま、小声で話すことにした。


「そんなことより、どうやって入ってきた?」

「どうやって、入ってきたと思う?」


 警察に言えば、不法侵入で捕まえてくれるかな?

「実は、結構前に翼のお母さんから合鍵をもらってたの。でも、忘れちゃってて、昨日部屋の掃除してたら、偶然出てきたの! スゴくない?」

スゴいというより、母さんが何をやってるんだと、

「そして、それを使って入ってきたと?」

「うん♪」

 布団の中でイチャイチャしている感じになる。

 しかし、ここである問題に気がついた。

 俺の下半身問題である。

 男性(男子高校生も含む)の朝のお悩みとは、下半身がトランス状態に陥ることである。

 自分では意識してなくても、勝手にトランス状態になるときもあるほどの問題である。

 現に多分俺は少しトランス状態になっている。

 ここで状況を整理しよう。

真由と俺は、現在布団の中で抱きしめ合っている。

真由とは身体が密接しており、俺はトランス状態。

 なるべく離れないといけない。

「じゃあ、そろそろ起きようかな~」

 あくまで自然にこの台詞を言い、真由と離れようと試みた。


 むぎゅ。


「あの~、起きたいんですけど」

「本当に起きたいの? 布団の中の方が気持ちいいよ。今日休みたくなっちゃうくらい」


 真由は離れてくれませんでした。

 むしろ、さっきより密着していると思う。


「だって、翼、嫌がってないじゃん」

「俺が本気で嫌がったら、真由が泣いちゃうから」

「それに……少し興奮してるんでしょ?」

 何かバレちゃった。

「隠したって、身体が反応しちゃうんだから」

 官能小説で聞くような台詞になってるよ。


「とりあえず、布団からでる」

「私は離さないよ」

「真由、いい加減にしなさい」

「翼がいけないんだもん。他の女の子と休みの日に過ごそうとしてるもん。不公平じゃん」

「わがまま」

「わがままじゃないもん」

「早く布団から出て、朝ごはん食べたいな」

「私にキスしてくれたら離してあげる♪」

取引だったら、こっちにしか利益がないようだが、俺は、

「それは断る」

「何で?」

「もし、俺に彼女ができたとき、真由がこの事実を使って、俺の邪魔とかをしてきそうだから」

「私ってそんなにひどい女なの?」

「目的のためなら手段選ばなさそうな女かな」

「ひど~い」

 真由の機嫌を損ねた所で、

「起きるから、離れて!」

「嫌!」

 真由は、意地でも離れてくれないらしい。

「本当に離れろ!」

「キャッ」

 思わず真由を軽く突き飛ばしてしまった。

 ドスン。

 真由がベッドから落ちてしまった。

 ヤバイ。真由が、怪我してたらどうしよう?


「うぅ、イタタ」

 俺は、とっさに真由のもとに駆け寄った。

 真由の顔を覗き込んで、問いかける。


「真由大丈夫か? どっか痛いとことかないか? 頭とか打ってないか?」

「え、え、だ、大丈夫だよ。ち、近いよ……」

 真由が少し笑って言うのだが、きっと我慢してるからに違いない。

「やっぱり、どっか痛いとこあるんじゃないなか? 湿布とか持ってこようか?」

「心配しすぎだよ~……嬉しいけど♪」

「真由が怪我とかしたら、心配になるのは当然なんだから」

「うぅ~、惚れちゃうよ。そんなこと言ったら」

「えっ?」


 結局、大変慌てた朝になりました。




「フフ~ン」

「今日は大変ご機嫌よろしいことで」

「分かるの?」

「鼻歌を歌って機嫌悪い人とか見たことないから」

 昼休み、私は(しずか)と昼ごはんを食べている。

「実は、今日の朝、翼の家に起こしにいったの。そしたら、抱きしめられたりしちゃってさ。幸せ~」

「水本君、朝から寝ぼけてたんでしょうね」

「でも、翼は起きてからも、私のこと抱きしめてくれたんだもん」

水本(みずもと)君にしては、意外だね」

「それでね、突き飛ばされてベッドから落ちたんだけど、めちゃくちゃ心配されたんだよ~。それが、嬉しくて嬉しくて、幸せだったなぁ」

「本当にそれ、幸せなの?」

「だって、好きな人から大切にされてるんだよ。そりゃ、幸せに決まってるよ」

「突き飛ばされたのに?」

「そ、それは、私がしつこかったからであって……」

「まぁ、水本君は、真由のこと好きだった訳だし、今までの女の子の中では、一番大切なんだろうね。だから、真由は今のうちに、もっと距離を縮めておくのもいいかもね」

「どういう意味?」

「今は、真由にライバルになる女の子はいないわけでしょ? だから、彼氏彼女の関係になるには、もっともっと一緒の時間過ごさないと」

「ライバル……」

 私は、ある人を思い出した。

 それは、翼と一緒の部活に入っているという女の子の存在だった。

「どうしたの?」

「まだ、ライバルかどうか分かんないんだけど、一人そういう人がいるかもしれない。翼と同じ部活の女の子なんだけど……」

「ハハハ、ヤバイね」

「笑い事じゃない!」

「ゴメン、ゴメン。でも、真由にとっては厄介な相手になるかもしれないね」

 大丈夫、大丈夫。私が一番翼のこと好きだし、翼にふさわしい女の子は、私しかいない。

 心のなかでそう念じ続けていた。

「でも、水本君がその部活の女の子のこと好きになったら、真由は、あっさり捨てられるかもね」

「ひどいこと言わないで!」

「でも、実際そんなことが起きるかもしれないよ」

「その時は・・・」

 その時が来たら、どうしよう? 浮気相手にでもなって、わざと浮気をその彼女にバラして、別れてもらって、それから付き合うとかしようかな?

「危ないこと考えてない?」

「人の心は読んじゃダメ」

「真由は、嫉妬深いからストーカーとかになりそうで、私スゴい怖いよ」

「ストーカーにはならないよ」

「私嫌だからね。親友が警察のお世話になるとか」

「むぅ、ひどい。バレないようにするもん」

「するつもりじゃん」

「い、今のは誘導尋問だよ~」


 こうして、昼休みは終わっていった。


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