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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
13/112

女子と買い物≒デート (前編)

 今日は、土曜日だ。

 真由(まゆ)とのデー・・・買い物である。

 昨日の夜に、待ち合わせ場所は、家の前で十時とメールが来ていた。

 そして、親から結構お金を貰いました。

 一応、寝坊しないように、十一時には寝ていた。

 現在、朝の五時半です。

 遠足行く前の幼稚園児並みの起床時間となってしまった。真由と二人きりでの買い物は、初めてだ。

 多分、すごい緊張している。


 俺は、トイレに行こうと部屋を出ていくと、妹の(そら)に、遭遇してしまった。

「お兄ちゃん、今日早いね。土曜日なのに」

 俺の土曜日の起床時間は、十一時を平気でまわる男子高校生である。

 ちなみに、空は部活で、土曜日は、大体この時間に起きているらしい(親談)。

「今日は、友達と遊びに行くからな。ちょっと早く起きちゃった♪」

 可愛く元気に言ってやった。

「早すぎるでしょ」

 冷静なツッコミ、ありがとうございます。

「まぁ、お兄ちゃんのような、人間関係が、狭すぎる、浅すぎる人にとっては、休日に遊びに行くことは、いいことだと思うよ」

 俺は、今自然にdisられた。

「ハハハッ」

 渇ききった笑い声しかできなかった。

「それじゃあ、お兄ちゃん、頑張ってね♪」

「空も部活頑張れよ」

「はーい」

 やっぱり妹は元気一杯に限る。

 当初の目的のトイレに向かう。


 俺は、悩んでいる。

「服って、どういうのを着ていったらいいのだろうか?」

 一応、女の子と買い物である。

 外見は、なるべく良くしておきたい。

 身だしなみからきちんとするのが、モテるための大事なことだと、ネットで見た。

 そもそも、俺は、ファッションに(うと)い。

 流行りの色とか服とかよく分かってない。

 高校生男子には、普通のことだと思うが、それでも、何とか、真由に誉めてもらいたい。

 ネットで調べてみる。

 そこで、書いてあったのは、中が白いシャツで、暗い色のジャケットを着るといいという。

 俺は、白いシャツを出し、黒いジャケットを着てみた。我ながらそこそこ、似合わない。

 だが、一番マシだったので、これにしようと決めた。

 これからは、ファッション誌を少しは、読んでみようと思った。


 朝八時半。

 朝ごはんを食べていると、

(つばさ)、今日は真由ちゃんと、デートでしょ」

「デートじゃなくて、買い物だよ」

「ちゃんと進展しなさいよ。応援してるから」

 春休みに、俺たちの関係は、後退している。

 そんなことを知らない母は、余計なことを言う。

「昔から、真由ちゃんは、翼一筋なんだから」

 胸にグサッと刺さる。俺は、真由に振られた。

「多分、彼氏なんかいたことないんじゃないの?」

 嫌がらせみたいに、逆のことを言う母。

「大切にしてあげなさいよ」

「それは、分かってる」

 真由のことは、大切である。今は、「友人」という関係からやり直しているが、大切であるということは、昔から変わってない。

「ごちそうさま」

「頑張ってきなさい」

 俺は、部屋に戻り、支度(したく)をする。



 午前九時。

 私は、服選びに悩んでいた。

 私は、朝の五時に起きてしまった。

 翼との週末デートが、楽しみだったのかもしれない。

 翼がどういう服が好みなのか知らない。

 ワンピースを着るのか、それとも、ショートパンツに、黒のニーハイでも履こうかどうしようか悩んでいた。

 悩んだ末、私はワンピースにした。

 理由は、露骨な女アピールしたくなかったから。

 白のワンピースに、カーディガンを着てみた。

 女子というよりも女性として、扱われたい。

 そんな思いを胸に秘めて、今日を過ごしたい。

 そして、時計を確認した。九時四十分。

 窓の隙間から家の前を見ると、翼がいた。

 すでに、待っていたことが、嬉しかった。

 私も早く会いたい。会いたいよー、翼。

 私は、バッグに財布と携帯、化粧道具を入れて、部屋を出た。

「いってきます」

 そう言うと、お母さんから、

「頑張って、翼君を射止めなさいよ」

と、激励の言葉を受けて、玄関を出た。



 午前九時半。

 約束の時間の三十分前。

 真由の家の前に、俺はいる。

 家に出る前に、財布と携帯をポケットに入れて、何度も確認した。

