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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
27/112

妹は優しかった

 土下座をした俺は、妹とまた寝る。

 一応、許してはもらえたのだが、ちょっと距離ができた。俺すごく落ちそうなんだけど。

いっそのこと、床で寝た方がいいんじゃないのか?

 でも、抱きしめるのから手を握るのに変わっているので、床には寝れない。


 翌朝。目が覚める。八時。

 結局、向かい合って寝ていました。

 いつもなら、学校に行ってる(そら)であるが、今日は休みなので、ぐっすり寝ている。

「空~、起きなさい」

 あくまで、夜中のことは無かったことにしたい。

「むぅ、お兄ちゃん、おはよ~」

 妹も起きて、一緒に朝ごはんを食べる。

「お兄ちゃん、夜中」

「いやー、朝ごはんはおいしいですねー」

 妹の言葉を遮った。さすがに、母さんの前ではあの事は秘密にしておきたい。

「何時ぐらいに行くの?」

「本屋は、大体十時から開くから十時に出ればいいんじゃないかな」

「分かった。それまでに準備しとく」

 空は食べ終わると、自分の部屋に戻った。

「今日どっか出掛けるの?」

「空と本屋巡りに出掛ける」

 最小限の言葉で伝えていく。

「じゃあ、昼ごはんはどっかで食べるのね。それじゃ、お金」

 母さんは財布から、一万円を渡してくれた。

「ありがとう」

 俺も準備しなきゃ。部屋戻ろ。


 さて、何の服着ていこうかな?

 家族とはいえ、ダサい服で出掛けるというのはあってはならない。空の知り合いに出会ったときに、ダサいとか思われたら、空が可哀想だ。

 なるべくオシャレな服にしてみよう。

 服のバリエーションがそんなにないんだよな。

 ここで、俺のセンスが問われる。

 いかに、よく見せられるか頑張ろう。

 吟味に吟味を重ね、着ていく服を選んだ。

 財布に母さんから貰った一万円とお年玉から一万円を出し、そこに入れる。空を呼ぼう。


「空、準備できたか?」

「あと、ちょっとだけ待って」


 これを待てるかどうかで、男としての良し悪しがわかる。最近では、空の私服姿はあまり見ていないので、楽しみだ。


 十分後。

 空が出てきた。

 膝丈より少し長いスカートを着ていて、女の子という感じの服だった。

「似合ってるね」

 もちろん、お世辞ではない。可愛いもん。

「ありがと」


「それじゃ、いってきまーす」


 家から出て、歩き始める。

本屋巡りなんて、文字通り本屋をただ巡るだけだ。

 まずは、一番近くの本屋まで歩く。


「お兄ちゃん、手でも繋ぐ?」

「空がいいんだったら」

「それじゃあ」


 手を繋ぐ。夜中も繋いで、朝も繋ぐ。

どんだけ俺は妹と仲がいいんだろうか?

