第74話 銀髪弓使いは楽勝から
「前より……広い」
ガイアの安らぎに戻ってきたセリニの開幕は驚きから始まる。
部屋の雰囲気や構成は最初に訪れた時と変化は無い。
だが口にしたとおり、部屋の範囲は拡大されていて、調度品の数も倍となっていた。
「パーティー専用なだけはあるようね」
そう語るのはセリニが現れる前から既に部屋の中にいたリーザロッテであり、テーブルの前にある椅子に座っていた。
――本当に……パーティーの人だけしか……いない。
今の状態を認識したセリニは流れるのは緊張による圧迫感であった。
――部屋で一人の人と話すの……怖い……。
既にゲームの中で他のプレイヤーと一対一で会話はしていたセリニ。
しかし開放感がある今までの空間とは異なる空間である為に現実に近い感覚を抱いていた。
故にどのように行動すればいいのか解らずに扉の前で立ち止まっていた。
そんな少女に向けてリーザロッテは声を掛けた。
「あなたも座ったら?」
「は……はい!」
リーザロッテが口にしたことが正しいと思ったセリニは緊張で浸された声を出しながら椅子に座った。
「さてと」
するとリーザロッテが話を始めた。
「何から話そう?」
「……」
リーザロッテから話を広げてくるかと思っていたセリニは呆然とする。
――わたしから……話して……いいのかな?
とは言えリーザロッテに聞きたい事があり、それを口にするチャンスだと見たセリニは声を出した。
「その……ガイアの安らぎの種類に……パーティーがあったのですね」
一先ず現在滞在している場所に関して口にした。
ガイアの安らぎ・パーティー。
それが現在の彼女達がいる場所である。
名が表わす通りパーティー専用の場所であり、パーティーを組んでいる状態でガイアの安らぎに繋がる扉に触れると選択肢の中に現れる仕様であった。
それを初めて知る事となったセリニはダンジョンでリーザロッテとパーティーを組むことで足を踏み入れられた。
「そうみたい、わたしも初めて入る」
聞こえた内容に意外だと思ったものが含まれている事を気づいたセリニは顔にそれが表れる。
「不意を突かれた? あなたと同じでわたしもパーティーに入るのは初めて」
「そうだったの……ですね」
リーザロッテが同じ境遇だったと察したセリニはそんなこともあるのかと思えた。
「そ、わたしが今まで使っていたのはシングルかマルチ」
続けてリーザロッテが話した場所はセリニも足を踏み入れていた。
「マルチ」
その内の一つで自身を見かけたとリーザロッテから聞いてとても慌てたタイミングでモンスターまでもが現れて有耶無耶になってしまい、それが気がかりだったセリニはそれに関連する事を尋ねた。
「その……マルチで……わたしを見かけたんですよね……」
「そうよ」
確認したセリニは続けて口にするのは今の状況そのものに対する疑問であった。
「それが……わたしを待つ必要になるのは……どうしてですか?」
自分がガイアの安らぎ・マルチに入った時間は十秒すら満たさないほんのわずかであった。
そんな自身が他のプレイヤーに興味を持たれるのが不思議だと思ったセリニの問いは予想していたのかリーザロッテは落ち着いた様子で応じた。
「言っちゃうとボスを倒すの協力してほしい」
「ボス……ですか」
疑問に対する解はゲーム空間特有の内容でセリニにとってもお馴染み要素であり瞬く間に理解する。
しかし表層の部分だけであり、疑問の解決には至っていない。
「でしたら……わたし以外の人でも……」
ガイアの安らぎ・マルチには沢山のプレイヤーがいたことを把握していたセリニに「そうね」とリーザロッテは同意する。
「だけど遊んだ時間が近い人がいなかった」
「遊んだ時間が……近い?」
不思議と思った部分を声として出したセリニはその意味を察したと同時にリーザロッテの声が届いた。
「セリニもこのゲームを始めたばかりでしょ?」
自身がツインファンタジーワールドを遊んで一日も経っていない。
それを言わずとも気づいて断言したプレイヤーはリーザロッテで四人目――そのために驚きはごくわずかで済んだセリニ。
だが従来と異なる驚きがあった。
「あの……つまり……リーザロッテさんも始めて……そこまで経っていない?」
