女子と買い物≒デート (後編)
昼ごはんを食べた俺たちは、ショッピングモールに向かった。
行く途中、真由は、服が欲しいといったので、洋服の店に行くことになったが、別に隠す必要は、無かったのではないかと思ったが、女子の考えることだ。何か理由があったんだろう。
休日とはいえ、ショッピングモールの中は、かなり混んでいた。
俺たちは、また手を繋いで行くことにした。
一度、免疫がついたので、さっきよりかは、恥ずかしさはなかった。真由は、少し赤かったけど。
テレビとかで、女の子との服の買い物は面倒くさいと言われているので、少し気分は乗らなかった。
「どっちがいい?」という質問が、特に怖い。
あれの正解って、何なのだろうか?
こういうのを論文とかで、発表すれば、多分、その人は将来、偉人になると思う。
洋服屋に到着した。踏み入れなければならない。
入ってみると、オシャレな雰囲気で、客のほとんどが女性で、男性からしたら、居づらいに越したことはない。
俺は、真由に付いていくしかできない。
真由は、楽しそうに服を選んでいた。
服を手に取っては戻し、手に取っては戻しの繰り返しだった。
暇だなぁ。これは暇だなぁ。
世の中の結婚もしくは、彼女がいる人を尊敬できるレベルになっている。
みんなこれを経験していると考えると、すごいと思う。
「ねぇ、翼は、女子の服は、どんなのがいいの?」
「えーと・・・」
ミニスカートに黒のニーハイなら、全部エロいと思っている俺には、難しすぎる質問である。
「俺は・・・優しい感じの色が好きだな」
結局、色で答えてしまった。
この答えは、捉え方によっては、水色なら何でもありといっているのと同義だ。
「じゃあ、こういう白のスカートとかがいいの?」
真由が取り出したのは、膝丈ぐらいの白のスカートで、裾の部分が少し透けているものだった。
「そういうのが俺は、好きだな」
「ふぅーん」
真由は、企んだような顔をした。
もしかして、俺、なんか悪いことしたかな?
「それじゃあ、これ試着してくるね♪」
「分かった」
「あと、試着室の前で待っててね」
真由はそう言い、試着室に向かった。
俺も後を付いていく形で、試着室に向かった。
俺は、試着室の前で待っていた。
しかし、待っていても、真由は出てこなかった。
すると、真由が顔だけ出して、
「何でもいいから、上の服持ってきて。来てきたのワンピースだったから、今、スカートにカーディガンしかないの」
つまり、真由の緊急事態である。
とりあえず、赤色のシャツを選んだ。
中を見ないように、後ろ向きで渡した。
真由から、ありがとうと言われ、安心する。
でも、あのとき、真由はスカートに上は、下着だったのかとか思うと・・・。
想像する俺は、どうしようもない変態だな。
「翼、出るよ」
そう言って、試着室から出てきた真由は、
「どう? 似合う?」
「結構似合ってると思うよ」
めちゃくちゃ可愛かった。
「ありがとう♪ それじゃあ、これにしよっかな」
「それでいいの? シャツとか他にあ」
「これがいい。その・・・翼が・・・選んでくれたから・・・」
そう言って、試着室に戻っていった。
真由が、シャツとスカートをもって、試着室から出てきてので、俺は、
「お金は、俺が出すから」
「えっ、大丈夫だよ。私が出すから」
「俺が出す」
「私が出す」
「俺が」
「私が」
どっちも引かないこの戦い。
すると、真由が、
「それじゃあ、割り勘にしない?」
「・・・そうだな」
妥協案として、割り勘になった。
「じゃあ、レジに行こうか」
そして、俺たちは、レジに向かった。
財布を先に取り出しておく。
レジに行って、お会計をする。
「二点で、一万二千円になります」
俺は、サッと一万円札を二枚出した。
「えーと、六千円ずつだね」
真由は、その時に財布を出していた。
「二万円からお預かりします」
「えっ」
「八千円のお返しとレシートと、こちら商品です。ありがとうございました」
「ちょっと、翼?」
俺は、紙袋を受け取り、店を出た。
店を出て、真由が、
「・・・ありがとう」
完全に出し抜かれたので、少し怒っていた。
「もっと喜びなさい。そして、感謝しろ」
冗談混じりに俺は、そう言ってやった。
「あっ、そうだ、六千円」
「いらない、いらない」
「でも・・・」
「こういうときは、男がおごった方がいいの」
「今度は、私が先に出してやる」
「張り合うな」
「でも、翼からのプレゼントって思えばいいかな」
「そう、そう」
「ありがとう、翼。また、お礼はするから」
「期待しておく」
目的の買い物が終わったので、ショッピングモールを出ようとしたが、
「翼は、何か欲しいものないの?」
「これといって、特にないかな」
「じゃあ、もう帰るの?」
そんな上目遣いで、見ないでください。
「本屋に、寄りたいかな」
「本屋? んじゃ、行こっか。レッツゴー」
俺たちは、本屋を探すことになった。
ショッピングモールなんて、滅多に来ないから、場所が分からない。それプラス、混んでいるので、思うように進めない。
探すこと二十分。
やっと本屋が、見つかり、中に入る。
俺は、小説のコーナーに向かう。
何か新しいものでも、買おうかな。
三巻まで出ているやつの一巻を読む。
面白そうだったから、買うことにした。
三冊まとめて取り、漫画のコーナーに向かった。
新刊は、出ていなかったので、そこをあとにして、 大体見回ったので、真由を探すことにした。
真由は、ファッション誌のコーナーにいた。
「真由は、買うものあった?」
「うーん、特になかった」
「それじゃあ、会計してくるから待ってて」
俺は、レジに向かった。
振り返ったが、真由は来ていなかった。
さっきの仕返しにくるかもしれなかったから、警戒していたが、問題はないようだ。
「三点で、千八百七十八円です。ブックカバーは、お付けになりますか?」
「いや、大丈夫です」
ブックカバーは、付けない派だ。
「二千円お預かりします。百二十二円のお返しとレシートです。ありがとうございました」
会計が終わり、真由の元に急ぐ。
「ただいま」
「うん。それじゃあ、帰ろっか」
「そうだな」
すると、真由が手を差しのべた。
「さっき、手繋いでくれなかった・・・」
「あぁ、ごめん、ごめん」
俺たちは、三度、手を繋ぐことになった。
買い物のはずだったのに。
これじゃあ、ただのデートじゃん。
俺は、本当に「結婚不適合者」なのか?
