除夜の鐘
ゴーン ゴーン
除夜の鐘が遠くから聞こえる。
私、鈴木千笑は毎日恒例であるこの古びた神社にて新年のお参りをしているところだ。
古びた神社だからなのか私の他にお参りをしている人などおらず辺りは灯りがぼんやりと揺らぎ、静かな時が流れるだけ。
去年はお世話になりました。
今年もよろしくお願いします。
一礼をしてスッと目を開ける。
「ふぅ…寒い…帰ろ…。」
ぐるぐるに巻かれたマフラーに顔をうずめて後ろを振り返る。
すると、遠くから人が歩いてくるのが見える。
こんな古びた神社にお参りにくるなんて珍しい…
そのままぼんやりみていると姿がはっきりと見えてきた。
背が高い。男性…みたいだ。
「あ!いたいた!」
………私?
「やっと見つけましたよ!神様!」
「………は?」
にこにこーとした笑顔で言うその男性…いや、青年は私の唯一発した言葉など無視してどんどん近づいてくる。
私の目の前まで来ると手を掴み目を輝かせて握手をされた。
「ほんと良かった!千笑が見つかって!あ、神様って言っちゃったけど、今は次期神様かー!」
なんで名前を知ってるんだ…
コイツ誰…
新手のストーカー?
もしくは詐欺師か何か?
どっちにせよ怪しい…怪しすぎる…
ここは一先ずさりげなく逃げよう
「いやー、千笑を探すのがどれだけ大変だったかー!神様と一緒に世界を探し回って旅をしたわけなんですけどねー、まぁ、それもいろいろとあったんですよー!」
聞いてもないのにベラベラと喋り出すこの青年。私はそろーりと話に夢中になっている青年を横切ろうとする。が、
「千笑何処に行くんですか?」
にこりと笑った笑顔がなんとなく怖いのは気のせいなのだろうか。
思わず立ち止まってしまう。
「これからいろいろと大変だろうと思いますが、僕も一緒に頑張りますから!どうぞ、よろしく!」
「あの、さっきから訳が分からないですけど。私、神様じゃないんで、怪しい宗教とかお断りなんで」
「あ!そうか!ちゃんと説明してなかったね!神様も前もって説明してくれてたらいいのになー。僕の名前は師走 奏。千笑を神様にするべく現れた救世主です」
周りにキラキラが飛んでるのでは?
と思わせるほどのこの青年。