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第7話 銀髪の弓使いはスキルから

「到着……した?」


 水中から顔を出したセリニは周囲の確認をしていた。目の前には人もモンスターもいない川岸であった。


 ――上がったと同時に現れないよね……。

 そんなマイナスな事を浮かべるセリニであったがそろそろ陸に上がりたい気持ちとなっていた為にそのまま進んで川から出た。


「よかった。何も起きない」


 周囲に目を配り終えると同時に安全な場所に到着できたセリニは一息付いた。


「けど……念の為に」


 しかしここがフィールドである事には変わりない為にいきなりモンスターに襲われる事を避けたかったセリニは少し歩を進める。

 川岸に隣接するのは数多の木と草で覆われた森林であった。


「向こう側とそこまで……」


 一目見ただけでは町の近くの森林とさして変わらない光景だと思ったセリニであったが……


「甘い香り?」


 甘味を想像させる香りが微かにする。


「どうして?」


 周囲に甘みと関連付ける物がない為にセリニは困惑する。


「興味ある……」


 それは食欲をそそる香りであり、甘い物が好きな為にセリニは好奇心を抱いた。


「……後で探そう」


 しかし今は色々と状況の確認を優先する事にしたセリニは頭の片隅に置いた後に周囲を見渡した。


「あの枝なら……乗れる」


 太い枝を伸ばした木を見つけたセリニは近寄ると跳躍して枝の上に乗った。


「ここなら」


 先に大樹から落とされたセリニであったがそれでも地上に立ったままでいるよりは安全だと判断していた。


「それにしても……」


 枝の上に座ったセリニは疑問の色を込めた声を出した。

 疑問の対象は――自分自身である。


 ――けっこう水中にいた筈だけど……

 目の先には広大な川が流れている。それを自身は泳いで渡りきった。その事実を俯瞰する様に見たセリニは疑念を感じる。


 ――全然疲れない……ゲームだからかな?

 現在の場所は現実ではなくVRMMOの空間である為に現実と同じ様に考えるのは間違っているかもしれない。


 ――でも……VRMMOでも確か……。

 だがVR空間内だろうとも長時間動き続けると現実と同様に疲れが溜まり、休む事で疲れが取れて、更に眠る事さえ可能である。

 そんな現実の感覚がそのまま反映されている事をNEW WORLD2の取扱説明書を読んで知っていた為に違和感を感じていたが詳細を思い返したセリニは気になった部分を呟いた。


「個人差……個人で感覚が違うだっけ」


 現実世界で人によって体力に差があるのと同様にVR空間内でも個人によって体力には差が生じる。それはゲーム空間内でありながらもゲームのステータスの様に自在に減らしたり、増やしたりするのは不可能。

