女子と買い物≒デート (前編)
今日は、土曜日だ。
真由とのデー・・・買い物である。
昨日の夜に、待ち合わせ場所は、家の前で十時とメールが来ていた。
そして、親から結構お金を貰いました。
一応、寝坊しないように、十一時には寝ていた。
現在、朝の五時半です。
遠足行く前の幼稚園児並みの起床時間となってしまった。真由と二人きりでの買い物は、初めてだ。
多分、すごい緊張している。
俺は、トイレに行こうと部屋を出ていくと、妹の空に、遭遇してしまった。
「お兄ちゃん、今日早いね。土曜日なのに」
俺の土曜日の起床時間は、十一時を平気でまわる男子高校生である。
ちなみに、空は部活で、土曜日は、大体この時間に起きているらしい(親談)。
「今日は、友達と遊びに行くからな。ちょっと早く起きちゃった♪」
可愛く元気に言ってやった。
「早すぎるでしょ」
冷静なツッコミ、ありがとうございます。
「まぁ、お兄ちゃんのような、人間関係が、狭すぎる、浅すぎる人にとっては、休日に遊びに行くことは、いいことだと思うよ」
俺は、今自然にdisられた。
「ハハハッ」
渇ききった笑い声しかできなかった。
「それじゃあ、お兄ちゃん、頑張ってね♪」
「空も部活頑張れよ」
「はーい」
やっぱり妹は元気一杯に限る。
当初の目的のトイレに向かう。
俺は、悩んでいる。
「服って、どういうのを着ていったらいいのだろうか?」
一応、女の子と買い物である。
外見は、なるべく良くしておきたい。
身だしなみからきちんとするのが、モテるための大事なことだと、ネットで見た。
そもそも、俺は、ファッションに疎い。
流行りの色とか服とかよく分かってない。
高校生男子には、普通のことだと思うが、それでも、何とか、真由に誉めてもらいたい。
ネットで調べてみる。
そこで、書いてあったのは、中が白いシャツで、暗い色のジャケットを着るといいという。
俺は、白いシャツを出し、黒いジャケットを着てみた。我ながらそこそこ、似合わない。
だが、一番マシだったので、これにしようと決めた。
これからは、ファッション誌を少しは、読んでみようと思った。
朝八時半。
朝ごはんを食べていると、
「翼、今日は真由ちゃんと、デートでしょ」
「デートじゃなくて、買い物だよ」
「ちゃんと進展しなさいよ。応援してるから」
春休みに、俺たちの関係は、後退している。
そんなことを知らない母は、余計なことを言う。
「昔から、真由ちゃんは、翼一筋なんだから」
胸にグサッと刺さる。俺は、真由に振られた。
「多分、彼氏なんかいたことないんじゃないの?」
嫌がらせみたいに、逆のことを言う母。
「大切にしてあげなさいよ」
「それは、分かってる」
真由のことは、大切である。今は、「友人」という関係からやり直しているが、大切であるということは、昔から変わってない。
「ごちそうさま」
「頑張ってきなさい」
俺は、部屋に戻り、支度をする。
午前九時。
私は、服選びに悩んでいた。
私は、朝の五時に起きてしまった。
翼との週末デートが、楽しみだったのかもしれない。
翼がどういう服が好みなのか知らない。
ワンピースを着るのか、それとも、ショートパンツに、黒のニーハイでも履こうかどうしようか悩んでいた。
悩んだ末、私はワンピースにした。
理由は、露骨な女アピールしたくなかったから。
白のワンピースに、カーディガンを着てみた。
女子というよりも女性として、扱われたい。
そんな思いを胸に秘めて、今日を過ごしたい。
そして、時計を確認した。九時四十分。
窓の隙間から家の前を見ると、翼がいた。
すでに、待っていたことが、嬉しかった。
私も早く会いたい。会いたいよー、翼。
私は、バッグに財布と携帯、化粧道具を入れて、部屋を出た。
「いってきます」
そう言うと、お母さんから、
「頑張って、翼君を射止めなさいよ」
と、激励の言葉を受けて、玄関を出た。
午前九時半。
約束の時間の三十分前。
真由の家の前に、俺はいる。
家に出る前に、財布と携帯をポケットに入れて、何度も確認した。
俺は、真由が出てくるまで、少し待つ。
十分後。
