第38話 銀髪弓使いは本題から
「話が逸れたわね」
と、アルーセは口にした。
「そ……そうですね」
相手の話に合わせているだけのセリニであったが何の話をしているかと問われると――答えるのが困難な状況であるとしか言えない為に控えめな色で同意の言葉を口にする。
「これからが本題よ」
「本題」
――どんな事を?
それなりにアルーセと言葉を交わしているが未だに自身に対して何を言いたいのか解らない状態が継続している。故に懐疑に思うセリニであるがとりあえず継続して話に耳を傾ける。
「セリニちゃんはミストフォルスに入る予定はある?」
「ミスト……フォルス」
本題と表して現れたのは数分前にも聞いた単語であった。
――いったい……何?
聞いた事がない単語であった為に当惑したセリニであった。
しかし数秒考えると――
――あれ……もしかして……。
聞き覚えこそ一切無いセリニであったがパソコンを通じて見た覚えがある事を思い返した。
――本当にそうか……分からないけど。
そして単語の意味を思い出したセリニは意を決すると声として表に出した。
「ミストフォルスは……傭兵の事ですか?」
するとアルーセは即座に反応した。
「ええ、わたし達プレイヤーの間での通称は傭兵よ」
自身の予想が当たった為にセリニは安心する。
「もしかして……ミストフォルスじゃなくて、傭兵としてなら聞いて知っていたりするの?」
しかしアルーセが口にしたのは見当違いな予想であった。
それを聞いて齟齬が現れた事を即座に察したセリニは慌てて言葉を並べる。
「あ……え……ち……違います! ミストフォルスの意味が傭兵である事を知っていただけです」
セリニが事前に把握していた事は本当であった。
――ゲームでの名前を探す……そのついでだったけど。
その理由は『セリニ』という自身のプレイヤーネームをパソコンを通じて探していた舞風月影が色々と調べる中で『ミストフォルス』なる単語が気になってその意味を確認した――それだけであった。
「そういう意味ね」
言葉を聞いたアルーセは頷いて納得する。
それを見て誤解が解けた事を安心したセリニは自身の疑問を口にする。
「ミストフォルスは……何なんですか?」
意味が傭兵な事は把握していたセリニであったがツインファンタジーワールドではどんな遊びが可能となるのか想像出来なかった。
「分かりやすく言うなら……やっぱり傭兵よ」
「そう……なるんですね」
――どう関わるのかな?
過去に遊んだゲームの中に傭兵を登場した事がある為に傭兵がツインファンタジーワールドの中にいる事に驚きはない。しかしオンラインゲームでプレイヤーが傭兵となった場合。どんな役割があるのか考えても思いつかなかったセリニは頭部に疑問符が出現した様な気持ちとなっている最中にアルーセは言葉を続ける。
「ええ、個人からの依頼を受注してこなす、シンプルなものよ」
「シ……シンプルですね」
アルーセが明かした内容は深く考える必要がない分かりやすいものであった。
聞いたセリニはあっさりと理解しながら興味心が現れる。
――緊張してるから……上手く考えが。
そして何故事前に察せなかったのか自己分析をしたセリニはふっと新たな疑問が浮かんだ。
「個人……NPCの事ですか?」
「それとも他の……人ですか?」
普通のゲームであったのなら依頼を送ってくる相手は一つしか考えられない。しかし今遊んでいるゲームはオンラインゲームである。
その状況を理解していた故に――セリニは二つ目の相手の事をアルーセに尋ねた。
「そうよ、普通のクエスト同様にNPCからの依頼もくる、そして他のプレイヤーの依頼も受注する事ができるわ」
――面白そう。
依頼を受けてこなす――その淡々としたローテーションをするゲームも好きであったセリニは目に見える形では表していないがミストフォルスに興味津々であった。
だがしかし――
――他の人とも……関わる。
――怖い人とか……いないよね。
アルーセが口にしたのは自分以外のプレイヤーが関わる事を示したものである為に自身が関わっていいものなのかとセリニは躊躇してしまう。
――聞けるだけ……聞こうかな。
だが強い興味がある事も間違いない為にその辺りをセリニはアルーセに尋ねた。
「その……他の人の依頼はどうやって受けるんですか?」
遠慮の色が入った声が場に響くとアルーセは気さくな様子で声を返した。
「大まかに三種類あるわ、依頼主と会って受ける。依頼主が提示版に提出して、それを介してミストフォロスが受ける。そして依頼主が傭兵に依頼を送るね」
――会わなくても依頼を受けられる。
ツインファンタジーワールドはオンラインゲームである為に他のプレイヤーと直に接触する事はある程度覚悟していたセリニであるがそれを避けられる選択があるなら躊躇なくそちらを選ぶ事にしていた。
「補足すると依頼主側からの依頼を受けるかどうかの選択は傭兵側にあるわ」
「選択……知らない人から突然依頼が来る事を出来なくする事ができる、そういう事ですか?」
「そういう事よ」
自身の推測を即時に肯定されたセリニ。
それが決定打となって――人知れずに密かに溜めていた感情をアルーセに向けて明るい色合いを伴い発露した
「わたしでよければ――ミストフォルスに入りたいです!」




