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記憶と心臓を求めて  作者: hideki
本編
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第百五十一話 木偶の集団

「隠れてないで出てこい!」


 紅煉が炎を噴き出す度に黒騎士たちの残骸が増えていく。だが、その数は一向に減る気配が無く、むしろ増えているようにさえ見える。


「オウウウウウウウ」

「アアアアアアアア」

「ウアアアアアアア」


 紅煉の炎の隙間を縫って、三体の黒騎士が刹那に襲い掛かる。彼らの剣が振り上げられ、刹那が黒に覆われた。それを皮切りに次々に黒騎士たちが刹那に襲い掛かる。先ほどの義衛と全く同じだ。このまま物量で押されてしまっては勝ち目がない。


 しかし――


「すっこんでろ!」


 その言葉と共に一陣の風。その言葉の後にはバラバラに切り刻まれた黒騎士の鎧と、その中心で飛旋を構える刹那の姿があった。


「ちっ、おい、何を逃げているんだ!もっと数で押せ!」


 数では圧倒的に有利であるにも関わらず、押されていることに危機感を覚えたのか義外の声に先ほどより緊張の色が混じる。その声に呼応するように尻込みしていた黒騎士たちが再び刹那へと武器を構える。


「刹那くん、大丈夫かね?」


 流石に今の攻撃には少し体力を使ったのか、肩で息をする刹那の元へ義衛が駆け寄った。


「なんとか大丈夫です。でも、キリが無いですね」

「あぁ。どうしたものか。義外が奴らの中に交じっているのは確実なのだが、探そうにもこう次々に襲い掛かられてはな。ここまで義外に忠実とは。まったく、この木偶の坊たちには恐怖と言ったものがないのか」

「恐怖……恐怖……もしかしたら!」


 刹那は何かを閃いたのか、飛旋が赤く発光し、再び紅煉へと姿を変える。


「義衛さん、俺に考えがあります」

「なに?」

「こいつらが次々襲い掛かってくるならきっと――」

「ふむ、そうか。それならいけるかもな」


 刹那の耳打ちした内容に義衛がニヤリと笑う。


「それじゃあ、頼みます!」


 刹那が黒騎士たちの方へと走る。黒騎士たちの方もそんな彼を迎撃するために次々に前に出た。その結果がどうなるかは先ほどから学習しているはずなのだが、それでも退かないのはあの義外の命令のためか。


「オラァ!」


 紅煉が炎を噴き出した。先ほどまでの炎の比ではない。火の海が刹那を起点にして前方に広がっていく。


「ほう、見事なもんだな」

「感心してないで早く当たりをつけてください!」


 大量の炎を操るのは紅煉の力をもってしても辛いのだろう。刹那の顔が引きつっている。なぜ彼がこのようなことをしているかと言えば、義外をあぶりだすためだった。

 黒騎士たちは刹那の炎に焼かれても一向に引く様子が無い。それほどまでに義外の言葉は絶対なのだろう。だが、その中に義外が紛れ込んでいるのなら、とてもこの炎に耐えられるはずがない。きっと、他とは違った動きをするはずだ。


「ん?あれは……」


 炎にのたうち回る黒騎士たちの中に一人だけ、義衛達から距離を置こうとしている者がいる。自分で考え行動する普通の人間たちの中にならこういった行動をする者も少なからずいるかもしれないが、義外の言葉に絶対服従のこの木偶の坊達の中ではそれが逆に不自然だ。


「あそこだ!あの左側の奴!」


 義衛が指差した方向を見て刹那もその存在に気付いた。そして、すぐに対象をその一人に絞ると、ありったけの炎をぶち込んだ。


「!!!!!!」


 義外と思しき黒騎士が炎に包まれる。他の黒騎士たちとは比べ物にならない勢いで炎が上がり、全身を炎が包み込み、絶叫すら聞こえないほどだ。普段はそこまでしない刹那も、他人の大切なものを平然と奪う相手のやり方に怒りを覚えているのだ。


「オオオウオオオオ」


 頭を潰されたことに困惑したのか、黒騎士たちは次々にうろたえる様な素振りを見せて逃げ始めた。指揮官を失えばこの有様。まさに烏合の衆と言えるだろう。


「ふう、どうやら当たったみたいだな。義衛さん、これで――危ないッ!」


 義衛に声を掛けようと振り返った刹那が叫ぶ。


「まだ終わってはいないぞ?」

「――ッ!」


 義衛が振り返った瞬間、何かが彼に振り下ろされた。振り下ろされたのは衝撃で相手を攻撃することを想定したメイス。それを持っていたのは、黒騎士の一人。そして、その黒騎士から聞こえてきた声は紛れもなく義外のものだった。


「油断したな義衛」

「ぐ、義外!貴様生きていたか!」


 背後からの不意打ちに膝をついた義衛は目の前の義外を苦々しげに見上げる。どうやら、義外だと思っていたのは囮で、目の前にいるのが本物のようだ。

 まんまと騙された。まさか、わざと黒騎士の一人を不自然に動かし、自分たちの関心をそちらに向けさせるとは。

 しかし、次の言葉で刹那はさらに驚かされることになる。


「生きている?その言い方は適切ではないな。私もお前も、もう死んでいるだろう(・・・・・・・・・・)?」

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