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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
33/112

そして、暇になる

 俺は帰ってからベッドに寝てしまい、晩ごはんを食いそびれた。今、九時半である。


 リビングに行くと、母さんと(そら)がいた。

 母さんは俺が寝てるのを邪魔したくなかったとか言った。そして、母さんはおやすみと言い、そのまま寝室に行ってしまったので、仕方なくカップラーメンを食べることにした。醤油味か塩味かで悩んだのだが、塩味にした。

 母さんは、夜遅くに帰ってくるのが多いので、早く帰ってきた日は、晩ごはんが終わるとすぐに寝てしまう。今日は、そんな日だった。


 ヤカンに水を入れ、沸騰させる。

 当たり前のことを当たり前にできるのはいいことだ。俺は多分、いいことを言ったはずだ。

「お兄ちゃん、ラーメン食べるの?」

「うん。晩ごはんというか夜食だな」

「いいなぁ、一口ちょうだい」

「いつもなら、なにも考えずにあげるが、今日はこれが晩ごはんだから、あげることはできない」

 すまない、妹よ。こんなダメ兄貴を許してくれ。

「ケチ」

 二文字で俺の心は砕け散った。ひどいよ。

 ヤカンから熱いお湯を注いでいく。三分待つ。

 妹は、テレビを前にして笑っている。

 今は、バラエティ番組が放送されている。旬の芸人さんが出ていて、ふと思ってしまう。

 来年までこの人たち残ってるのかなぁと。

 そんなことを思っていると、三分はすぐに経つ。

 特製スープを入れて、完成だ。

「いただきます」

「いいなぁ」

 妹の視線はなるべく無視して、一口目をすする。

 おいしいなぁ。やっぱりカップ麺って普通においしいなぁ。

「ねぇねぇ、お兄ちゃん、一口おねがい~」

「分かったから」

 結局、空に一口あげることにした。空の前にカップ麺を置いておく。

「お兄ちゃん、あーんして」

「それは断る」

 ラーメンをあーんするカップルなんて聞いたことない。決して、妹と変な関係を持とうとかそんなことも思ってないよ。・・・本当だからね。

 甘いものとかならともかくラーメンは危ないからダメだな。

「ケチ」

この短時間で二度も同じこと言うなんて。

火傷(やけど)しないためだからな」

 お兄ちゃんの優しさっていいね。今のは、翼的にポイント高いね。

「お風呂入ってくるねー」

 リビングを出て、風呂場に向かっていった。


 一人リビングに取り残されて、テレビを見る。

 もうすぐ十時になる。

決して遅い時間ではないが、誰もいないとなると、寂しい時間でもある。

 ニュース番組でも見て、今日は勉強して寝よう。

 さすがに「結婚不適合者」の話題は、ほとんど無くなっている。

「空が風呂から上がるまで、部屋に戻ろっか」

 俺は、カップ麺を片付けて、部屋に戻った。

 部屋に入ると、携帯が光っていた。

 メールが四件来ていた。一件はまこっちゃん。

 あとの三件は、真由(まゆ)からだった。

 その内二件は、どうしてメールの返信してくれないの? という束縛感が強いメールが来ていた。

 メールの内容は、二人で遊びにいきたいということだけだったので、とりあえず返信しておく。

「予定が空いてたら、またメールする」

 これでよし、早く風呂に入りたいな。

 風呂場に突撃してやろうかな。空と風呂に入るなんて多分ここ三年無かったからチャンスかも。

 メールが返ってきた。

 真由からであるが、内容がなかなか凄かった。

「土日祝日ならいつでも暇だから、メールしてくれたらいつでも遊べるからね♪」

 何だろう、恐怖感しかないんですけど。

「ありがとう」

当たり障りのない返信になってしまうが仕方ない。

次は、まこっちゃんからのメールの確認しないと。

 内容は、いつぐらいに家に行っていいかということだった。家というのは、俺の家だ。

 来週の水曜から二泊三日で校外活動が始まる。

 今週の週末は、必要なものを買いにいくのだ。

 来週の週末からは、ゴールデンウィークが始まるので、それぐらいの日にしておこうかな。

「来週のゴールデンウィークとかでいいか?」

