第42話 銀髪弓使いは二回から
「盟……約?」
目の前の女性が自身の疑問に答えてくれたことは把握したセリニであった。
だが出てきた言葉がゲーム用語としてどの様な役割が当てられたものなのか想像できない為に困惑が表に現れた。
そんな少女に向けてアルーセは自ずと口を開いた。
「盟約なんて重く言っているけど、フレンドみたいなものよ、プレイヤーの間では専属なんて呼び方もあるわ」
「フレンド……ですか」
それならセリニは既に友達である爽陽からどういったゲーム要素なのか言われていた故に納得できた。
「ミストフォロスに所属した人がギルドか創作機関に所属している人と結べるものよ」
「盟約を……結んだら変わるものがあるんですか?」
些細な疑問を口にしたセリニにアルーセは応じる。
「盟約を結んだミストフォロスに自身の依頼を直に送る事が可能になるわ」
「依頼を……受けられる」
――じゃあ……アルーセさんからのクエストばかりを受けることが出来るように……。
ミストフォロスがどのような依頼を受けるのか知らないために想像するしかないセリニであったがかつてのゲーム経験からある程度は想定できた。
その中には直に他のプレイヤーと顔を合わせるものが浮かび上がると同時に――冷や汗が身体を伝う。
――それなら。
色々と念頭するセリニであったがそれを余所としたアルーセの声が耳に届いた。
「他には互いの手数料が安くなるわ」
「手数料ですか」
「ええ、依頼をしたり依頼をする時にゴールドを払う必要があるのよ、それが半額になるわ」
「お得ですね」
アルーセの言葉にセリニは相槌を打つその傍ら。
――色々……教えてくれて。
――嬉しい……です。
自身にとって欲しいゲーム情報を次々と話してくれるアルーセ。
それは有意義であると同時に聞いてて楽しいものである為にセリニは心の中で底意から感謝していた。
されども――
――だけど……どうして?
今日出会ったばかりの自身に対して親切にしてくれる事に対してセリニは不思議に感じていた。
――わたしには……同じ事は……無理。
初対面の人に対してゲームの内容詳しく、そして機敏に話せるか――そんな事を問われたら、内気で人見知りである為に即座に不可能だと答えるセリニが初対面である自身に色々と話してくれるアルーセの思考を読む事は不可能であった。
――わたしが……もし仲間にしたいキャラを見つけたら。
しかしここはゲームの世界であり、アルーセも同じ感覚の筈だ。故にセリニはゲーム感覚で今の状況の思案を開始してみた。
――アルーセさんをプレイヤー。
――わたし自身は……仲間になるキャラクター。
そのような役を当て嵌めた後にプレイヤーが考える事を思案した。
すると冷静になって状況を俯瞰できる心持ちとなったセリニはその刹那に。
――もしかして。
アルーセが二回したある行動からセリニの脳裏に予感が浮上する。
――聞いてみようかな。
アルーセに自身の推測を話そうかと考え始めたセリニ。
――外れてたら……失礼だよね。
――そもそも……聞く事が失礼。
今日出会ったばかり言うべきではないと本来なら考えた事は即時に頭の片隅に閉じ込めておくべきだと思えたセリニ。
――けど……気になる。
されども身体と表裏一体な影の如き蟠りとなって心の内に浮き続けている事を自覚していた為にどうするべきかとセリニが思った矢先――アルーセの声が頭の中に響き渡る。
「他にも気になる事はあるかしら……無いなら――」
声の羅列の中身は質問があるのか――であった。
自身が思考して心の中で呟いた言葉と一致した事に気づいたその瞬間、アルーセに向けてセリニは食い気味な声風を紡いだ。
「あの……間違っていたら……本当にごめんなさい」
「?」
謝罪を前提とする唐突な言葉にアルーセは首を傾げている最中にセリニは自身の疑問を声として連ねる。
「アルーセさんがわたしがいる場所に二回も来たのは……その……馬車の事以外……盟約が目的ですか?」
目の前の女性が倒されそうになった場面を自身が無意識に救った話は既に聞いていた。
されども感謝されてその話が終わった後も目的を達成したアルーセはこの場にそれなりの時間留まり続けてミストフォロスの話を始めた。
何よりも目の前に現れたのは一度だけでない。そして盟約の話を始めた以上――それが狙いなのではとセリニは思ったのであった。
――言ってしまった。
――見当違い……だったらどうしよう。
だが脳裏で想像したそれを間違いないと証明を可能とする証拠に値するものが一切存在しない以上――考えた果ての予想が予想を上回る事は断じてない。
表に疑問を出した刹那にその誠に気づいたセリニは尾を引く事となり総身に後悔の感情が蝕み始めた。
「一度だけなら気にされないかもしれないけど『領域転移』を使って二回も来たら勘付かれるわね」
自身が放った言の葉から生じた心境に押しつぶされそうになっていたセリニを尻目にアルーセは軽快な色合いで語り始めた。