「ええ、レベルは14で今来ている装備の見た目は始まりの」
ローブセット」
自身のことを明かしたリーザロッテに向けて、セリニも明かした。
「わたしも……14です」
「そんな偶然もあるのね」
レベルが同一だった事を知って笑みを浮かべるリーザロッテ。
――同じ……レベル。
対してセリニは緊張感が身体を縛っていた為に表に表わしていなかったがかような事もあるのかと思っていた――故にリーザロッテが倒したいボスがどんなのなのか興味を感じた。
「その……倒したいボスって……どんなボスですか?」
「ギガントスライム・アペイロン」
即座に答えたリーザロッテ。
聞いた瞬間にスライム系のボスだと察したセリニに言葉が重なる。
「普通のボスじゃないけどね」
「普通……ではない……ですか」
含みある言い方が気になったセリニにリーザロッテは答えを口にする。
「本来の名はギガントスライム。倒せば領域転移。街で領域転移を手に入れていてもおまけのスキルが一つ手に入る」
リーザロッテが話したモンスターの名が自身が倒そうとしていたモンスターであることを察したセリニ。
――他のスキルが……おまけで……。
――アルーセさんが……言っていた……通り。
領域転移以外にも手に入るものがあるのは一度聞いた。
しかしそれよりもボスモンスターが気になったセリニはそちら側に関することを尋ねた。
「なら……あの……ギガントスライム・アペイロンは……」
「特殊な条件を満たすと戦えるようになるボスモンスター」
淡々とした色合いで言われたセリニは「そういう……モンスターですか」とあっさりと納得した。
――オンラインゲームにも……いるのですね。
普段は力を抑えられている普通のボスであるが何らかの過程をこなす事で力が解放されて強力なボスとなって立ち塞がる――もしくは特に理由もなく強くなった状態と戦える。
そんな展開のゲームを幾度も遊んでいた故に即時に理解に至ったセリニ。
――強いモンスターと戦える。
強敵と戦闘できる事にとても魅力を感じるセリニ。
――だけど……わたしは……まだ……。
しかし同時に不安があり、それをリーザロッテに明かした。
「あの……わたし……まだギガントスライムと戦ってさえいないんですけど……」
通常の状態を倒していないのに派生形態と戦うのは無謀に思えたセリニにリーザロッテは「それは大丈夫」と即答する。
「セリニならギガントスライムなんて楽勝よ」
「――え?」
話した内容が必然であると言わんばかりな様子を見せるリーザロッテにセリニは当惑した。
――根拠……あるのかな?
理由が一切浮かばないセリニは受け入れることが出来ずにどんな言葉を向ければいいのか解らずに混乱する最中にリーザロッテは言葉の続きを紡いだ――その色は自信に満ちあふれていた。
「わたしは一歩も動かずに一人で倒せたんだから」
「一人で……動かないで!」
ツインファンタジーワールドのボスモンスターが強敵である。それを想像することは黒衣のゴブリンとの戦闘経験があった故に容易かったセリニはそれはとてつもない事だと理解できた――のだがとある理由からリーザロッテが一人で戦った場合は必然的にそうなるのでは? そんな考えが脳裏に現れる。
「あの……リーザロッテさんの疾走力なら……動かないのは……普通ですよね……」
控えめな様子で思った事を口にしたセリニにリーザロッテは笑みを浮かべながら即時に応じる。
「バレちゃうか」
言われた内容に反論の余地が無いと言いたげな様子であったリーザロッテは言葉を続ける。
「あれだけの速度差があれば当然ね」
端から聞くとリーザロッテが何の話をしているのか筋道が立たない。
だがそれを聞いていたセリニは話の内容を把握していた。
「そう……ですね」
セリニは相槌を打つその間に脳裏に過るのはガイアの安らぎからダンジョンに戻った直後にリーザロッテと出会い――話がしたいからとガイアの安らぎに踵を返した場面。
距離が近いこともあってすぐにガイアの安らぎの出入り口に自身は到達した。
だがもう一人はゆっくりとした歩みで進んで到達しない。
それを見てのんびり進んでいるのか考えたセリニにリーザロッテはステータスポイントの振り方を明かした。
「疾走力に……ステータスを振っていない……なんて……」
