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俺も彼女も結婚不適合者  作者: 高壁護
第1章 1年1学期(4月~5月)
112/112

5月の終わり

「というわけで、しばらく安静にすること」

「はい」

 病院の帰りにうどんを買ってもらい、昼ご飯ははそれですませた。そして、処方された薬を飲み、ベッドに寝転んだ。

「とりあえず、私は夜ごはんは作ってから帰ろうかなって思ってるけど、何か要るものない?」

「うーん、思いつかない」

「まぁ、必要そうなもの買ってくるから、寝てて」

「ありがとう」

 そういって買い物に出かけた空本さんをベッドから見送る。ほんと空本さんには頭が上がらない。


 すると階段を上ってくる音が聞こえてきた。何か忘れ物をしたのかな

 部屋のドアが開くと、無表情の妹が待ち構えていた。あー、これは殺されますね。死を覚悟しなければいけないこの状況。

「お兄ちゃん、これからは私の言うこと聞いておいた方が身のためだよ…」

 妹に脅されている兄。うん、これは何かのエロゲで有りそうな展開だね。

「これからは空さんの言うことは何でも聞きますので、見捨てないでください」

「よろしい」

 ほんの少しでだけ表情が和らいだ空さん。

「そういえば、さっき空本さん?が家から出ていったけど、どうしたの?」

「今日の晩ごはん、買ってきてくれるらしい」

「私もお手伝いしなきゃ...あ、お兄ちゃんは晩ごはんまではゆっくり寝ててね、ここ最近徹夜で勉強してたみたいだし」

「はい」

「それじゃ、何かあったら呼んで」


 そして、部屋には自分ひとりになった。一人でいることが普通のはずなのに、孤独感がいつにも増している。呼べば空は来るだろうが、用もないのに呼ぶのはただの迷惑になってしまう。



「あ、そういえば...」


 ふと思い出したことがあり、ベッドから下りてリビングに向かうことにした。

「空~」

「お兄ちゃん、何してんの!! ちゃんと寝てないとダメでしょ」

「あー、ちょっとお願いしておきたいことがあって、昨日疲れてて洗濯するのわすれてたから、時間があったら洗濯しといて」

「分かったから早く寝る」

「はいはい」

 また、自分の部屋に戻る。


「ただいま~」

 玄関から買い物袋を持った空本さんが帰ってきた。

「おかえり・・・寝てないとダメって聞いてなかったの?」

「いやぁ、空にちょっと頼み事してただけだから」

「それじゃあ、用が終わったらとっとと寝る」

 まるで母親といっても差し支えない。安心して妹を任せられるな、今日はゆっくり休もう。


「・・・・・・試験の答え合わせがしてえ」

 身体が重くても学生である自分にとって勉学は常にやっておかないといけない。何が出来なかったのか振り返りたい。どうせ明日休まされるし、明日やってもいいかな。だが、ここまで死にかけで試験に挑んだのだから自分の結果だけでも早く知りたい。

 考えながらも無意識でベッドからのそのそと動きながら、カバンから試験問題を引っ張り出した。


「これが試験問題か...教科書、教科書」


「上で変な物音が聞こえたから来てみたら・・・何してんの?」

「ち、ちがう、これには深い訳が・・・」

「ふぅーん、私の目の前で倒れたくせに鞄から試験問題を出して教科書を探そうとしてた人にどういう訳があるのかぜひ聞かせて貰える?」

「今すぐ試験問題を振り返らないと、俺の頭脳は後退してしまう可能性がある。だから振り返りたい」

「大丈夫よ、努力すればすぐに元に戻せそうな頭脳なんだから」

「元に戻せるかどうかはわか・・・」

「私がこんなにも心配してるのに・・・翼君は分かってくれないの」

 目を涙を溜めて(?)俺に訴えかけてくる。本当に女の涙は卑怯だと思う。こんなことされたら俺が謝罪しないと収まらないじゃん。

「風花さん、野菜の皮むき終わりました・・・って、お兄ちゃん!! なんで風花さんを泣かしてるの。早く謝りなさい」

 本当に最悪のタイミングで来やがったなこの妹は。


「すいません。こういうことは二度としません」

「よろしいです。空ちゃん、皮むき終わったの、それじゃあ炒めていこっか」


「それと次に来た時にちゃんと寝てなかったら、もう二度と看病してあげないから」

「了解です」

 そのままベッドに戻っていった。



「あっ、起きた」

「うぅ、いま、何時~」

「すごくぐっすり寝てたから起こすのやめたんだよ、それで今は夜の10時です」

「もうそんな時間、空本さんも早く帰った方が」

「うん。とりあえず翼君が晩ごはん食べてお薬飲んだら帰るから、ちなみに晩ごはんはお粥だからね」

「それじゃあ、いただきます」

「持ってくるからちょっと待っててね」

 俺が寝たのっていつだっけ? 確か夕方ぐらいだったから結構居たんじゃないのか。

「はーい、おまたせ」

「ありがとうございます」

「急に敬語過ぎだよ」

「こんな遅くまで看病してもらって申し訳ない」

「まっ、暇だったし」

「いただきます」

「フーフーしてあげよっか」

「いやいや大丈夫だよ、自分で食えるから」

 流石に恥ずかしさが勝った。同級生の女子にそれは厳しい。

「では、いただきます・・・・・・アッツ!!」

 お粥ってマジで熱すぎる。口全体が火傷しかねない。これ病人に食わせるべき料理としては推奨したらだめだろ。

「やっぱり、フーフーして欲しいんじゃないの?」

 ニヤニヤしながら言ってくる空本さんが憎い・・・けど、すごい可愛い。


 その後、フーフーしてもらいながら食べました。



「じゃ、帰るね」

「今日はありがと」

「うん、しっかり治してまた学校でね」


 色々あった五月は風邪をひいて終わりを告げてしまった。


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