無事に家まで帰ってきた。
やっと、真由の手を放すことができる。
別に、嫌だったというわけじゃないんだからね。
「それじゃあ、また」
家の門に入ろうとしたとき、
「部屋に入ってもいい?」
真由から、突然の誘惑がきた。
「別にいいけど、何か話したいことがあるの?」
彼女は、少しだけ頷く。
「じゃあ、上がっていいよ」
「ありがとう」
そして、玄関に上がり、俺の部屋に連れていく。
中学生のときに、部屋をもらったので、真由が俺の部屋に入るのは、多分はじめて。
「お邪魔しまーす」
真由と俺は、部屋に入った。
「結構、綺麗にしてるんだね」
「うん」
「ベッドに座ればいいの?」
俺の部屋は勉強机はあるが、テーブルがない。
なので、真由にはベッドに座ってもらった。
「お茶、持ってくるね」
「うん。お願い」
俺は、部屋を出て、お茶を取りにいった。
ここが翼の部屋かー。
思ってよりきれいな部屋で驚いちゃった。
今、翼は、お茶を取りに行って、部屋にいない。
私は、翼の寝ているベッドの上。
ベッドの下を一応見ておく。
特にヤラしいものはなかった。
布団をめくってみた。特になにもなし。
布団を一瞬だけ被ってみた。一瞬だけ。
すぐに布団から出て、落ち着く。
今日は、翼に彼氏と別れたことを伝えたい。
翼が部屋に戻ってきた。
翼が、勉強机の椅子に座った。
「それで、話したいことって何?」
「あの、えーと、その・・・」
「言いたくないようなこと?」
「ううん。ちゃんと言う」
一呼吸して、少し時間をおく。
「あのね、私・・・彼氏と別れたの」
言えた。はぁ、良かった。
私の報告に、翼は、
「そう・・・なんだ」
と、それだけしか言わなかった。
お茶を取りにリビングにいった。
真由から何を言われるのか、すごく気になった。
前も何か話があるとか言われて、家に上げたら、ひどいことになった。
あまり、深く考えないようにした。
お茶を取って、部屋に戻った。
真由にお茶を渡し、椅子に座った。
「それで、話したいことって何?」
俺は、真由に聞いた。
「あの、えーと、その・・・」
言いたくなさそうな顔だった。
「言いたくないようなこと?」
俺は、一応聞いてみた。
「ううん。ちゃんと言う」
何か大事なことなんだろう。俺は待った。
「あのね、私・・・彼氏と別れたの」
それを聞いたとき、少なからず嬉しい気持ちが込み上げた。それと、同時にモヤモヤ感というのも出た。複雑な気持ちになってしまった。
「そう・・・なんだ」
それしか、言えなかった。
「だから、私は今フリーなの」
それを言って、俺に何をして欲しいのか分からない。
「付き合ってた期間は何ヵ月ぐらい?」
「えーと、半年ぐらいかな」
つまり、真由は、半年で、付き合ってた男を捨てるってことなんじゃないだろうか。
「何で、別れたの?」
「えーと、その人より好きな人ができたから」
つまり、真由は、半年で、付き合ってた男より好きな人を作ってしまうのか。女子の気持ちは移ろいやすいとはこういうことか。
「話したいことって、それ?」
「うん」
「だから、女って信用できないんだよな」
「えっ」
俺は、何も言わない。これ以上言うと、真由を傷つけると思う。だから、言わない。
でも、俺は「結婚不適合者」になった理由が少し分かったかもしれない。
普通の人だったら、スルーできるところで俺は、立ち止まる。気にする。考えてしまう。
その結果、人を疑い、信用しなくなる。
何か裏があるのかもしれないとかそんなことばかり考えて、相手の気持ちを理解しようとしない。
どこまでも、自己中心的で、嫌になる。
「ごめん」
真由が謝ってきた。
「俺の方こそ、ごめん・・・」
俺も謝る。
少しの沈黙のあと。
「それじゃあ、私・・・帰るね」
「分かった」
「今日は、ありがとね」
真由は、俺の部屋を出る。
俺は、玄関まで見送る。
遊びに行ったことは、楽しかったのに、後味だけが悪い。
やっぱり、俺は「結婚不適合者」だ。
俺は、深くため息をつき、部屋に戻った。




