遂に来るのか恋愛相談
まこっちゃんの家から帰ってくると、六時になっていた。
母さんと父さんは、それぞれ会社の飲み会に参加していて、妹の空は多分、一人で待っているはずなのだが、今日は少し違ったようだ。
「翼~、おかえり~」
「お兄ちゃん、おかえり~」
真由と空が俺を出迎えてきてくれた。
「ただいま。晩ごはん作ってくれたの?」
「翼が帰ってきたら、三人で外食でもと思って」
「遅れて悪かった。で、どこいくの?」
「この近くならどこでもいいんだけど・・・」
「空はどこか行きたいとこある?」
「うーん。特にないけど・・・強いていうならパスタが食べたいかな」
「ふぅーん。ファミレスとかでいいかな?」
「「ファミレスかぁ……」」
何このシンクロ率。ていうかファミレスに謝れ。
「ファミレスはダメか……うーん、それじゃあ、真由と行ったパスタ専門店に行ってみるか?」
「あそこのお店? 少し遠くない?」
「じゃあ、手作りにするか?」
「あ、それいいかもね」
「お兄ちゃん、たまにいいこと言うね」
たまにしかいいこと言わない男子高校生ってほとんど生きる意味が無いような気がするんだけど。
まぁ、男子高校生は基本的にアニメとテストがヤバいことか下ネタで、なんとかなるって聞くけどね。
「パスタの麺は家にあったから、茹でるだけでいいけど、ソースとかは、作るか買うかしないと」
「じゃあ、三人で買い物行こうよ」
結果的に三人で出かけることになった。
近くのスーパーで材料を買うが、何のパスタにするかで、俺たちは悩んでいる。
「ミートソースでいいんじゃないの?」
「えー、ペペロンチーノとか食べてみたいなぁ」
「カルボナーラとか作ってみたい」
俺、真由、空の順に喋っていたのだが、意見がなかなかバラバラで、困ってしまう。
「それぞれで作る?」
「金がかかるから、それは却下」
「ケチケチしてたらモテないよ~」
「家庭的な男とは思えないのか?」
「お兄ちゃんに家庭的とか似合わないよ」
家庭的な男がモテなくなったら、カッコいい男しかモテなくなって、そろそろ本気で二次元に行く準備が日本各地で発生するのでしょうね。
「じゃんけんで決めるか」
こういうときの解決手段第一位じゃんけん。
ちなみに第二位は知らない。にらめっこかな?
「最初はグー、じゃんけん」
ポン。全員グー。ちょっとブレイク。
「あいこでしょ」
結果は、俺の一人勝ち。イェーイ。
校外活動のときの集まりにこうなったら良かったのに。
「「ミートソースかぁ……」」
何なのこの人たち。ファミレスで良かったじゃん。
好きなもの作ってもらった方が早いだろ。
「じゃあ、もう二人で決めていいから」
イライラして思わず口調が荒くなった。
「いや、大丈夫だよ」
「うん、ミートソースで大丈夫だから」
気使うのはやめてください。すげー俺がわがまま言ってる感じなんだよ。
「さてと」
カルボナーラとペペロンチーノとミートソースの冷凍食品を買うことにした。
「冷凍食品なんか嫌だよ」
「お兄ちゃん、何怒ってるの?」
「うるせぇ!!」
気分が悪いので怒りました。
「結局、冷凍食品になっちゃった」
「はぁ……」
「・・・」
電子レンジでチンして、食卓で食べる。
終始無言の状態が続く。
「お兄ちゃん、今日、昼どこ行ってたの?」
「まこっちゃんって覚えてる?」
「えーと、お兄ちゃんの小学校の友達だっけ?」
「翼の小学校時代の友達……」
真由とはあまり接点がないのが意外だった。
「そう。まこっちゃんの家に行ってた」
「真さんだったっけ。お姉さんいなかった?」
「知ってるの?」
「何回か会ったことがあるから」
「今、大学生らしいけど、かなり美人さんだった」
その言葉を発したとき、二人がピクッと動いた。
「お兄ちゃん、私とどっちが可愛いの?」
「翼、私とどっちが美人さん?」
ある意味究極の質問なんだよな。
客観的に言えば、海お姉ちゃんが上なんだよな。
だからこそ、どう答えればいいのか分からない。
「空の方が可愛いぞ~」
ここは、お兄ちゃんとしての優しさを溢れ出す。
まぁ、空も結構可愛い女の子なんだけどな。
甲乙つけがたいほどである。
「真由よりかは美人さんだよ」
「ひど~い。翼のバカ。嘘でも私って言ってよ!」
「嘘つくの苦手なんだよ」
「むぅ、いいもん。性格悪いに決まってる」
「いや、真由より性格いいと思うよ」
「うぇーん」
真由がちょっと泣きそうになった。言い過ぎたかな?