リーザロッテはゆっくりと進んでいたが、のんびりと歩んでいた訳でない――それが最高速だった。
「けどその後……パーティーを組んだら……早くなって驚きました」
その後に起きた現象の事を口にしたセリニだがどうしてそうなったのか解らなかった。
疑問が表情として表に出た少女に向けてリーザロッテは口を開いた。
「パーティーを組むと歩行速度がパーティーの中で一番疾走力が高いプレイヤーのものに統一されるみたい。つまりあの時のわたしはあなたの歩行速度を借りていたってこと」
「パーティーを組むだけで動きが速く……」
聞いた内容の所感を呟いたセリニにリーザロッテは補足する内容を伝えた。
「移動の時だけだけどね、敵との戦いになったら元の速度に戻る」
聞こえた仕様は納得できるものだった。速度の共有が戦闘にも影響を与えてしまったらバランスがおかしくなる。
それに気づいたセリニは「そうですよね」と返すとリーザロッテとギガントスライムの戦いに関して思った内容を口にした。
「ですけど……動かなくてもボスモンスターを倒せるんですね」
「相性がいいこともあるけどね」
「相性?」
「魔法がスライム系統の弱点なことは知ってる?」
届いた言葉は初めて聞く中身――だがセリニには実感があり、それに対する解へと繋がった。
「知らないです……けどそうかもしれないと思ってました」
「ならわたしがスライムに対して有利なのが解るでしょ」
リーザロッテが断言した意味をセリニはすぐに理解した。
「魔法を使うから……ですか?」
「そういうこと、けどMPの回復も間に合ってたからダメージ効率が悪くても時間は掛かるけど倒せて……」
自身が口にした内容に納得しかけたリーザロッテであったが直前で「るか怪しいか」と否定した。
「そうなんですか……」
よく分からないセリニだがとりあえずの言葉を添える。
「わたしが選んだサブ武装は魔法のダメージを上げるものだから、ダメージの数値が低くなったその分相手にする時間が伸びて、MPが尽きて倒されていたかも」
そこで一旦止まったリーザロッテに対してセリニは気になった点があった。
「サブ武装を選ぶ事が……可能なのですね」
自身が武器を選択した時は選択肢が現れていない。そんな明確な違いがあったと言葉にしたセリニにリーザロッテは返答する。
「可能だけど、弓は選択できないんだ」
「は……はい……そうです」
突然飛んできた疑問に答えたセリニに対して自身が言われたことの解をリーザロッテは始めた。
「長杖を選ぶと選択できるサブ武装は三つあるの」
「三個も……選べるんですか」
自身が選んだ武器とは全く異なることを把握したセリニにリーザロッテは一本指を出した。
「一つは弓と同じ……」
そこまで口にしたリーザロッテだが何故か言葉を止めると数秒後「同じよね?」と疑問の色合いをセリニに向けた後に疑問の根幹を表に出した。
「足から短剣が飛び出てたけど」
「は……はい……短剣で……仕込み武装です」
いきなり言われた故に慌てて答えたセリニ。
「仕込み武装なんてあるんだ」
初耳な様子で呟いたリーザロッテであったが今の話の流れに関係ないこともあってそれ以上語らずに自身が話すべき内容を示唆するように二本指を出した。
「二つ目は『盾』」
「盾ですか」
RPGではお約束の装備であり、特に言うことがないセリニ。
そんな少女に向けて二本指を解いてリーザロッテは手を前に出したその刹那――
「そしてこれが三つ目でわたしのサブ武装」
そう言ったと同時に白い光が現れる。大きさは掌サイズで形は円、中には紋章が描かれていた。
見たセリニはそれが何なのか口に出た。
「小さな魔法……陣?」
他のプレイヤーやモンスターが魔法を放つときに現れるものに近いと思ったセリニだが答えは違った。
「見た目はそう見えるけど、これは『簡易術式』」
「術式……魔法に関わるサブ武装……ですか?」
名前から予想可能なことを口にしたセリニにリーザロッテが答えを返した。
「そう、使用すると魔法を強化する……攻撃魔法限定だけどね」
「なら……簡易術式が人気なんですか?」
魔法による戦いがメインであるならば気軽に強化可能な手段を選べる装備を使いたいと思ったセリニはそのような推測をした。