 一番近くの本屋まで約十分。

 休日ではあるが、朝の本屋は空いている。

本屋に入ってみると、予想通り空いていた。

 まずは、漫画の新刊チェック。

それをしてから、本屋の中を回っていく。

 空は、少女漫画の方にいった。

週刊の少年誌や月刊の少年誌を立ち読みしていく。

 基本的にそれらを買わずに、単行本を買っているのだが、なるべく先を読みたいのである。

 自分が買っている単行本の漫画を大体読んで、そこのコーナーを後にする。

 次に向かうのは、ラノベのコーナーに行く。

 ここで、することは新刊チェック。

 そして、気になるものを一巻から読んでいく。

買うかどうかは次の本屋で決めることにしている。


「お兄ちゃん、これほしい」

「うん?」


 空が持ってきたのは、少女漫画だった。

 そういえば、少女漫画って読んだことないな。また貸してもらおう。

「他に買うものとかない?」

「まだ、一軒目だから全部は買わないよ」

「そっか。じゃあ、お会計してくる」

 レジに向かい、会計を済ませて本屋を出る。

 二軒目の本屋に向かってまた歩く。

「こっから、少し歩くけど頑張ってね」

「うん。分かった」


 多くの人間は、これの何が楽しいのか理解不能だろう。ちなみに、俺もよく分かってない。

 だが、俺はこれをやり続けていた。

 本屋は色々ある。

 全国に展開している店。県内のみに展開している店。隠れ家みたいにあるような店。

 このように、本屋とはなかなか面白いと思う。

 もっと注目しているのは、中のコーナーの配置。

入る店入る店で、配置は似ているようで少し違う。

 自分だったら、こんな配置にしてみたいなとか考えていたりして楽しんでいる。

 本屋を探すとき、絶対にネットで検索しないようにしている。理由は、自力で見つけたいという単純な理由だが、見つけたときの喜びはなかなか味わえないものである。

 だから、休みの日に自転車で走り回っていた。


「お兄ちゃんは何か欲しいものあったの?」

「まだ、少し考えてから買うつもり」


 多分、空にとってこの本屋巡りはそんなに楽しくはないと思う。ゲームセンターとか遊園地とかならもっと楽しませてあげられたかもしれない。


「空って他に行きたいところとかあった?」

「どうして?」

「いや、自分で提案して言うのも何だけど、これ結構つまらないと思うよ」

「別にそんなことはないけどね。まぁ、強いていうなら映画とか行ってみたかったかな」

「今回はごめんな。次は、映画見に行こうな」

「うん♪」


 やっぱり、人の心とかあんまり読めないな。

一応、今回はがっかりはしているとは思う。


 歩き続けて二十分。

 次の本屋に到着。

 二軒目は少し大きめの本屋で、多分全国展開している。

 新刊チェック。

 少年誌でさっき見ていない部分を今度は読む。

 そして、ラノベのコーナーに行き、立ち読む。

 さっきチェックしていたものをもう一回読み、買うかどうか判断する。

 買うことにした。とりあえず二巻まで。

さっきの店より本の数が多いので、もう少し見る。

「あっ、これアニメ化した作品だ」

 本屋では、独り言を喋るのも癖になってる。

「アニメ見てから、買うかどうか決めよっと」

とりあえず、二冊を手に持ち、空を探す。

大きめの本屋だと、少しだけはぐれることがある。

 小さい頃、母さんと本屋にいったとき、あっちこっちに進んでいき、気が付けばはぐれてしまった。

 探しても探しても見つからなくて、泣きそうになった。

 結局、母さんは女性誌のコーナーにいた。

 ちょっとは探してくれやとか今になって思う。

 でも、さっき少女漫画のコーナーにいたからそこを探そう。

 しかし、空はそこのコーナーにはいなかった。

「どこだろう?」

 辺りを回ってみる。女性誌とかのコーナーに行ってみよう。

 空は、女性のファッション誌のところにいた。

 やっぱり、女子ってそういうの気にするんだね。

 前に真由(まゆ)と本屋にいったときも、真由は、ファッション誌を見ていた。

「空~」

「あっ、お兄ちゃん、買うもの見つかった?」

「あったけど、空は?」

「このファッション誌買おうかな」

「それじゃあ、会計してくる」


 会計を済ませ、本屋を出る。

 昼ごはんどうしようかな?

 次の三軒目はデパートの中にあるので、その時に食べに行こうかな。

「空、ちょっと昼ごはん早くなるけどいい?」

「大丈夫だよ」

 確認を終えて、デパートの中に入っていく。

 エレベーターで、本屋の階まで上がる。

 ここの本屋も、全国展開の店である。

 ラノベは今回はやめて、普通の小説を探そう。

こういうのは、人気の作品から読むべきだな。

ポップで人気と書かれてある作品を手に取る。

最初のページを読んで、これなら読めそうとか考えて買うと、読まずに放置してしまうことがある。

 俺がその典型的なタイプだ。

だから、買うときは慎重に買うつもりだ。

「うーん。どうしようかな?」

「お兄ちゃん、この小説買うの?」

「悩んでる」

「私、この小説読みたいなぁ」

「んじゃ、買うか」


 会計に進む。

会計を済ませて、昼ごはんの店を探す。

「昼ごはん何食べたい?」

「うーん。何でもいいよ」

「そば屋でいいか?」

 近くで目にはいったそば屋を指差した。

「うん。そこでいいよ」

 そば屋に入り、昼ごはんを済ませる。

「さて、どうする?」

 俺はいいのだが、空がもしかしたら楽しんでないかもしれない。それなら、このへんで終わらせた方がいいと思う。

「帰るの?」

「空、楽しかったか?」

「楽しかったけど、ずっと同じだったから、新鮮味とかがなかったかな」

 意外と毒舌。そりゃそうか。

 これ以上本屋を巡っても、新鮮味がないみたいだし、帰ることにしよう。

「帰るか」

「うん……」

「次は、絶対に楽しませるから」

「うん。期待してる♪」

 妹は優しいものでした。


(つばさ)~」

「えっ?」


 突然俺の名前が呼ばれた。

 呼んだ方向を見ていると、真由ともう一人、多分荒井(あらい)さんの姿があった。

「翼、こんなところで何してるの?」

「空と本屋巡りしてたけど、今から帰る」

「空ちゃん、久しぶり~」

 真由が空に話しかけた。

「真由さん。お久しぶりです」

「真由たちは、何してるの?」

(しずか)と買い物だよ」

 荒井さんと空は多分、初対面だな。

「そっか、それじゃあまたな」

「うん。またね」

 真由たちと別れを告げて、デパートを出た。


「お兄ちゃんは、優しいね」

「どうして?」

「お兄ちゃん、真由さんに振られたんでしょ」

 傷口を開かないで。

「でも、ちゃんと今でも仲良くしてる」

「色々あったからな」

「私だったら、会いたくもないけどな」

 空は、少し怒っているような感じであった。

「お兄ちゃんにはいい人が見つかるよ」

「あ、ありがとう」

 妹に言われてちょっと嬉しい。

 そして、俺たちはまた手を繋いで帰っていった。




 同日同時刻。

「姉ちゃん、明日翼がうちに来るから、ちゃんと可愛い服で待っといてよ」

「えっ? えっ? 翼君、明日家に来るの?」

「姉ちゃんの大好きな、つ・ば・さ・く・ん」

「も、もう、か、からかわないでよ」

「でも事実じゃん。頑張ってねー」

 宮本(みやもと)(まこと)は親指をたてて、姉に言っていた。

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