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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
24/112

再会

 前日(今日の夜中)の疲れがどっと来た。

明日から休みだから、今日は頑張ろう。


 朝、少しでも体力を回復をしておきたいので、学校に着くと、すぐに机の上で倒れました。

 次に、意識が戻ったのは、十分後。

 空本(そらもと)さんが、俺を起こして紙を見せる。

 昨日言われた、表紙の絵が、完成したらしい。

「一応、頑張って描いたんだけど、どう?」

「これでいいと思うよ」

 一日で、ここまで上手く描けたなら、先生も怒らないだろう。俺が描いたのも、もういらないな。

 あぁ、見せたいな……。今まで描いた中で、一番いい出来だったから、空本さんが提出してから、見せようかな。

「ラノベも参考にしたの。すごい役に立ったよ」

「そうなんだ。ごめん、ちょっと俺寝る」

「もうすぐ、授業始まるよ」

「号令代わりによろしく」

 限界だったので、完全に意識を消してみる。

 俺は、今日は絶対頑張らない。


 その後、俺が目を覚めたときには、二時限の授業の終わりだった。引くほど怒られた。

 いやいや、悪いことは一つもしてないよ。

 寝る子は育つんだから、俺は今まで成長してた。

 それなのに、昼休み職員室って、罰が重い。


 昼休み。

 渡り廊下走りたいと思ったが、歩きます。

 職員室に入り、一時限の授業の先生のもとに行って怒られ、二時限の授業の先生のもとに行って怒られ、踏んだり踏んだりだな。


 職員室を出ていった。

 教室に戻るため渡り廊下を歩いていると、


(つばさ)だよね?」


 突然、肩をトントンされる。自腹とかじゃない。

 振り返ると、身長一八〇センチ以上のまぁまぁカッコいい男子がそこにいた。

 俺、こいつに見覚えがないはず。

 でも、俺の下の名前知ってるし、同じクラスじゃないし、誰だろう?

「その顔は、覚えてないね。悲しいよ」

「本当にごめん。誰だっけ?」

 謝りながら、失礼な質問する。

「昔、お前と親友でした。これがヒントだ」

 昔。俺の昔に、中学校時代は存在しない。

 つまり、小学校のときの親友である。

 頭の回転が早くなる。

 俺に電撃が走る。突然思い出すものだな。

「まこっちゃんなの?」

「正解だけど、忘れんなよ」


 宮本(みやもと)(まこと)。俺の小学校時代の唯一の親友。

 あだ名は、まこっちゃん。俺が命名。

 何かにつけて、二人で組んでいたので、互いが親友で、その他に友達という友達がいない。

 しかし、悲劇が起こる。

 まこっちゃんの引っ越しである。

 まこっちゃんの父親の転勤だったらしい。

 小学校の卒業式までは、一緒にいれたのだが、その直後に、引っ越ししてしまった。

 もちろん、見送りに行ったのだが、号泣した。

人生の中で、別れの辛さを知ったのがこのときだ。

 それから、俺は中学のときに、友達は何人かは、出来たが親友にはならなかった。

進級して、クラスが変われば、繋がりが無くなる。

 中学二年からは、友達を一人も作らなかった。

 真由が話しかけてきたのも、そのときだった。

 告白して、振られて中学校なんかどうでもよくなった。中学校三年からは、本格的なぼっち活動を活発化していった。


「いつぐらいに帰ってきたの?」

「二月ぐらいだよ」

「全員帰ってきてるの?」

「そうだけど」

「いやぁ、帰ってきてくれてうれしい」

「俺も翼に会えてうれしい」

 ここ三年で一番嬉しいことだな。

「メアド交換しようぜ」

「おぅ」

 そして、メアドを交換した。

「翼はどこのクラスなの?」

「1ーDだよ。まこっちゃんは?」

「1ーFだよ。来年一緒になりたいな」

 来年は、理系と文系に別れるから、まこっちゃんが理系になることを願う。

「部活は?」

 まこっちゃんに、部活について聞かれる。

「うーん。ちょっとこっちに来て」

 あんまり周囲に聞かれたくない話もあるので、特別棟の誰もいないトイレに行った。

「ここなら大丈夫かな」

「聞かれたくない話?」

「そうだな」

 ここには、多分誰も来ないはず。

「それで、部活は?」

「実は、俺、『恋愛相談部』に入ってるんだ」

「何でまたそんな部活に……」

「訳ありなんだけどね」

「その訳は、聞いてもいいのか?」

「あー、別に大丈夫」

 まこっちゃんなら、言いふらす心配はない。

「俺、『結婚不適合者』なんだよね。それで、部活に強制的に入部させられた」

「大変だな」

「部活自体は、忙しくはないんだけどね」

「つまり、『結婚不適合者』しか入れないのか?」

「多分そうらしい」

「俺も入りたいなー。その部活」

「お前は、『結婚不適合者』じゃないだろ」

「いや、俺も『結婚不適合者』だけど?」

「えっ?」

耳を疑うような発言が聞こえた気がするんだけど。

「今何て言った?」

「だから、俺も『結婚不適合者』だって」

「どういうこと?」

「言葉通りの意味だけど」

「・・・」

 絶句。俺たちは、ダブルで「結婚不適合者」なんだ。

「まぁ、バイト行かないといけないから無理なんだよ」

 先生がもう一人誘ったけど断られたとかいっていたのは、まこっちゃんだったのかよ。

「それは、しょうがないな。でも、何でバイトしてるの?」

「今、賃貸で家借りてるんだけど、食費とかの金が少しでも多い方がいいから」

「なるほど」

 世の中不況で色々と大変らしい。

「何で、『結婚不適合者』になったの?」

 理由を聞いてみたかった。

「何でだと思う?」

「こっちが聞いたんだけど?」

「当ててみろ。当たったら何かおごるわ」

「じゃあ、一週間ぐらいくれ」

「いいだろう。翼に当てられるかな?」

 軽い挑発を受けたが、一週間後には分かるから、待つことにする。

「それじゃあ、そろそろ戻ろうか」

「そうだな」


 渡り廊下を歩いていると、空本さんに会った。

「空本さん、どうしたの?」

「昨日描いたやつを先生に持っていこうかなって」

「あー、そうなんだ」

「あのー?」

「うん?」

水本(みずもと)君の後ろに隠れてる人はどなた?」

「隠れてる?」

 後ろを見ると、俺の制服の裾を掴んでしゃがみこんで、ガクガク震えているまこっちゃんの姿があった。

「何してるの?」

 返事が返ってこない。「結婚不適合者」の理由が分かった気がする。

「空本さん、早く職員室に行った方がいいんじゃないの?」

「あっ、そうだね。じゃあまた」

 空本さんが職員室まで早歩きで行く。


「翼・・・理由分かった?」


「何となく・・・女性恐怖症なのか?」


「正解。後で、何かおごる」


 意外なのかどうなのかよく分からないが、この先波乱を起こしてくれそうな気がする。


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