表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/26

19話

 天空にはまだ丸い月が輝いていて、公園の草、木を照らしていた。そして僕はポケットにある錠剤を呑みこんだ。

「話って何?」

「そ、そうね……」静香の挙動がおかしい。

「今日の月はきれいだね」

「ええ、私は太陽より月の方が好きだわ。だって――月は完全にはなれないでしょ?」

 僕は静香の言いたい事を理解できなかった。

「人間だって同じ。この世に生を授かって死んでもそれは変わらないと思うの」

「違う。人間、いや霊体はこの世に生を授かって修行をすることで完全体になろうとしてる」

「どちらにしても同じじゃない。"不完全"は"完全"にはなれないわ」

 静香はどこかの組織に入ってるのか、という疑問が僕の頭を駆け巡る。

「だから勉強して完全になろうとしてるんじゃない?」

「確かにそうかもしれないわ。でも勉強という労力を使うのならば完全に近づいたモノを吸収すればいいんじゃないかしら?」

「――だからね亜耶。私に"吸収"させてくれないかしら?」

 文献でしか見たことがなかったが、まさか実際に存在するとは思ってもいなかった。

「いくら"静香"だろうが僕は誰にも吸収はされないね」

「そう、楽に吸収しようと思ったけれど残念だわ」

 その瞬間、静香から感じられる気配が冷酷に変わる。

「吸血鬼……」

「ええ、そうよ」

「自分の意思でやってるの?」

 静香は一瞬怯んで見せたがすぐにそれを戻した。

「自分の意思でやってるの!」

 静香が目の前から消えた――後ろだ!

「遅いわ!」避けるのが一歩遅かったようだ。左腕を引っ掻けられた。

 少し遅れて熱く焼かれたような痛みが左腕を襲った。

「くっう……」わずかな魔力を使って僕は痛覚を遮断させた後に残った魔力を両手両足に纏わせる。

 チャンスは一度しかない……!

 地面を跳んで静香の目の前に行って右手を思いっきり鳩尾に振りかざした。

「うっ……」苦しそうに喘ぐ静香を見て僕は顔を逸らした。

 その瞬間に背中に激痛が走った。

「はっ……っ!」声にならないよう悲鳴をあげる僕は誰にやられたのかを確認するために痛みをこらえて周囲を見る。

「亜耶、大丈夫!?」

 驚異的な回復能力で回復した静香が僕に走り寄る。

「凄い血が出てるわよっ!」

 思考に靄がかかったように鈍くなっていく。

「大、丈夫……だから」この言葉をちゃんと言えたかどうか分からないまま意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