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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
25/112

金曜日は早く帰ろう

 久しぶりに親友に会えて、嬉しいのも束の間だった。

 今日の最後の授業は、体育であった。

 体操服に着替え、運動場に出ていく。

 C組と合同で、体育の授業になる。


 俺は、体育が嫌いであり、苦手でもある。

 体力がないし、ボールとか来たらパニックになるし、球技やってるとろくなことが起きない。

 ちなみに、一学期は、体力テストと集団行動を予定されてる。

 一応、水泳もあるらしいのだが、期待はしない。


 今日は、最初だったので、男子はサッカー、女子はテニスをすることになった。テニスコートは、運動場とは少し離れているので、女子の応援はない。

 C組と対決が、始まったのだが、俺はもちろん攻めない。

 何故なら、人が多いからだ。

全員が攻めたところで、ボールは奪い合いになる。わざわざ、そんなところに行くほど俺は頭が悪くない。徹底的に、ディフェンスに専念する。

 村上(むらかみ)君も、俺と一緒にいた。

「僕、運動苦手なんだ」

「俺もだよ」

 運動が苦手なので、どうすれば評価してもらえるかばかり考える毎回の体育の授業。

「今、攻めてるみたいだね」

「うん」

 さすがに、こっちのチームが攻めてるかどうかは分かるよ。

「ボール取られちゃった」

「攻めてくるかもな」

 俺は、一応ディフェンスに向かっていく。

 相手の運動神経いいやつがドリブルしながら来やがった。どうせ、抜かれるなら、一矢報いたい。

 相手は、フェイントしてかわそうとしたのだが、俺はわざとぶつかって止めようとした。

 相手は、少し体勢を崩したので、その間にボールをどっかに蹴る。相手が、少しイラついた感じだ。

 味方から、ナイスディフェンスと言われた。

 これが、俺の処世術だ。見直したか。


 そんな感じで、サッカーが永遠と続いた。

結果は、二対一で、俺たちのクラスの勝利だった。

 授業が終わり、さっさと着替えて、ホームルームまでのびのび休憩をする。


 女子も戻ってきて、ホームルームが始まる。


「課題テストの結果返すよー」


 先生から言われて、成績が書いている紙を貰う。

狙うは順位一桁。俺が取りに行く。


 結果は、七位だった。

 まぁまぁ良かった。とりあえず安心した。

 空本(そらもと)さんには負けたので、クラスではトップではない。


「このクラスの一番の人は、学年順位五位です。その次は、七位でした。その次は、十二位ね。次も頑張ってね♪」


 つまり、俺はこのクラスで二番手ということだ。

 中間試験では、空本さんに絶対勝つ。今の目標はそれだけしかない。


 ホームルームが終わり、今日も昨日と同じ教室に向かう。

 入って、昨日座っていた場所でしばし待つ。

全員揃い、学年主任が今日やることを説明する。

 今日は、自分たちの分だけしおりを作り、来週の月曜日に全員分を作って、火曜日にクラスで配る。

 俺は思った。

 別に月曜日にしおりの中のページをクラスで配って、全員に作らせればいいんじゃねーのかと。

 しかし、誰もそのことを指摘しない。何故だ?

もしかしたら、学年主任に弱みを握られてるのか?

「お前の内申点がどうなってもいいのか?」

 こんな感じで脅されてるのかもしれない。

 教育の闇がここにあったというのか。


 自分のしおりを作った。

 クラスのみんなに見せたいな。

「もう手に入れちゃったぜ、これ」的な感じで。

 誰も羨ましくないんだろうな。

 自分のしおりを作ったら、今日は解散なので、さっと帰ろう。

 俺は、カバンを持ち、教室を出た。

何か嫌な予感がしたから、走って下駄箱に向かう。


水本(みずもと)君、何帰ろうとしてるの?」


 見つかっちゃった。あとちょっとなのに。

 空本さんが、俺を追いかけてきた。

 逃げようとしたが、待ってしまった。

「はぁはぁ、今日部活だよ」

「明日は週末だし、今日は休みにしましょう」

 木曜日休みで、土曜日も休みなら、金曜日も休みにするべきだろう。

「だめ。部室に行かないと」

「はぁ」

 諦めがつかないが、結局、空本さんと部室に向かうことにした。


「さて、何で帰ろうとしたの?」

 おやおや、尋問が始まっちゃうよ。

「ほんの出来心で、ついやってしまったんです」

 現行犯逮捕された犯人だな。この台詞(セリフ)

「サボろうとしたんだ。ちょっと、信じてたのに」

「だって、この部活死ぬほど暇なんだもん」

「言い訳する気なの?」

 空本さんの目が冷たい。

 あれ、怒ってるの? 意味が分からない。

「すいませんでしたー」

「ちゃんと謝ろうね」

 謝ったじゃん。語尾伸ばすだけで、駄目なの?

「申し訳ございませんでした。空本さん」

「『さん』付け」

 どうしたらいいんだよ? 地獄かよ。

 頭をグシャグシャと掻いた。イライラする。俺、短気。

「さて、もういいかな?」

 空本さんが、区切りをつけた。

「部活始めよ」

「はい……」

 いつ誰が来るかも分からないこの部活。

 どうにかして、辞めることはできないかな?

「課題テストの結果どうだった?」

 嫌みなのか? 嫌みでしかないな。

「私は五位だったよ」

「俺は七位だったけど」

「じゃあ、私たち、クラスのツートップだね」

 もう喋りたくない。辛いだけだよ。心を閉ざす。


 あることを思い出した。しおりの表紙の絵だ。

「あー、空本さ・・・空本、昨日俺も表紙の絵描いてみたんだけど見る?」

「見てみたい♪」

 カバンからその絵を取り出す。

「はい、これ」

 空本さんに渡して、感想を待つ。

「これ、本当に一晩で描いたの?」

「二時までかかったけどね」

「すごい・・・これ、先生に提出しようよ」

 大げさだ。今までで、一番上手く描けたが、絵が良いというわけではない。

「いや、空本の方が良かったから、別にいいよ」

「そんなことない」

 そんなに否定しなくても。

「せっかく描いたから見せたかっただけ」

 空本さんから絵を奪って、カバンにしまう。

「そっちの方が良かったと思うのに」

 褒められると嬉しいな。

「さて、空本、ノート貸してくれない?」

「えっ?」

「授業中に寝てたから、ノート真っ白なんだよ。お願いします。貸していただけませんか?」

「いいよ」

 その日、俺はノートを写す作業で終わった。

 部活の時間が終わり、とっとと帰る。


 家に帰り、授業の復習をしていると、メールが来た。まこっちゃんからだった。

「日曜日、暇なら、うちの家に来ない?」

 土日はどちらも暇なので、すぐに

「了解。何時ごろに行けばいい?」

 と返信した。

「家知らないだろ」

 そうだった。前とは違う家なのか。

「ごめん。何時にどこで待ち合わせ?」

「じゃあ、二時ぐらいに駅前で」

 駅前というのは、高校に行くときに降りる駅だ。

「了解。じゃあ、日曜日に」

返信して、また、教科書とノートに向かっていく。


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