18話
遅くなりすみませんでした。
ぷにゅ。――なんだろうこの抱き枕、気持ちいい。
僕は気持ちよさを求めるために少し力を入れて抱きつく。
「んっ、ふう……」甘酸っぱい匂いが僕の鼻腔をくすぐった。
温かいし、いい匂い。――そこで頭が覚醒してくる。
「なんで静香と寝てるの?」
静香は僕の声に反応したのかんっ、という声と共に身じろぎした。
その静香の動きを見てしまいドキドキしてくる――はずなのだがしなくなっていた。
そんな自分の感情の変化に戸惑ってしまう。
「もしかして順応化が進んでいる?」
静香を起こさないようにそっとベッドから抜け出して、自分の服があるであろうリビングへと向かった。
あとどれぐらいこの状態が続くのか、と思い僕は時計を見た。――まだ、日の出まで2時間ある。
「抑制剤を飲むしかないか……」ポケットから錠剤を取って口に放り込んだ。
「くっ……」あまりの苦さに表情を歪まさせながらもなんとか飲み込む。
「亜耶、隣にいないと思ったらここにいたのね」突然の声に僕は驚く。
「――眠れなくてね」咄嗟に嘘をついた。
「あのね、言いたいことがあるの……」
静香は覚悟を決めたような表情をしていた。だから僕は、
「いいよ」
「亜耶ありがとう」無邪気な笑みを浮かべた。
「うん。そこの公園でいいよね?」
「ええ、いいわよ」
――僕は今見せた”笑み”の本当の意味を知らなかったんだ。