 VR空間に慣れる事や効率がいい動きをする事にVR空間での体力の底上げができる……その様な趣旨が書かれていた。


「隠しステータスみたいなものだね」


 現実と直結している事であると知りながらもあくまでゲーム空間でのみ関わる要素である為にゲーム感覚としてセリニは捉える。


「VR適性……」


 VRゲームに関わる要素を考えていた為にセリニはVR適正の事を思い返した。


「とは違うんだよね」


 しかしVR神経が関わっているのは共通しているがVR適性は神経の数によってランクが決まるが体力等の要素は神経の形や一本一本の質によって変わる為に別物である。


「ゲームで例えるなら……VR適正はソフトの数……VR神経の質はゲーム内容の質……なのかな?」


 困惑してきて例え話でVR神経に関わる事を整頓しようと思ったセリニであったが……


「却って分からなくなってきた」


 自身の例え話が無理矢理すぎるために逆に混乱してしまった。


 ――なんか……面倒くさいね。

 考えると考えるだけややこしさを感じてきたセリニは軽く息を吐いた。


「細かい事は気にしない方がよさそう」


 そしてVR世界にいる自身の事を深掘りしなくてもゲームは楽しく遊べると思ったセリニは疲れを感じない事を良い方向として考える事にした。


「体力があるなら途中で休む必要がない……」


 ある意味当然の事をパネルを出現させながら嬉しそうに語るセリニであったが気を紛らわす為に口にした訳ではなく、嬉しさにはちゃんとした理由がある。


「つまり……スキルを早く習得できるって事だね」


 パネルはプレイヤーの能力を表示していた。

 そしてその中には【水中適応・移動LV1】【水中適応・潜水LV1】と二つのスキルが追加されている。

 それを改める様に確認したセリニはその時の事を思い返す。


「あの時はびっくりした」


 川を泳いで渡りきったセリニだが川幅が広さを見ていた事から色々できると思った為に単純に泳ぎ続けるだけに留まず、水中に潜って進んでいた。

 そしてその最中にスキルを習得したと表示されて知る事となる。

 しかしその知らせを受けたタイミングが潜水の最中であった。完全に予想外な出来事であった為にセリニは水の中で途轍もなく驚く事となった。


「溺れるかと思った」


 その結果水中で思いっきり口を開けたセリニは身体の中に大量の水が入ると恐怖したがそんな事は一切起こらなかった。


「水中でも喋れるなんて」


 そして反射的に声を出した事により、水中でも話したり地上と同様に息する事が可能であると気づいた。


「スキルを習得したおかげだね」


 水中で声を出せる事が面白いと思ったセリニは楽しそうにしながら自身が習得したスキルの効果を見る事にした。

 習得した時に確認できるが慌てていた為に見る前にパネルを消してしまっていた為である。


「水中適応・移動は水中にいる時の移動速度が上がって」


 予想通りのスキルの為に特に言う事もなく。二つ目のスキルの効果を見る。


「水中適応・潜水は……水中での行動可能……時間が長くなる」


 確認を終えると同時にセリニは驚く事となった。


「潜り続ける事……無理なんだ」


 水中で息や喋る事が可能である為に水中での行動に時間制限がないとセリニは勝手に思い込んでいた。


「ならあれは……回復する為のもの?」


 無限に水中に潜り続ける事ができない事を知ったと同時にセリニは潜っている時に見かけた水中に漂う気球が脳裏を過ぎる。


「……今度潜った時に調べよう」


 後々の楽しみが増えた喜びが声に乗ったセリニはそのまま言葉を繋げる。


「泳いだだけでスキルを手に入る」


「ジョブとかクラスがないゲームだとこんな事ができるんだね」


 ツインファンタジーワールドには戦闘に関わる職の要素は存在しない。

 数多のスキルが用意されており、それらを条件を満たす事で習得する事でプレイヤーの個性を生み出していくゲームである。

 それをゲームを開始する前から知っているセリニだがふっとある事を思い出した。


 ――なんで裏に書いていたんだろう?

 ――それに注意……そんな文字も書いてた……。

 ――VRゲームではクラスとかジョブがあるのが当たり前だから?


 その仕様はツインファンタジーワールドのゲームパッケージ裏側に書き記されている。

 軽い気持ちで見たセリニが即時に気づける程に目立つ色で塗られた文字であった為に強い印象を抱いていた。


 ――別にいいかな。

 しかし印象だけでありツインファンタジーワールドを純粋に楽しんでいる時に気にする事でないと思ったセリニの頭からその疑問は剥がれ落ちる。


「どんなスキルを習得できるかな……」


【水中適応・移動】の習得条件は水中を泳ぎ続ける、そして【水中適応・潜水】の習得条件は水中を潜り続ける。

 それらが条件である事がスキルの説明文で説明されていた為に次に習得するスキルの事を考えていたセリニに高揚感が積もる。

 

「これからどうしよ……」


 いつまでもこの場に留まるつもりはないセリニは先まで自分が滞在していた向こう岸に視線を向ける。


「イベントは終わったかな?」


「希少な素材を持つフィールドの奥地に生息するモンスターが出現する……だっけ」


 先に沢山のプレイヤーが同じ場所でモンスターを討伐していた状況に疑問を感じていたセリニは習得したスキルを調べた後に何か起きているかもしれないと運営からの知らせを確認している。

