カープは石油王の夢を見る。
ギィちゃんが急に呻きだした。
「ぐがが、ごがが、ごげぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「おい! 大丈夫か! ギィちゃん!! しっかりしろ!」
呼びかけてもギィちゃんからの応答はない。白目をむいて呻きながら喘ぐだけだ。僕は周りの人間を見まわしたけど、相も変わらず大学という日常生活をとことん営んでいるだけだった。講師はまじめにしゃべり続けて、やかましいほどのタイピングの音だけが教室に鳴り響いているだけだった。僕は混乱する頭の中で、こうなったら自分でどうにかするしかないと思うだけだ。
「おい! しっかりしてよ! ギィちゃん!」
その時、ギィちゃんの呻きが止まった。途端、ギィちゃんが黒目をむいて僕の方を見た。目が完全に逝っていた。
「……白……みぃ……」
僕は顔全体があの嫌な熱さで包まれるのを感じた。鼓動が早まってそれが加速していくのがわかる。
「何? 大丈夫か?」
僕は努めて冷静になろうとした。
「……白、身……だけ……なら……」
「えっ? 何? なんだよ? 何言ってんだよ!」
僕はギィちゃんに呼びかける自分の声が次第にコントロールを失って少しずつ大きくなっていくのがわかった。でも、自分じゃそれを制御出来なかった。
「白! 白! 白、身……だけならぁぁ!!」
ギィちゃんは意味の分からないことを叫んだ。だけど、教室には依然として日常がすやすやと横たわり続けていた。怖いくらいに微動だにせず、そこから一歩も動こうとしなかった。
「おい! ギィちゃん! 何言ってんだよ! 意味わかんねぇよ!」
僕は必死になってギィちゃんに呼びかけ続けた。ギィちゃんの肩に手をかけて揺さぶった。それでも駄目だったから思い切って顔をはたこうとした。
その時、教室の入り口のドアが壮絶な爆発音とともに弾け飛んだ。