「ごめん、真由もかなり可愛い女の子だぞ」
フォローを入れるのを忘れずにね。
三人での晩ごはんも終わり、真由を玄関の方まで送る。
「真由、今日はありがとう。朝ごはんも作ってくれたり、わざわざ家に来てくれたりして」
「うん。私も楽しかったよ。でも、さっきの話はちょっと傷ついちゃったよ」
「それはごめん」
「いつか翼に認められるようになるからね」
「無理はしないように」
「それじゃあ、またね♪」
「うん。また」
真由が家を出て、向かいの家に走っていく。
明日の授業の用意をして、眠りにつく。
携帯を見ると、メールが来ていた。
海お姉ちゃんからのメールだった。
「翼君、今日はありがとね♪ また今度、家に遊びに行ったり、出かけたりしようね♪ それじゃおやすみ」
俺はサッと返信をした。
「こちらこそありがとうございました。絶対に来てくださいね! 約束ですからね♪ おやすみ」
こんな感じでいいかな? 早く寝よーと。
何だか久しぶりの学校な感じでいる。
朝から、コンビニに寄って、パンを買っていく。
今日こそ「恋愛相談部」に行きたいものである。
しかし、現実はそんなに甘くない。
今日は、放課後にクラスのみんなの分のしおりを作らないといけないのだ。作業は辛いな。
「水本君、おはよー」
「村上君、おはよー。今日は早いね」
いつもは俺より少し遅れてから来ている村上君が今日は、いつもよりかなり早く来ていたのだ。
「ちょっと勉強しようかなって思って」
「あー、そうなんだ」
じゃあ、邪魔しちゃ悪いな。頑張れ。
「ねぇねぇ、ここ分からないから教えて♪」
「ん~、どこ?」
村上君が開いていたページは、数学の問題だった。
「ここは、多分習った公式を入れたら出来るはず」
「そうやったんだけど、答えと何かちがくて」
「そうなの?」
俺は、村上君からノートを見せてもらう。
村上君から少しだけいい匂いがする。シャンプー変えた?
「ここの計算多分間違ってるよ。ほらここ」
「えーと、あっ本当だ、水本君凄いね」
「まぁ、数学は昔から得意だったから」
「ありがと。また教えてね」
また勉強を始める村上君。
俺も少しだけ予習しとくか。
一時限は、英語の時間だった。
この英語の時間は、文法を学ぶ方だった。
英語は、ストーリーがある教科書を使うリーディングと文法を学ぶライティングの二つに分けられる。
最初は、基本的な事項ばっかりで、中学校のときに習ったものばかりなので、分かりやすい。
授業が終わり、次は選択授業だ。
この選択授業は、書道と美術と音楽の三つのうちの一つを選んで、その授業を受ける。
人数の関係で、C組の人と一緒になってしまう。
俺は、書道を受けることにした。
理由は、一番マシな教科だったから。
音楽は、歌も楽器もそれほど上手ではないし、美術も写したりするのは、かろうじて出来ても、自分で描くとなると、あまり出来なくなる。
村上君は、音楽をすることになっているので、ここでは、別れることになる。
ちなみに、空本さんは、俺と同じ書道だった。
最初の授業は、自分の名前を書いたりして、終わってしまった。来週に教科書のお金を持ってくることになった。
三時限は数学で、四時限は体育だった。
体育は、集団行動の練習で五十分やり終えた。
昼ごはんは、村上君と一緒に食べて過ごす。
放課後、三度あの教室にむかう。
しかし、今日で最後の集まりだ。
教室に入れば、案の定全然集まっていなかった。
しばらくすると、人が入ってくる。
主任からクラス分のしおりのページを渡される。
地道な作業になるが、やればやるほどスピードが上がっていく。コツとかも掴めるようになる。
クラスには全員で三十八人いるので、早く終われば早く帰れる。
大体一時間もすれば、ほぼ終わってしまった。
他のクラスも終わっていて、休憩をしてた。
全クラスが終わり、担任に持っていく。
職員室までしおりを持っていき、森野先生の机に置く。
「水本君、今日から部活本格的に再開だよ」
「あぁ、そうですね」
部室の鍵を持っていき、そこまで歩いていく。
鍵を開けて、部室に入り、中の空気を換気する。
いつも通りの場所に座り、いつも通り相談しに来る人を待ち続けて、何事もなく終わってしまう。
「今日も来ないのかな?」
「多分来ないかもな」
「何か宣伝とかしないといけないのかな?」
「そこまでする必要はないと思うけど」
コンコン。
突然、部室のドアがノックされる。
「あの、ここの教室って恋愛相談してくれる部活ですよね?」
女子の声だった。やっと来たのかな?
遂に部活動が始まりそうだ。




