第76話 銀髪弓使いのダンジョン探索 その3
――ドレインスライムを討伐して……わたしはここにいる。
リーザロッテと出会ってからのことを思い返していたセリニの現在の地点は所々が輝く水晶によって照らせた明るい洞窟。
矛盾で満たされたその空間の一部にて鉱石を採取していた。
「また魔鉱石」
手に入れたのは魔鉱の鏃の素材となるアイテムであった。
暗影の髪飾りの効果で魔法を使えないセリニにとって魔法が弱点のモンスターにまともなダメージを与える手段を齎すものである。
――リーザロッテさんとパーティーを組んでから良く手に入る気が……します。
そんな所感を抱きながらセリニは今の状況を心の内側で零した。
――条件を満たす為のボスは……ガイアの安らぎで話していた通り……問題なく倒せました。
ドレインスライムとの戦いでは予定通りに戦い。その結果リーザロッテが事前に口にしていた楽勝と言える結果を出した。
――けどそれ以外のわたしは歩くだけ。
しかしダンジョンの道中でのモンスターとの遭遇戦は自身の要である暗影への序開を使用するゲージをボスモンスター戦まで温存をする為にリーザロッテに殆ど任せっきりでセリニは罪悪感に当てられていた。
――魔法を沢山撃っていたのに……消費がない……自動回復している。
だが同時に今いる地点まで戦いながらもリーザロッテの現在のMPの数値が満タンであることをセリニは確認していて驚いていた。
――装備を整えているのも……あると思うけど。
――一撃で終わってたから……ですね。
鎧袖一触――リーザロッテに挑んだモンスター達の末路であり、それがMPの消費を最低限に抑えられた理由の一つだとセリニは推測した。
――そういえば……ゲージの数は……。
リーザロッテのMPの量を確認したついでに自身のスキルに関わるものに目を向けたセリニだがその刹那――人外の叫びが背後から届いた。
――ゴブリン!
その音の特徴から対象の正体を判別したセリニは笑みを浮かべるとそれは声としても現れる。
「わたしが倒す」
スライム。
及び石型のモンスター――モンスター名リトスは物理に強く、魔法でダメージを与えるのが効率的であった。
故に攻撃魔力にステータスポイントを振るリーザロッテが担当していた。
だがそれ以外のモンスターはある理由を兼ねてセリニが担当している。
「――――!」
言葉に解せない叫びは自身に近づいているとセリニは判断。
――直接攻撃を仕掛けるゴブリン。
近距離型の武器を扱う敵と見極めたセリニは手元に弓を出現させながらスキルを呟いた。
「【瞬迅】」
瞬間に銀髪の少女はその場から消えた。
それから二秒後、大斧が縦に薙ぐ――然れど目標が消えたために空を切るだけだ。
更に大斧の進行は中途で止まる。
大斧の主であるゴブリンが、銀髪の少女が薙いだ弓の直撃と蹴りの一撃を食らった為――そして追撃は冷たき言の葉が発端となった。
「【暗影変異・命喰禍爪】」
黒に輝く鋭利な手による手刀がゴブリンに直撃した刹那、その身は細かい黒き影となって――セリニの身体に吸収された。
――少し……慣れてきた。
止めになると暗影への序開のゲージが回復する。
暗影変異・命喰禍爪の効果が発動すると口以外からものを食べる感覚がプレイヤーの身に降り注ぐ。
最初こそ嫌な感覚と思っていたが――二桁は喰らっているからか然程気にならなくなってきたセリニはゴブリンに襲撃される前に目的であるゲージの確認をした。
「九個」
豊富な数を見たセリニは楽しい気持ちとなった瞬間――背後から声が届いた。
「――流石」
「!」
それは既に知っているリーザロッテの声。
パーティーを組んでいる以上、近くにいるのは至極当然であるが人見知りのセリニにとって驚かせるのに十分状況であった。
「はっ……はい!」
そんなセリニの様子をスルーしながらリーザロッテは言葉の続きを紡いだ。
「その調子でアペイロン戦もよろしく頼むね」
そう言うと身体の向きを左に向ける。
それにつられてセリニもその方向を見る。
――この扉の向こうに……ギガントスライムが……。
そこには如何にもな雰囲気を漂わせる装飾が施された両開きの扉があり、その装飾は微かな発光を繰り返していた――微音も耳に届いておりそれは心音を彷彿させる。
自然物だけで構成されているはずの洞窟の奥底に潜む――場違いにも思えるその建具はボスモンスターが住処の出入り口であることを誰かに言われずともセリニは察していた。
「あの……魔鉱の鏃の……作ったら行きます」
聞いたリーザロッテは頷くと扉に向かって歩を進める。
――作るだけ……作らないと……。
街以外で鏃を作成すると街に戻った瞬間にその手前で生産していた鏃は消失する。
それは好ましくないセリニであるが――それが原因で鏃の数が不足してボスモンスターに倒される。
そんな状況になってしまったら後悔の感情で押しつぶされてしまう。
――大丈夫……言われた通りにやって……倒して……楽しい気持ちで……今日は終えよう。
ここまでの道中は余裕があり、リーザロッテの口からギガントスライム・アペイロンとの戦いでどう動くべきなのかはセリニは既に聞いていた。
――もしものときは……切り札もある。
そして想定通りに進まなくてもそれを打破するためのスキルをセリニは持ち合わせている。
――できれば……使いたくない。
――使って……終わらなかったら……終焉は……わたしに降るよね……。
しかしそれはある理由から極力使用せずに済むのが好ましいとセリニは思ったが今それを考えても仕方ない。
「とにかく……頑張ろう」
決心を口にして深い息を吐き出して気持ちを切り替えを済ませたセリニは前を向くとその足を扉に向けて歩み出した。




