あの日の君
色々ありすぎた土日が終わり、月曜日がきた。
朝は、少し早く起きて、朝ごはんを食べる。
「いってきまーす」
俺は、自転車に乗り、駅まで走る。
電車に乗ったが、やはり混んでいた。
この生活もすぐに慣れるだろう。
電車から降りて、学校までの道で、コンビニに行く。
クリームパンとお茶のペットボトルを買い、カバンに入れる。
一時限目は、八時半から始まる。
携帯を見ると、八時だった。
これから、この時間に来ることに決めた。
学校に着き、教室に入ってみると、半分ぐらい来ていた。
俺は、席に着くと、すぐに寝た。
昨日のボウリングによる疲れが、まだ少し残っていたので、時間が来るまで、意識を飛ばした。
「水本君、おはよう」
上から、あいさつが降ってきた。
起きると、村上君が見下ろしてた。
「うん。おはよう」
「大丈夫?」
「ちょっと、ボウリングの疲れが残ってて」
「僕も、ちょっと腕が痛くて」
「またどっか行こうぜ」
「そうだね。それより、もうすぐで先生来るよ」
「分かった」
そして、村上君は、俺の後ろの席に座った。
猫かぶり三十路手前先生が、教室に入ってきた。一時限目は、学年集会で、すぐに体育館に移動で、学年集会の続きで、身体測定をやるらしい。
体育館に入ると、身長を測るやつや視力検査のやつが体育館の端の方に置かれていた。
全クラスが揃い、学年主任が、あいさつをする。
そして、一年を担当する先生が順に、激励の言葉みたいなことを喋っていった。
学年集会が終わり、身体測定が始まった。
結果を書き込む紙をもらい、村上君と回ることにした。
座高が、一番空いていたので、そこから測った。
座高は正直興味ないので、さっさと終わらせたい。
結果は、九〇・八センチだった。
村上君を待っている間、空いている所を探した。
視力検査は結構混んでいたので、最後に回ろう。
「水本君、次どこに行くの?」
「身長かな?」
「それじゃあ、早く行かないと」
早歩きで行き、身長測定の列に並んだ。
中三のときは、一六五センチだったので、俺の目標は、一七〇センチだ。村上君は、俺より少し小さいので、何センチか気になる。
俺の番に回り、身体測定をする。
「一七三・五センチ」
よっしゃー、四捨五入で一七四センチだ。
さてと、村上君の身長は、何センチだろうか?
「一六四・二センチ」
小数点切り上げで、一六五センチでした。
「身長、十センチも違うんだね」
村上君は、ちょっと落ち込んでいた。
「すぐに伸びるよ」
今度は、体重測定に向かう。
「六一・二キロ」
これが痩せているのかよくわからない。
まぁ、見た感じ太ってないから大丈夫だと思う。
「五二・八キロ」
女子かってツッコミたくなるような重さだった。
村上君が、五十五キロいってなかったって何故か嬉しそうに言っていたので、何故、神は、この子を女子にしないのだと恨んだのであった。
聴力検査は、二人とも特に問題はなかった。
最後は、視力検査だ。
今まで、左目だけAで、右目がCで、ひどいときはDで、片方だけが、良いという状態だった。
なるべく両目とも同じ状態にしたい。
俺の番になり、右目を隠し、左目から受けた。
真ん中あたりが、指されている。
あれれー、おかしいぞ。全然みえなーい。
「分かりません」
「それじゃあ、これ」
「上?」
確信が持てない状態です。
「それじゃあ、これ」
ヤバい、さっきより上のやつ指している。
「左」
これは大丈夫だ。
「それじゃあ、これ」
さっきより下のやつ指しているけど、みえない。
ヤバい、俺が予想してた流れと違う。
俺の予想→左目A 右目A。
現在、左目多分C。
「それじゃあ、次左目隠してください」
「はい」
全然みえない。ぼんやりしてる。
「それじゃあ、これ」
嫌がらせのように、下を指している。
「分かりません」
「それじゃあ、これ」
「・・・」
ぼんやりしてるけど、勘を信じよう。
「上」
「それじゃあ、これ」
上にあがった。勘を信じた俺がばかだった。
「下」
「検査終了です」
先生に、結果の紙を受けとると、
左目C 右目C。
一応、両目とも同じ状態になった。
ちなみに、村上君は両目ともAでした。
全部が終わる頃には、四限目の途中だった。
結果の紙を回収され、教室に戻る。
教室に戻ると、チャイムが鳴り、昼ごはんの時間だ。
カバンからパンとお茶を取りだし、村上君と一緒にごはんを食べる。村上君は、弁当だった。
村上君の手作りなのか聞いてみたかったが、そうだったら、女子として、扱いそうになってしまう。
「次の時間に、委員決めるのかな?」
「時間的に多分そうじゃない?」
「水本君は、何の委員になるの?」
「特に決めてはないけど」
委員は、内申点を稼ぐのに、うってつけだ。
特に、一年生だったら、失敗も許してくれるし、委員になるならこの時期かなと思う。
「クラス委員になろうかな」
「水本君すごいね。僕ならできないよ」
褒められたら嬉しいな。クラス委員頑張ろっと。
「真由~、一緒にごはんを食べよう」
そんなことを言ってくれる私の親友、荒井静が、私の机に弁当を持ってくる。
「うん。食べよう」
静は、中学生のときに知り合って、三年間同じクラスで、高校も同じで、これで、四年連続同じクラスになった。
弁当を開き、一口目を食べる。
「そういえば、真由、彼氏と別れたんだって?」
「うん♪ 別れたよ♪」
「何で、嬉しそうなのよ」
「それは・・・」
「それで、別れた理由は何?」
「他の男の子が好きになったから」
「はっきり言うんだね」
「うん」
「で、その好きな男の子が水本君?」
「ゲホッ。何で分かったの?」
思わず私はむせてしまった。
「そりゃあ、雰囲気で」
「・・・」
私ってそんなに分かりやすかったのかな?
