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第1話 最低最悪のクリスマス

「なんだか気が重いな」


 高校二年の冬休み

 来年は受験で忙しくなるだろうし、今年は瑠奈とどこかに出かけよう。

 そう思って俺は彼女をデートに誘った。

 だが、前日に急用ができたといわれて今は手持無沙汰というわけだ。

 そんな寂しい俺の名前はやなぎそら

 どこにでもいるような高校二年生であり、クリスマスイブという恋人がいる人間にとっては楽園ともいえるイベントに恋人が居ながら参加できない寂しい男だ。


「って、こんなことを考えてても虚しいだけだよな~」


 実際問題予定があったはずのクリスマスは何もすることが無くなってしまっている。

 まあ、急用が入ったなら仕方ないんだろうけどそういえばどんな用事なのか聞いてなかったな。


「クリスマスにできる急用っていったい何なんだ?」


 補習とかは瑠奈の成績的にありえないだろうし部活は特にやってなかった気がする

 いやいや、瑠奈に限って浮気なんてするわけないしな~


「家の中にいても変なことを考えるだけだし、遊びに行くか」


 もともとデートに行くはずだった場所を何となく歩いてみるか。

 特に何の意味もなく歩いているとクリスマスだからかカップルがやけに目に入る。

 ドタキャンをされた俺としては少し辛いものがある。


「うん、帰ろう。本当に虚しくなってきた」


 街を歩くカップルをみて俺の隣には誰もいないという現実を嫌でも認識してしまって涙が出そうになる。

 我ながら本当に情けない。


「はっ……?」


 いやいや、見間違いだろ?

 だってあいつは急用ができたって言ってて、いやあれが急用なのか?

 なんでホテル街なんかに?

 そもそもなんで悟と腕なんか組んでんだよ?


「おい、なんで二人がこんなところにいるんだよ」


 気が付けば二人に駈け寄ってそう問い詰めている自分がいた。

 あまりにも不可思議な光景でそれが現実だとは到底信じられなかった。

 いや、これはドッキリか何かか?


「……空」


 瑠奈は俺に気が付くとめんどくさそうに顔をゆがめた。

 なんで、そんな顔するんだよ


「なんで、悟が瑠奈と手をつないでこんな場所に入って行くんだよ」


 俺は悟に詰め寄って問い掛ける。

 こいつは小学校からの付き合いでいつも一緒にいた親友だ

 瑠奈と付き合うために相談に乗ってもらったりもした

 そんなこいつがなんで瑠奈とクリスマスに手をつないでホテル街に入って行くんだよ

 なんだか眩暈がしてくる。


「なんでって、お前本当にわからないのか? 男女がクリスマスにホテル街に入ってやることなんて一つしかないだろ?」


 悟は心底不思議そうに俺を見つめてくる。

 なんでそんな顔ができるんだ?

 こいつは俺と瑠奈が付き合っているのを知っているだろうに


「待てよ! 瑠奈は俺の彼女だぞ? なあ瑠奈。瑠奈が言ってた急用って何なんだよ」


「はぁ、バレたならもう隠す意味もないよね。私は悟君のことが好きなの。正直もう空に興味なんてないし別れてくれない?」


 目の前が真っ暗になった。

 言うなれば胸にぽっかりと穴が開いたような感覚だった。


「という事らしいぞ。なんか悪いな」


 悟は口ではそういっていたが顔は笑っていた

 今にも吹き出すのを堪えたような顔でそういって瑠奈の肩を抱いて再びホテル街に向けて歩き出していった


「う、ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 俺の何がいけなかったのだろうか

 今となってはそれを聞くこともできない

 クリスマスに親友と彼女を失った

 絶望を味わった


「なんで、なんで」


 うずくまって泣き叫ぶことしかできることが無かった。

 そんな無力な俺が一番嫌いだった。

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