 俺は、真由が出てくるまで、少し待つ。

 十分後。

 真由が家から出てきた。

 白のワンピースに、薄手のカーディガンだった。

 普段の真由とは、違う清楚な雰囲気で、可愛かった。

 俺の前に、出てきて、

「この服、どうかな? 似合ってる?」

 真由からの質問に、

「え、えーと、に、似合ってるよ。あと、か、可愛い」

 思わず可愛いと言ってしまった。

「ほ・・・本当に、可愛い?」

 俺は、静かに頷いた。

「エヘヘ、嬉しいな。フフッ」

 彼女は、顔を真っ赤にして満面の笑みだった。

 俺は、恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤だった。

「それじゃあ、行こうか」

「うん♪」

 こうして、真由と二人きりのデー・・・買い物が始まる。


 二人で、駅前まで歩いてきた。

 真由の欲しいものを聞いても、

「え・・・えーと、あとで教えるから」

 そう言って、はぐらかされる。

 二人で切符を買い、電車でショッピングモールがある駅まで、乗っていくことになった。

 そして、その駅に着いたのが、十時半ぐらいだった。

 ショッピングモールは、駅を出ればすぐ目の前にある。このまま、真由の欲しいものを買って帰ってしまえば、昼過ぎぐらいに終わってしまう。

 それが、嫌だったのか、俺は、

「今から、映画とか見ない?」

 と、言ってみた。

「映画?」

「映画って二時間ぐらいやし、今からやったら、終わるのが昼過ぎになるし、そこからご飯食べて、それから、真由の欲しいもの買いにいかへん?」

 理屈を並べてみた。

「うん。そうする」

 幸い、映画館が近くにあったので、そこに行く。

 しかし、映画館に行き、公開されていたのは、ほとんどが恋愛ものだった。

「買い物だもんね♪」

 真由が俺をからかった。

「ソウデスネ」

 棒読みで返して、俺たちは、恋愛ものの映画を観ることになった。二枚チケットを買い、劇場に入った。

 土曜日ということもあり、更に恋愛映画でもあったので、カップルで来ている人たちでたくさんだった。

 一人で来る勇気は、俺には絶対ない。

 二人で並んで座席に座り、映画が始まるまで、待っていた。携帯をマナーモードにして、隣を見た。

 真由は嬉しそうだった。それなら、俺も嬉しい。

 そして、暗くなり、映画が始まった。


 映画の内容は、女子高生が主人公で、転校してきた男子が、昔の幼馴染で、なんやかんやあって、恋人になって、結婚するという、ベタな話だった。

 何故、映画の内容があやふやかというと、真由が原因だ。真由は俺の右隣の席だったのだが、俺の左隣の席の男が、俺の左手を置くところを占領していて、仕方なく右手を置くところを使っていたら、突然、真由が、俺の手を握ってきた。

 振り払おうかと、一瞬思ったが、手を握られているということが、嬉しくて、映画が終わるまで、ずっとその状態になってしまった。

 右手が意識が集中しすぎて、映画の途中は、ほとんど覚えてない。最後のところだけは、何とか集中して見た。


「映画、良かったね」

「感動的でした」

「ちゃんと、観てたー?」

「観てた、観てた」

 本当は、観てない、観てない。

 真由が、ジャケットの裾を摘まんで、

「ねぇ、昼ごはんは、どうする?」

「ファミレスでいいんじゃない?」

「・・・分かった」

「ごめん、行きたいとこあった?」

「別に・・・」

もしかしたら、何か期待していたのかもしれない。

だとしたら、申し訳ないことしたなと思う。


 映画館を出ると、混雑していた。

「真由、はぐれないように、手繋いでいいか?」

「う・・・うん♪」

 さっきまで、不満そうだった顔が、突然変わって笑顔になる。女の子って分かりづらい。

 そして、真由と手を繋ぐ。

 俺も真由も、尋常なくらい顔を真っ赤にした。

 あくまでも、俺たちは「友達」だ。

 そう思い続けて、落ち着きを取り戻す。

 ファミレスが見つからず、パスタ専門店があったので、ここでいいかと聞くと、いいよと返事が来たので、ここに入ることにした。

 昼の一時頃だったが、行列ができていた。

 俺たちは、待っている間も、手を繋いでいた。

 女子と手を繋ぐことが、これほどの幸せとは。

 ある意味、大人の階段を登った気がしている。

 三十分ぐらい待って、店のなかに入り、俺はカルボナーラ、真由はペペロンチーノを食べた。


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