 すると特定の地点でイベントが発生していてその地点が自身が町を出た後に向かった場所であると知る事となった。

 その事を思い返すと溜息を吐いた。


 ――イベントが起こるのは別にいいけど。

 ――強い敵と戦うのは好きだから……

 人見知りである為に現実での予想外の出来事は心底勘弁してほしいと思うセリニであるが――ゲーム内であるなら唐突なイベントは自身に悪影響を及ぼす事が皆無で大抵の場合は新しい楽しさに繋がっている為に歓迎であり、想定外の強敵と戦う事も僥倖ぎょうこうとして雀躍じゃくやくしながら向かい打つ気概を持ち合わせている。

 故に唐突なイベントに巻き込まれた事は驚きこそあったが別段気にしていないが……


 ――高レベルモンスターも出るんだよね?

 ――初めてゲームを開始する町の近くでやらない方が。

 しかしゲームを開始したばかりの身である為に考える限りの戦闘方法が弓矢による攻撃だけであった。そしてレベルも上がっていない。

 敢えてそんな状態で強敵に挑み続ける遊び方をしている人の動画を見た事があるセリニだが初めてのオンラインゲームでもある為に経験値をしっかり稼いで十全にアイテムやスキル等を準備してから先に進みたいと思っていた為に強敵を歓迎する気持ちではなかった、その為に多少の不満が心に現れる。


「戦う事は避けられたからいいけど」


 だが自身は高レベルモンスターと交戦せずに済んでいる為に不満は自然と消滅する。


「……他の人はどうなったんだろう」


 フィールドで多数のプレイヤーを見かけた為になんとなしに気になったセリニ。


「一掃してたから問題なさそう」


 イベントが起きていた時に目にしたのは現れたモンスター達がプレイヤー達によって倒され尽くされる光景であった、故にイベントは滞りなく終わったと判断していた――だがそれは間違いであった。

 確かにセリニが目にしたのはプレイヤーがモンスターを圧倒している光景であった。

 しかしその光景は切り取られた景色の一部を切り取って見ていたに過ぎない。

 他の場所にも高レベルモンスターのモンスターが出現しており、貴重な素材を求めて我先にとプレイヤー達が押し寄せていた。

 そして現れたモンスターを悉く倒す彼女が目にした光景を生み出すプレイヤー達も確かにいる。

 だが逆にモンスター側が圧倒されているプレイヤー達も存在している。そしてプレイヤーが悉く倒されてモンスターだけとなった場所にゲームを開始したばかりのプレイヤーが何も知らずに踏み入れて一撃で倒されて町に戻される。そんな光景が展開される事になった。

 最終的には圧倒したプレイヤー達が残ったモンスターを全滅させた事でイベントは終わる事となる。

 だがゲームを開始地点の近くで起きた為に初めて日の浅いプレイヤーの大半が意図せず巻き込まれて町に戻される破目となった。

 ツインファンタジーワールドではプレイヤーが倒された時に起きるデスペナルティはクエスト途中であった場合、町を出る前の状態に戻されるだけであり、事実上は無いも同然であった。

 しかしそれでもプレイヤーの心境は理不尽な初見殺しを受けたも同然であり苦情が多数発生する事となる。返答として運営は今後強力なモンスターが現れるイベントが発生するフィールドは町からある程度離れた地点に限定すると答えている。


「次に起きる時……参加できるかな」


 自身が知らない場所で騒ぎが起きていると微塵も感じていないセリニはイベントの事を尻目にパネルを開いた。


「イベントも起きていない」


 先に通った場所で何も発生していない事をセリニは確認する。


「フィールドボスも無し……」


 と、セリニは安心した声色で唐突な事を口にする。

 フィールドボスとは文字通り、フィールドのボスであり一定の条件を満たすと出現する。そして少し前に出現していた。その事は川の中にいた時にフィールドの地図を確認すると書かれていた。