 とりあえずこんなメールを返信しておく。

「分かった。具体的な時間は今度会ったときで」

 メールの返信が来たので、携帯をベッドに置く。

 すると、突然部屋が開いた。

 空が湯上がりパジャマ姿で立っていた。

「どうしたの?」

「勝手にどっか行かないでよ~」

「何が?」

「風呂から上がってリビングに行ったら、誰もいなかったんだもん。怖いじゃん! うぇーーん」

 あー、確かにいると思って実際いなかったら怖いもんな。空が泣いちゃった。謝らないと。

「ごめんな。テレビ何もなかったから、部屋戻ってただけなんだよ」

「うぅ」

「泣かない。泣かない」

頭をよしよししてあげる。髪は乾かしてなかった。

「今日は・・・ここで寝る」

「分かったから泣き止んで」

 この状況で風呂に入っていいのかな?

「それじゃあ、俺風呂に行ってくる」

「なるべく早くね」

 ご命令なら本当に早くしないと。

結局、俺は十分で風呂から上がり、部屋に帰った。

 しかし、空は既に眠りについていた。

すごい無意味な風呂の入り方だったな。

俺もベッドに入り、空と一緒に寝息を立てた。


 俺が目覚めると、空はまだ夢のなかだった。

「空~、起きなさい」

 空はすぐには起きてはくれない。揺すったり、叩いたりして、何とか起きるのだが、起こしたらすぐベッドから引きずり出さないといけない。

 再び寝てしまう危険性があるから。

「お兄ちゃん?」

「俺はお前のお兄ちゃんだぞ」

「私何でここで・・・?」

「昨日、勝手に部屋入ってきて寝たからだよ」

 簡潔に説明して、空を自分の部屋に戻す。


 朝から少し眠いのは何故だろう? いつもはもっと遅くに寝ていることが多いのに。

「おはよー」

空本(そらもと)さん。おはよう」

「『さん』付け禁止」

「あー、ごめんごめん」

 やっぱり全然慣れないな、人の呼び捨てって。

「今日、昼ごはん一緒に食べてもいい?」

「別にいいけど」

「出来れば、二人っきりがいいんだけど。少し部活の話とかもしたいから……」

「いいよ」

 何かあったのかな? そんなに悩むことなんか無かったはずなんだけどな。

 とりあえず今日は、村上(むらかみ)君に断りを入れておかないと。


 そして、昼休み。

「ごめん。今日ちょっと空本さんと食べるから、一人で食べてて」

「うん……分かった」

 声のトーンがいつもより低かった。

 村上君には、後で菓子折りでも持っていこう。

 俺は、空本さんと一緒に、部室で昼ごはんを食べることにした。

 空本さんがどうして、昼休みの時間を使って、俺を誘ってきたのかまだ分からない。

「昨日の相談なんだけど……」

「まだ悩んでいたの?」

そりゃ、そう言うしかない。終わったことだから。

「いやぁ、悩んでたというよりあんな感じでいいのかなって思ってて」

「でも、恋愛相談するぐらいだから、これでいいんだとは思うんだけどな」

 正しい方向性は、やっていくなかで見つける。

 今はまだ、悩んでいる必要性は無いのだ。

「とりあえず昼ごはん食っていい?」

「あぁ、そうだね。いただきます」

 弁当を開けて、それぞれ食べ始める。

「告白したことってあるんだよね?」

「うん。幼馴染に告白してフラれたけど……」

「どうだった? 告白したときって」

「言ったときはやっと言えたって思って、フラれたときは、ため息しか出なかったから覚えてない」

「へー。辛かった?」

「そりゃ、もちろん辛いに決まってるよ。好きな人にフラれるんだから」

 あのときは、辛かったな。だって幼馴染の関係を壊してまでしたことなんだから、それが失敗して、それから、話せなくなったのもなかなか辛い。

「でも、告白できるだけすごいと思うよ」

 褒められると、ムズムズしてしまう。

「とりあえず、恋愛相談なんか滅多に来ないと思うから気楽に構えていた方がいいぞ」

「そうだね」

 結論は「気楽に構える」で全会一致で終わった。

「次の時間って何だったけ?」

「えーと、確か数学だったと思うよ」

「ありがとう。それじゃお先、また部活で」

「うん。また後で」

 これから、当分部活は暇になるんだろうな。


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