はじめ・例 REI
夕刻が近づいてくる。
夏も近い。ついこの間、台風が日本列島を直撃して、関東並びに東北でその勢力は、猛威を振るった。梅雨は後退し、新緑はますます芽吹き、雑草という雑草は力溢れて成長はとまらない。
建物や家屋がまばらに、田や畑は広がる、土壌の道は長く人生のように遠くまで、風にさらされ埃が舞い、空にはお日様、雲が避けて、鳥が明るい声で寝ぐらへと帰っていく。
そんな田舎の風景が夕景色に染まり始めた際、2人の女子高校生の笑い声がした。
派手ではないが、大人しくもない。制服だが、基準ではない。スカートの丈は指定より短い。
髪は少々、茶に染めて、悪びれた様子も一切なく、お喋りに夢中である。
「そういえばさー、テレビで知ったんだけど」
「なに?」
「心霊スポット! とかってあるじゃん。タレントがさぁ、検証! とかって、古ーい廃墟とか入ってくるやつ」
「あー見た事ある。先週に嵐がやってなかった?」
「やってたやってた! それそれ。それでさぁ、その話で盛り上がって友達に話してたらさ、なんと地元にも、心霊でチョー有名な場所があるって聞いてさ!」
「え!? 嘘マジで!? どこどこ!?」
「それがさー……」
話に華が咲き、その地元の心霊スポットへ行こうという事になった。
場所はすぐに辿り着いた。周囲に人気のない、山に囲まれた一角。高台になって階段が長く続き、入口に鳥居が見えるが先が見えない。古い神社だった。
管理はされなくなったのか、かなり傷んでいるのが見てわかる。「ここ?」疑う声がした。
「何年か前から噂だけど、『出る』って……」
ゴクリと唾を飲み込み、2人の女子は鳥居まで階段を上った。
「夜中じゃないしさぁ、まだ『出る』には早いんじゃないの」「そうだねー」
「どうする? 行くだけ行ってみる? せっかく来たんだし」
「だよね」
鳥居をくぐり、歩を進めた。
こじんまりとした空間だった。洗い場がすぐ横にあり、奥にはお堂だったはずの建物。賽銭箱があるが蜘蛛の巣だらけで枯葉などのゴミが散乱し、全体が古く汚く、誰も勿論住んでいるわけがなかった。
大きな岩、小さな岩。あちらこちらにゴロゴロと置いてある。捨てられているかの様にも見えた。
静かで、時々風の音が聞こえるだけだった。
「帰ろっか。つまんない」
「普通に廃墟だねー」
「行こ」
2人は期待を裏切られて拗ねた顔で鳥居に戻った。くぐって、肩を揉みほぐしながら話をする。
階段を並んで下りながら、聞いた。
「何も無かったね。どうするこれから。うち来る?」
「そうしよーか」
「いいの?」
「いーよ」
「じゃあ、行こう!」
話は決まり、道を歩いて行った。
1人増えている。
A「うち来る?」
B「そうしよーか」
C「いいの?」
A「いーよ」
C「じゃあ、行こう!」
Bは誰?