「でも、何で彼の告白を断ったの?」
「えーと、それは・・・幼馴染でいたかったから?」
「私に聞くなよ」
「だってー」
「逃した魚は、大きいね」
「でも、春休みに進展したよ」
「進展って?」
「喧嘩して、仲直りして、買い物いって、ちょっと気まずくなって、仲直りした」
「よくわからん」
「あと、手繋いだ。しかも三回」
「水本君の懐の大きさに感謝だね」
「翼、大好きー」
「でも、ピンチだね」
「何が?」
「真由、高校違うって結構ヤバいよ」
「そんなことないよ。私と翼の関係だよ」
「真由知らないの? 水本君、結構人気よ」
「えー、それはないよ。翼の魅力は、私しか知らないもん」
「水本君が、同じクラスの女子泣かしたって知ってるよね?」
「もちろん。驚いたけど」
「あのあと、水本君って、クラスの中で、孤立していたけど、泣かした女子の部活の人から告白されそうだったのよ」
「どういうこと?」
「つまり、泣いた女子が、部活の中で、偉そうで、調子に乗ってたらしいけど、あのあとから、ちょっとずつ調子に乗らなくなったの。今まで、誰も言えなかったから、言ってくれた水本君に感謝してるらしい」
「そうなんだ。告白されそうになったって、どういう話?」
「一応、未遂で終わったけど、告白しようとした女子がいたらしいの」
「嘘だよ。そんな作り話信じないもん」
私は驚いていた。まさかそんなことが起きていたなんて。
「信じたくない気持ちは、分からなくもないけど」
「うぅ」
「でも、もし高校でそんなことが起きたら、真由には止められないし、水本君は、付き合っちゃうかもね」
「嫌だ」
「嫌だって言われてもね」
「でも、翼のこと一番知ってるのは私だもん」
「付き合いの長さじゃないんだよ」
「静は、私の味方じゃないの!」
「恋愛事は、しょうがないよ」
「むぅ」
「まぁ、頑張ってね」
「・・・頑張る」
私は、翼が人気になってたのを知らなかった。
翼が他の女の子に取られるのは、絶対嫌だ。
何がなんでも、翼の彼女にならないと。
「それじゃあ、委員決めよっか」
昼休みが終わり、五時限目が始まった。
俺は、委員長になるつもりだった。
村上君にも宣言してしまったので、やらないといけない。
「それじゃあ、委員長になりたい人、手挙げて」
誰も手が挙がらない。チャンスだ。
俺は、勢いよく手を挙げて、
「先生、俺やります」
そういった。
「えーと、水本君だね。じゃあ、お願いします」
先生に教卓の前に出てくるよう促される。
俺は、教卓の前に立った。
「それじゃあ、副委員長になりたい人。できれば女子で」
誰も手が挙がらない。悲しいな。
かっこいい奴なら、手が挙がるんだろうな。
すると、
「あ、あの」
後ろの方で、手が挙がっていた。
「私、副委員長やります」
透き通った声で、言われていた。
「えーと、空本風花さんだよね。じゃあ、前に出てきて」
先生がそういうと、彼女が前に出てきた。
彼女は、僕が入学説明会出会った美しい女の子。
黒い髪をなびかせ、歩いてくるその女の子。
空本風花。今はっきりと、思い出したその名前。
あの日のことを思い出す。
「同じクラスになれたらいいですね」
彼女は、俺のことを覚えているのだろうか?
彼女が、教卓に来た。みんな見とれていた。
何故、今まで、気付かなかったのだろうか?
彼女は、俺に向かって一言。
「これから、頑張ろうね・・・翼君」