「きっとあのモンスターがフィールドボス――フォルティス・ルプスだよね」


 把握したセリニの脳裏に姿を見せるのは対峙した巨大な狼であった。

 イベントの事を知った際はイベントのボスの様な存在なのかと思ったが、沢山のモンスターが出現する前から姿を見せていた為にフィールドボスだと判断した。


「倒すと装備やその素材……スキルが手に入る……」


 討伐した時の報酬を口にしたセリニの声風には後悔が含まれている。


「逃げずに戦えばよかった……」


 大型の狼の周りには通常の狼もいて一対多数な状況で勝ち目がない、そう判断していたセリニであるが自身の武器は弓矢である。

 付かず離れずな距離で戦えば相手の数等関係なく、相手の攻撃全てを避ける事ができれば勝つ事が可能。

 そう思えてきたが……


「あ……」


 ある人物の事を思い出した為にそれは不可能だったと気づいた。


「馬に乗っている人と……弓を撃った人が来てたんだ」


 対峙した大型の狼は少し経って現れた他のプレイヤー達と戦っている。

 しかし今いる場所は多数のプレイヤーが集まるオンラインゲームの世界である。

 その事はセリニは理解しており、いきなり出会った他のプレイヤーと会話は不可能であるが共闘は何とかしようと思っていた為に自身が戦っている時に現れたとしても援軍として好意的に受け止めようと考えている。


「なら……戦わないで正解だね」


 されども今回は駄目であった――その理由はセリニ自身にある。


「わたしが足手まといになる」


 楽しくゲームをプレイできればそれでいいとセリニは思っている。しかしだからと他のプレイヤーに迷惑をかけるつもりはない。

 故にレベルが1で一度もモンスターと戦っていない。そんな自身が知らないプレイヤーと一緒に戦えないのは火を見るより明らかだと弁えている。


「戦える様にならないと」


 フィールドボスがどんな条件で現れるか解らない以上、何時でも強敵と戦闘できる様になりたいと思い始めたセリニは強くなる事を自身に対して誓った。


「まずはレベル上げだね」


 その為にステータスを上げる事を先決したセリニはパネルを出現させるとマップを表示する。


「とりあえず町に戻ろうかな……」


 マップ上の町に触れると転移するかどうかの選択肢が出現する。

 ツインファンタジーワールドではこの操作によってどれだけの距離があろうとも町に戻る事が出来る。しかしクエスト途中で使用した場合は特定のタイミングまでクエストの状態が戻される。


「レベル1のわたしが倒せるモンスターがいなそうだし……」


 今いる場所は町から離れており、その様な場所に出現するモンスターはレベルが高い、それなりのゲーム経験から推測したセリニはここでのレベル上げは難しいと判断していた。


「町の近くの虫や地を歩く鳥モンスターでも……」

 

 町に出た直後に他のプレイヤーと戦っていたモンスターの事を考えながらセリニがパネルに触れようとしたその刹那――


「楽しめたわね!」


 一言届くだけで上機嫌だと解る女性の声が突如セリニの身体を通り過ぎる。


「!」


 予想外のタイミングで届いた事もあり、身体を硬直させるセリニだが聞こえた言葉の種類から自身には無縁な会話である事に気づけた為に動揺は最低限に治まる。

 そしてそんな彼女に気づく素振りもなく言葉の波は繋がる。


「そうだな」

 

 女性の声とは対照的な淡白な男性の声、しかしそれを聞いたセリニは楽しそうな様子だと感じた。

 