それが耳に届いたリーザロッテは少し考える仕草をした後に応じる。
「詳しく解らないけど見かける長杖を使う人は盾や短剣を持つのが多い」
「そうなんですか」
意外だと思えたセリニに対してリーザロッテは自身の見解を話した。
「一癖があるからかもしれない」
「一癖?」
簡易術式の事を今知ったばかりで一切使っていないセリニはどういうことなのかと思い興味を持ったと同時にリーザロッテはその事を話した。
「使用すると魔法が強化されるんだけど、MPは1.5倍になるの」
「1.5倍……」
消費量が増大することは強化の恩恵を受ける以上必然だと思っており、正直驚きへ繋がらないセリニ。
しかしその増加量は忌避感に誘うには十分だとも思えた。
「わたしには関係ないけど」
さらりとした色でそう断言したリーザロッテ。
端から聞くと根拠が無い誇張に捉えられても仕方ないが――その場で聞いたセリニはその立場に在らず。
――そうですよね。
刹那にその言を肯定したセリニはその根拠をリーザロッテに向けた。
「314も……ありますよね」
部屋の中に響いた数の羅列――それがリーザロッテのMPの最大値であり、それが響き終わると「そうそう」と応対の声が返ってきた。
セリニがその数値に気づけたのはパーティーを組んでおり、組んでいるプレイヤーのHPとMPが視界に表示されている為だ。
――体力は少ないけど。
しかしMPの数値を振っているからだろうか? HPは20ととても少ない。
――わたしと同じ。
だが自身の数値も20と同数であったことから他人のことをとやかく言える立場等ではない。
――対策はあるのですよね。
故にその点は心の隅に置いておくと決めたセリニにリーザロッテの声が届いた。
「他には詠唱が三つに増えるの」
「詠唱ですか?」
「そう、普通に放つ時は一つで済むんだけど」
「……一つ」
詠唱が何かと思ったセリニであるが聞こえた内容を紐解くと思い当たるものが頭に過ると口にする。
「その……集束術式解放……結晶之弾丸……クリスタルバレッド……と言ってました……三つの詠唱ですか?」
「それのこと」
――良かった。
言った内容が間違っていないことに安心していたセリニに向けてリーザロッテは感心した様子で声を掛ける。
「一文字も間違えずによく言える。もしかして記憶力が良い?」
「え!」
ゲームとは無関係で現実にも関わる想定外な事を言われたセリニは軽い驚きの声を出した。
「あの……その……その……」
自身で肯定するのもあれだと思いながらもセリニにリーザロッテの質問を否定できなかった。
――記憶……は……得意です。
まともに思考が働いている状況であるならば相手の一言一句頭に保存して自在に引き出すことができる。
そうセリニは断言できた。
だがそれを可能とするのは聞き間違いをして相手に嫌われたくない。
とても褒められない理由が原動力となって――舞風月影は記憶能力の向上に努めていた故に到底他者に自慢できるものではない。
――それに……ゲームを遊ぶ時間が……欲しいから。
――家での勉強時間を……少なくしたい……からです。
更に勉強時間をできる限り短縮して自身が好きなことに時間を費やしたい。
自分勝手と指摘されたら否定できない動機があり、どうリーザロッテに応対すればいいか当惑するセリニだが――現実での友達である筑波爽陽が言っていたことを脳裏に過る。
――筑波さんは……プライベートの事は一切言わなくていい。
――そう……言っていたよね。
ゲームの中で現実の自身に関係する事柄は他のプレイヤーに明かさなくていい。
それに類いしたことを話していた事を思い出したセリニの思考は安定すると落ち着いた色合いの言葉をリーザロッテに向ける。
「はい……覚えるのは得意です」
無難な事を口にしたセリニ。
それに対して「やっぱり」と応じたリーザロッテは詠唱に関することを言い始めた。
「三つに増えた分、魔法が発動するまで時間が少しだけ長くなる。それが簡易術式の欠点」
「それにレベルが上がれば杖のスキルとして普通の術式も習得できるみたいだから」
「普通の術式……」
何なのか考えを巡らせたセリニはすぐさまにそれの意味に気づいた。
――簡易があるなら普通の術式もあるのは……当然……なのかな?
