早朝は辛いよ
今日は、きたる日曜日。
先週も土日は埋まっていたのだが、中学校のときには滅多にないことだ。とうとう俺もリア充とやらになれたのか?
ただ、今日は目覚めが少し悪い。
理由は、俺の目の前にいる友達のせいだった。
「翼~、起きてください! 朝ですよ~」
その言葉を耳にしたのは、時計を見ると、朝の五時過ぎだったのである。嫌がらせにも程があるな。
「俺は、眠いから寝ます」
「朝ごはん作るから、リビングに来てね」
「人の話を少し聞いてください」
「頑張って作るから」
「意識は高いのは認めるから」
「ふふーん」
鼻唄を歌いながら、真由が部屋から出ていった。
こんな朝早いのに、いったいどうしたんだろう?
そんなことを考えることもできないほど、頭が回らない上に、とてつもなく眠気が襲ってくる。
ふぁぁと欠伸をしてしまう。
とりあえず、リビングまでとぼとぼ歩いていく。
「やっと来たぁ」
台所は完全貸切状態に陥っていた。母さんはどこ?
「ねぇ、真由、今日何かあった?」
「何で、そんなこと聞くの?」
「朝ごはん作ってるから」
まっとうなご意見だと思いますが。
「だって、こういうの恋愛漫画とかの定番だから」
「ごめん、恋愛漫画とかそんな読まないから」
ただし、ラノベのラブコメは、結構読むけどね。
ハーレムものだったら、好きな女子キャラが出来やすいので、すごい好きになる。
「翼も恋愛漫画読んだ方がいいよ」
「また、空から借りるかも」
「私が、貸してあげようか?」
「いや、空から借りるわ」
朝から何の話をしているのか、時事経済の話とかしないと、時代に置いてかれるよ。
「むぅ」
何か拗ねちゃった。可愛いけど。
「ところで、朝ごはん何作ってるの?」
話の切り替えをしました。幼馴染の料理下手って、結構、ラノベの定番だからな。
あと、幼馴染があまり勝てな・・・これは、言わないでおこう。
「完成までのお楽しみ♪」
完成まで待ち遠しいな♪ それより早く言ってください。朝五時起きで、こっちは寝起きなんですよ。
そういえば、真由は何時に起きたのかな?
というか、どうやって家に入ってきたのかな?
怖い、怖いよ。
この謎は、じっちゃんの名にかけて解決かな。
「翼は、朝から女の子にごはん作ってもらえて嬉しい?」
「そりゃあ、嬉しいに決まってるだろ」
「そうなの? 良かったー」
どんな男も、朝起こされたら嬉しい(妹でも可)。
朝五時でなければ良かったけど(七時がベスト)。
「もうすぐで出来るから待ってね」
「うん」
今にも寝てしまいそうだ。天使が俺を連れていく。
「完成!」
真由が皿に、作ったのを乗せていく。
テーブルに真由の分と俺の分を持ってくる。
目の前に出されたのは、スクランブルエッグという朝の定番の食事が出てきた。
「「いただきます」」
「翼、先に食べて」
毒味とかじゃないよな? 俺は、一口食べた。
「どう?」
「うん。美味しいよ」
「本当に?」
「うん。かなり美味しいよ」
「毎日作ってあげようか?」
「朝五時起きじゃなければ考える」
「考えてはくれてるんだぁ」
何だか、夫婦のようになってきてる。
「ごちそうさま」
「はーい」
皿を流しの所に置いて、部屋に戻る。
朝が早すぎて眠くなったので、再び布団に入る。昼まで寝てから、待ち合わせ場所に向かおう。
しかし、簡単にはいかないものだ。
「翼、一緒に寝てもいい?」
「家帰って寝た方がいいんじゃないの?」
「翼と一緒がいいの!」
女の子にこんなこと言われたら、始まっちゃうよ。
「・・・分かりました」
「やった♪」
結局、一緒に寝ることになったのだが、彼女の服装を改めて見ると、結構際どいような感じがする。
太ももがあらわになっている。
真由がそーっと布団に入ってくる。
「翼と一緒の布団で寝るのって久しぶりだね」
「そうだったかな?」
あんまり思い出したくない記憶が甦る。
「一緒に寝たじゃん、幼稚園のとき……今、思い出したらドキドキしちゃうけどね」
「・・・」
「思い出してるよね。お昼寝タイムのとき」
あれは、幼稚園のとき。
みんなが布団を出してきて、昼寝をするだけの時間があった。それが、お昼寝タイムである。
真由はいつも俺の隣を陣取っているのだが、いつも手を握りながら寝ていることがある。
そんなある日、真由が俺の布団にこっそり入ってきた。そのときは、布団のなかに潜り、何も考えずに真由をぎゅーっと抱きしめて寝た。
先生にバレないようにしていることがすごい良かった。
真由と布団のなかでイチャイチャして、それから真由が自分の布団に帰っていった。
そんな日が何日か続いていた。
そして、真由が俺の布団に入りはじめてから、数日後。
いつも通り、真由が布団に入ってくると、俺は抱きしめた。それからしばらくすると、真由の顔が俺の目の前に近づく。
そして、チューをされた。
※チューとは、相手を異性として認識し始める前の期間のキスのことである。ちなみに、俺のファーストチューは、妹の空と、三歳のときにした。
「翼君とチューしちゃった」
布団のなかで、真由が耳もとで言ってきた。
「もう一回したいな」
「いいよ♪」
そのときの真由は大人のような雰囲気だった。
そして、毎日毎日布団に入ってきては、チューをするというのが、日課になり始めた。
多分、数えられないぐらいしたと思う。
ただ、幼稚園を卒園してからは一度もチューもキスもしていない。これが思い出でした。
「翼、こっち向いて」
「昼には起きるから」
「どこかに行くの?」
「友達の家」
「今日は遊んでくれないんだ」
「予定入ってるから」
人生のなかでこの台詞、あと何回言うのだろうか?
「分かった。今日は諦める……」
その言葉を聞いて、俺は眠りについてしまった。
何故か暑く感じる。目を覚ますと、布団のなかにいた。
真由には手を握りながら、こっちを向いていた。
すると、真由も目を覚ました。
「さて、起きようか」
「ねぇ、久しぶりにチューしない?」
どんな申し出なんだよ。
そして、チューじゃなくてキスだし。
※キスとは、相手を異性として認識し始めてからする口づけのことである。ちなみに、俺にはまだその経験はない。
「しないよ」
「私のファーストキス奪ったのに」
「ファーストキスじゃなくて、ファーストチューだろ」
「じゃあ、チューしてよ。もう奪われたからされてもいいもん」
「今からは、キスになるからしません」
「キスしたくないの?」
さすがに、この勢いではしたくない。
「キスしてもいいよね?」
「ダメだから」
真由の目が本気になり始めている。
これは、なかなか危険な状態である。
「分かった。いつか翼からしてもらうから」
自分で納得したからいいとしよう。
「今何時だっけ?」
布団から出て、携帯を確認する。
十二時。
まだ少しだけ時間はある。準備しよう。
「真由はそろそろ家に帰っといた方がいいよ」
「うん」
真由は、落ち込んでいるというか、ふてくされているというか機嫌が良くない。
真由が部屋から出ていくと、服を着替えた。




