姉弟は頑張ります
空とのお出かけが終わって、買ってきたラノベを読む。しかし、あまり頭に入ってこない。
読むのをやめ、少し眠ることにした。
明日、まこっちゃんの家に行くのか、新しい家だから、どうなっているのか分からない。
そういえば、まこっちゃんのお姉ちゃん、元気かな? よく一緒に遊んでたし、バレンタインでチョコくれたし、お別れの時、一緒に泣いていたから会いたいな。
少し思い出に浸っていた。
お姉ちゃんは確か三つ上だったので、今、大学生のはずなんだけど、バイトしてたら会えないかも。
晩ごはんまで少し寝よう。
「ねぇ、本当に翼君来るんだよね」
「来るって言ってんじゃん。楽しみなの?」
「そりゃ、た、楽しみだよ」
「まぁ、俺も楽しみだからな」
「真にとっては、唯一の親友だもんね♪」
「姉ちゃんにとっては、初恋の人だもんね♪」
「うぅ。そうだけど……」
姉ちゃんが翼のことを好きだなと感じたのは、姉ちゃんが中二ぐらいのときだった。
いつも、一緒に遊んでいた姉ちゃんが突然、遊ばなくなり、俺たちを物陰からこっそり覗いていた。
部屋のリビングでゲームをしていて、俺たちに近づいてきてはいても、俺にしか話さず、翼とは話さなかった。バレンタインには、こっそり翼に渡していた。
その次の日に、姉ちゃんから貰ったと報告が来た。
そのときに、確信した。
姉ちゃんは翼が好きなんだと。翼は多分、平均的な小学五年生だった。なのに、何でだろう?
不思議に思った。姉ちゃんは何で、同級生に興味なかったんだろう? 色々気になった。
思いきって姉ちゃんに聞いてみた。
「お姉ちゃんは、翼のこと好きなんだよね?」
直球の質問にした。回りくどいよりいい。
「えっ、えっ、どど、どうして、えっ?」
めちゃくちゃ動揺していた。
「男の子として好きなんだよね?」
もっと直球にした。
「う、うん……」
「じゃあ、翼のどこが好きになったの?」
「えっ?」
「だって気になるじゃん」
「か、関係ないでしょ!」
「一応、翼は親友だし、関係はあるよ」
「・・・」
別に嫉妬心とかはなかった。翼だもん。
姉ちゃんと結婚とかしたら楽しそうだもん。
当時はそんなことを思っていた。
もちろん、今も嫉妬心はないよ。
むしろ翼と久しぶりに会って、姉ちゃんと早く結婚しろとか思ってる。
姉ちゃんと幸せに暮らしてくれ。
「好きになっちゃったんだもん」
「えっ?」
「好きになっちゃったんだもん!」
え~。もっと理由あるのかと思った。
「翼君、優しいもん。守ってくれたもん。だから、好きになっちゃったんだもん」
「守ってくれた?」
「うん。守ってくれた」
「どういう話?」
「私が中一のときに、学校から帰る途中の道で、上級生の女子に囲まれたの。そのときに、翼君がお姉ちゃんって言いながらやって来て、帰ろうよとか言って、私をつれて帰ろうとしたの」
「それで?」
「その上級生の子が私たちはお姉ちゃんに用があるの、お子ちゃまは早く家に帰りなさいとか言ってきたの。そのときに、翼君がお子ちゃまじゃないって言って、私の腕を掴んで全力で逃げたの」
「そいつ、本当に小学四年生か」
「顔見れば、翼君だったもん。間違いないよ。それで、お姉ちゃんは僕が守るって言ってくれて」
「翼、かっこいいな」
「その瞬間、胸がドキドキしたの」
「翼がそんなことしてたとは」
「本当だよ」
「いや、嘘だとは絶対思わないよ」
「それから、意識するようになっちゃって」
「告白とかしないの?」
「出来ないよ。そんなこと」
「まぁ、頑張って」
「うん。頑張る♪」
こうして、姉ちゃんの初恋を知った。
「翼君、今どんな男の子になってるかな?」
姉ちゃんは、控えめに言っても可愛い女性である。
ただ、人見知りが激しいから、なかなか友達ができない。もちろん、恋人なんかできたことがない。
早くいい人と巡り会って欲しいのだが、このままでは、一生巡り会わない可能性もある。
そのため、俺は翼と姉ちゃんが付き合って結婚してくれたら、とても嬉しい。
そういう意味では、シスコンかもしれない。
でも、翼は「結婚不適合者」だった。
言わないといけないかもしれない。言った方がいいはずである。それでも、姉ちゃんは多分、そんなこと関係なく好きだと思う。
そういう俺も「結婚不適合者」だったな。
女性恐怖症みたいな感じで、親しい女性以外は受け付けなくなってしまった。
ただ、治せる気がしない。翼に相談しよう。
「バイトどうするの?」
一応、聞いてみることにした。
「明日は夜に行くことにしてる」
「よかったね」
さて、姉ちゃんと翼が上手くいくようにしないと。
「真はどうして、そんなに応援するの?」
何て答えようかな? シスコンだからとかかな?
それとも、姉ちゃんが大事だからとか?
「翼と姉ちゃんに結婚してほしいからかな」
一番の理由かも。
姉ちゃんは翼と絶対上手くいくと思うし、夫婦になれば、幸せな雰囲気がすでに見えてる。
「け、け、け、結婚?」
「うん」
「そんなに急な話しなくても」
「姉ちゃんには翼が一番の相手だと思うよ」
「そう・・・かな?」
「自信もって!」
「うん! 頑張る」
「最低でも、メールアドレスの交換はしないとね」
「それは、少しハードルが高いよー」
これで、ハードルが高いとなると、何が低いのか?
とにもかくにも、絶対交換してもらう。
何事も積み重ねていくことが大切なのだ。