そう思案したセリニだが自身は杖と無縁であった為にその点に関しては言及はしなくていいと思った。
しかし――
――杖……あの黒い鎧の人は……攻撃スキルを使用していたけど。
フィールドでモンスターに挑んでいた杖を使うプレイヤーやフィールドボスを相手に戦いを挑んだ黒い馬に乗った黒騎士のプレイヤーの戦い方は術式を使っていない。
剣や槍の様に武器として扱っていたと感じたセリニは疑問に感じており、リーザロッテに聞いた。
「あの……杖で普通に殴ったり、スキルを使って攻撃している人がいたのですが……あれは……」
言った後に唐突だったかもしれないと思ったセリニだがリーザロッテは事前に持ち合わせていた様に答えた。
「それはきっと斧とか槍とか長柄武器用の汎用スキル」
「そんなスキル……あったんですね」
「攻撃力や器用力にポイントを振れば習得可能みたい、わたしは魔法一筋だから習得する機会は無さそうだけど」
「ステータスで習得するスキルが変わる……」
――わたしには……習得できないスキルがあるのかな?
――使い勝手がいい……スキルがあったりしないよね?
自身のステータスの割り振りが極端な事もあり、新たに得た情報からそう推測をしたセリニ。
――使えるようになったスキルで……頑張ろう。
しかし今のステータスの振り方を変える気は起きないセリニはそれに関しては割り切ることとして杖のサブ武装に思考を向ける。
――消費MPが増えて……隙も増える。
――レベルが上がれば……似たスキル……術式を習得できる。
――別のサブ武装を選ぶ人がいるのも……解ります。
街で短剣や盾を持つ人を見かけることが多いと話したリーザロッテに対して納得できたセリニであったが――杖と聞くとあるプレイヤーの姿がチラチラと脳裏に現れる。
――あの黒い騎士の人のサブ武装は……何だろう。
浮かべた黒い馬に乗った杖を使うプレイヤーにもサブ武装があると思ったセリニ。
――馬で……鎧だから……盾……。
その姿から想像の基礎と線が伸びようとしたセリニだが――そこにリーザロッテの声が乱入した。
「とにかくわたしは簡易術式と術式で強化された魔法に興味がある」
「は……はい!」
それを聞いたセリニは驚きを漏らした。
――会話してるときに……わたしは何を……。
数秒の間だけリーザロッテから意識を離していたことを自覚したセリニは自戒しながら相手の話に自身が思ったことを伝える。
「威力は……高いほど……いいですよね」
ゲームでひたすらにダメージ量を増加させる楽しさは過去のゲーム経験から十全に理解できたセリニの言葉に「そうよね」とリーザロッテは明るく応じるとそのまま言葉を繋げた。
「その威力でギガントスライムを一歩も動かずに倒せた」
――そういえば……ギガントスライムの話を……してましたね。
話の大元に戻ったことを察したセリニは口に出さずにその流れに乗った。
「だから……わたしもギガントスライムは楽勝なんですか?」
リーザロッテとはレベル差がない以上、ポイントの振り方こそ異なるが合計ステータスの差は精々装備によるものとセリニは推測する
――わたしは素早くに動けるから。
――言ったのかな?
リーザロッテと異なりセリニは疾走力にステータスを振っている。
ならば武器の相性を除けば自身の方がボス戦に適性がある。その指摘に間違いはないと思えてきた。
「そうね、あの動きなら接近してスキルを当て続ければ何もさせないで倒せているよ」
さらりと言ったリーザロッテにセリニは思った事を口にする。
「ボスなのに……それでいいんですか……」
ボスはプレイヤーの前に立ち塞がる壁――その存在が容易く崩れるのに疑問に思えたセリニにリーザロッテは「そうね」と同意の言葉を最初に言って更に続ける。
「最初のボスだからそれくらいがちょうどいいんじゃない?」
「そうでしたね……街から近いですから……」
リーザロッテなりの解にセリニは納得したが――実のところ最初の戦うべきボスは橋を渡る前の場所に存在するダンジョンの中にいたがこの場にいるどちらもそのボスはスルーしている。
更に言えば適性レベルでもギガントスライムに苦戦するプレイヤーはそれなりに存在する。
しかしその点に突っ込める人物がいない故に誤った認識で二人の会話はそのまま続いた。