「イベントで人が集中しているおかげね」


「おかげで効率よくレベルも上がった……他のプレイヤーがいないおかげだな」


「それもあるけーど……あたしのおかげでしょ?」


「無論そうだ、君が引き寄せてくれたおかげで魔法を放ち続けられた」


「嬉しい!」


 心の底から嬉しそうな声を出した鎧を纏った女性と魔法使いの様なローブを纏った男性は森林を抜けて川岸まで歩むとそのまま下流に沿う様に歩を向ける。


「……」


 姿を隠したままその流れで見送る事になったセリニは二人が見えなくなってから十秒経過した後に地面に着地する。

それから程なく木にもたれかかった。


「聞いてて……恥ずかしかった」


 頬を赤く染めながら羞恥が染み出た声を出したセリニの頭は先の二人組の会話で埋め尽くされていた。


「邪魔にならなくて良かった……」


 結果的に盗み聞きする事になってしまったセリニである。しかし罪悪感を感じたがそれよりも先に二人の会話を遮る事をせずに済んだと安心間を抱いていた。そう思えるほどに仲睦なかむまじいと思えた為である。


 ――耐性……できてた。

 ――爽陽ちゃんのおかげだね。

 そして心のうちにて唯一の友達に感謝する。


 ――おすすめされた恋愛……乙女ゲームをしてなかったら……木から落ちていた。

 元々セリニがしていたゲームはRPG。アクション。対戦と戦闘するものが殆どであり、育成ゲームもした事があるがそれも対戦に直結するものであった。

 だが爽陽と友達になって初めてゲームの話となった時にその事を話すと、他のジャンルのゲームをやってみる事を進められた。その中で試しにと借りたのが乙女ゲームであった。


 ――けど……思い出すと……今でも恥ずかしい。

 そしてプレイした結果、コントローラーの操作を一時的に幾度も放置してしまう程の羞恥心を感じる事となる。

 しかし全キャラの攻略は完了しており、そのおかげか他のゲームをした際に恋愛関係の場面が現れた際、会話を飛ばす事なく見る事が出来る様になった事もあり、今回の盗み聞きでの動揺が最小限に抑えられたとセリニは思う。


「あの人達……きっと恋人関係だよね」


 落ち着きを取り戻すと同時に二人組の関係をセリニは推測する。


「恋人……彼氏とかわたしにできるかな……」


 陰キャで人見知りでネガティブな感情に支配されている事を自覚しているセリニであるが年頃の少女としてその様な関係には少なからず興味があった。


「無理だよね……わたしなんかに」


 しかし高校一年生になって初めて友達が出来た自分には無縁――セリニはその様なマイナスに傾く答えに即座に辿り着いてしまった。


「ゲームだし……そもそも関係ない」


 だがゲーム中であると思うと、どうしてその様な事を考えてしまったのかと疑問が生じると同時にセリニの内に現れたマイナスの気持ちは消失する。

 

「あの二人はなんか……」


 二人組の会話に気になった点がある事を思い出したセリニはそれが何なのか記憶から掘り返し始める。


「!!」


 それは恋人関係の会話を思い出すに等しい為に再び動揺して熱を感じて身体を揺らすことなったセリニだが必要な事を掘り出すと脳裏に再び現れた場面を削ぐ為に即時に言葉にする。


「レベルが上がって……他のプレイヤーもいない」


 それはレベルを上げたい。そして他のプレイヤーに見られる事に慣れていない自分自身にとって有益な情報であった。


「無茶かもしれないけど……ゲームなんだから……行ってみようかな」


 自身で直接見た訳でないが近場であるなら向かってみる価値があると思えたセリニは木から離れると身体を未知の森林に向ける。


「誰もいないなら長距離からの狙撃の練習もできそう」


 脳裏を過ぎるは遠距離から放たれた矢が大型の狼に直撃した光景であった。


「あんな風に当てたい……」


 初めて見た矢が見知らぬプレイヤーによる狙撃である。憧れに近い感情を抱いて自身も似たような事をしたいと決心したセリニは歩み始める。


「――当てられるかな」


 しかしここまで一度も矢を放った事がない為に口から一言の不安が漏れる。

 そして一時間後その不安は最悪な形で的中する事となる。されども的中した結果――遠距離から矢を当てる以上のものが得られるとはその時のセリニは想像さえしていなかった。

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