真由が家から出てきた。
白のワンピースに、薄手のカーディガンだった。
普段の真由とは、違う清楚な雰囲気で、可愛かった。
俺の前に、出てきて、
「この服、どうかな? 似合ってる?」
真由からの質問に、
「え、えーと、に、似合ってるよ。あと、か、可愛い」
思わず可愛いと言ってしまった。
「ほ・・・本当に、可愛い?」
俺は、静かに頷いた。
「エヘヘ、嬉しいな。フフッ」
彼女は、顔を真っ赤にして満面の笑みだった。
俺は、恥ずかしさのあまり、顔が真っ赤だった。
「それじゃあ、行こうか」
「うん♪」
こうして、真由と二人きりのデー・・・買い物が始まる。
二人で、駅前まで歩いてきた。
真由の欲しいものを聞いても、
「え・・・えーと、あとで教えるから」
そう言って、はぐらかされる。
二人で切符を買い、電車でショッピングモールがある駅まで、乗っていくことになった。
そして、その駅に着いたのが、十時半ぐらいだった。
ショッピングモールは、駅を出ればすぐ目の前にある。このまま、真由の欲しいものを買って帰ってしまえば、昼過ぎぐらいに終わってしまう。
それが、嫌だったのか、俺は、
「今から、映画とか見ない?」
と、言ってみた。
「映画?」
「映画って二時間ぐらいやし、今からやったら、終わるのが昼過ぎになるし、そこからご飯食べて、それから、真由の欲しいもの買いにいかへん?」
理屈を並べてみた。
「うん。そうする」
幸い、映画館が近くにあったので、そこに行く。
しかし、映画館に行き、公開されていたのは、ほとんどが恋愛ものだった。
「買い物だもんね♪」
真由が俺をからかった。
「ソウデスネ」
棒読みで返して、俺たちは、恋愛ものの映画を観ることになった。二枚チケットを買い、劇場に入った。
土曜日ということもあり、更に恋愛映画でもあったので、カップルで来ている人たちでたくさんだった。
一人で来る勇気は、俺には絶対ない。
二人で並んで座席に座り、映画が始まるまで、待っていた。携帯をマナーモードにして、隣を見た。
真由は嬉しそうだった。それなら、俺も嬉しい。
そして、暗くなり、映画が始まった。
映画の内容は、女子高生が主人公で、転校してきた男子が、昔の幼馴染で、なんやかんやあって、恋人になって、結婚するという、ベタな話だった。
何故、映画の内容があやふやかというと、真由が原因だ。真由は俺の右隣の席だったのだが、俺の左隣の席の男が、俺の左手を置くところを占領していて、仕方なく右手を置くところを使っていたら、突然、真由が、俺の手を握ってきた。
振り払おうかと、一瞬思ったが、手を握られているということが、嬉しくて、映画が終わるまで、ずっとその状態になってしまった。
右手が意識が集中しすぎて、映画の途中は、ほとんど覚えてない。最後のところだけは、何とか集中して見た。
「映画、良かったね」
「感動的でした」
「ちゃんと、観てたー?」
「観てた、観てた」
本当は、観てない、観てない。
真由が、ジャケットの裾を摘まんで、
「ねぇ、昼ごはんは、どうする?」
「ファミレスでいいんじゃない?」
「・・・分かった」
「ごめん、行きたいとこあった?」
「別に・・・」
もしかしたら、何か期待していたのかもしれない。
だとしたら、申し訳ないことしたなと思う。
映画館を出ると、混雑していた。
「真由、はぐれないように、手繋いでいいか?」
「う・・・うん♪」
さっきまで、不満そうだった顔が、突然変わって笑顔になる。女の子って分かりづらい。
そして、真由と手を繋ぐ。
俺も真由も、尋常なくらい顔を真っ赤にした。
あくまでも、俺たちは「友達」だ。
そう思い続けて、落ち着きを取り戻す。
ファミレスが見つからず、パスタ専門店があったので、ここでいいかと聞くと、いいよと返事が来たので、ここに入ることにした。
昼の一時頃だったが、行列ができていた。
俺たちは、待っている間も、手を繋いでいた。
女子と手を繋ぐことが、これほどの幸せとは。
ある意味、大人の階段を登った気がしている。
三十分ぐらい待って、店のなかに入り、俺はカルボナーラ、真由はペペロンチーノを食べた。




