12話
2011年もおねがいしますっ!
組織へと戻った僕は、『例の件』を報告するかどうかを迷っていた。
あの人の深層意識を見た時に、『本当はやりたくない』と読めたんだ。だから、僕は……。
はあぁ、と自然にため息が出てしまう。
その時、僕の身体が突然光って、女の子になった。――男でいられる時間が終わったのだ。
「どうしたんだ、そんなにため息ばかりついて」と言いながら、早弥は僕の顔を覗き込む。
「ううん、ちょっと疲れてるだけだから。気にしてくれてありがとう」
「ああ……。それならいいんだがな」と早弥は言って自分の仕事へと戻る。
「早弥、ごめん。今日はもう帰るから」と言い残して僕は瞬間移動を使った。――部屋に残留魔力を残して。
自分の部屋にワープした僕は―靴は玄関にワープさせた―自分のベッドに飛びこむ。
「何も考えるなっ! 寝るんだ!」と自分に言い聞かせて、魔法で自分を眠らせた。
亜耶が魔法を使って寝た途端に、足音も立てずに"誰か"が、部屋に入ってきた。
"俊"はニヤリと不気味に笑って、ベッドに侵入したのだった。
僕は、5歳ぐらいだった時の"夢"を見ていた。
あの時は、何をするのも二人で一緒だった。遊んだり、お風呂に入ったり、寝たり。
でも、今さらなんで"こんな"夢を見るんだろうか。誰かに魔法を掛けられた?――否、魔力は感じられなかった。
あの頃から、優しかった。それは今でも一緒。――でも、ブラコン……この場合はシスコンかな。それがひどくなってきた。
僕としては、好きな人を見つけてほしいけどね。
――さてと、この微睡から目覚めますか。
目を覚めして僕は背伸びをする。
「んっ。はあぁ」と間抜けた声が出るが気にしない。だって、朝だもん。
ふと、そこで僕は気づいた。――隣に兄さんが寝ている事を。
兄さんの寝顔、久しぶりに見たなあ。おでこをつついてみるが、起きる気配がしない。
「ふふ。おはよう、兄さん」と僕はそう言い残して自分の部屋から出て行った。
僕は虚空から携帯電話を取り出して、時刻を確認する。
「5時25分かあ。少し早いかな」と独り言を呟きながら、キッチンに立って朝食の準備を始める。
サラダ用とスープ用の野菜を手際良くきって、サラダ用をボウルに盛りつけをして鮮度が保つように冷蔵庫に入れておく。一品目完成。
スープ用に取っておいたのを使って、スープを作る。味付けはシンプルに塩と胡椒だ。
最後に、ベーコンと目玉焼き焼いて完成させる。皿に盛って保温結界に入れておく。
「完成……っと」僕はエプロンをイスに掛けて、リビングに行ってテレビを付けてニュースをやっているチャンネルに切り替える。
ニュースで気になるものがあった。それは、海外のとある組織が大打撃を受けた事。
明らかに組織が関わっているということは明白だった。でも、何処の組織がやったのかは手札が少なすぎるので判別できない。
そんな事をしている内に、兄さんが起きて来た。
「亜耶、おはよう」
「兄さん、おはよう。顔洗っておいでよ」僕はそう言うと朝食をテーブルの上に並べて、ご飯をお茶碗に盛って、兄さんが来るまで席に座って待つ。
兄さんは座って箸を持った事を確認して「いただきます」と言う。
食べ終わったので皿を片づけていると兄さんに呼ばれたので中断してリビングに行く。
「兄さん。どうしたの?」
「――――が帰ってくるんだ」
最初の方、聞きずらかったな。
「何て言ったの?」
「だから……。親父とお袋が帰ってくるんだっ!」
僕はその言葉を耳に入れた途端に、全身から冷や汗が出てきて家を飛び出てしまった。