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第37話 銀髪弓使いは予定から

「今の話はとにかくとして」


 明るい口調で語るアルーセ。


 ――助かります。

 それを聞いたセリニは先までの話を殆どの理解が出来ない心境であった為に感謝をした――心の中にて。


「まず聞きたい事があるのよね」


「聞きたい……事ですか?」


 いきなりその様な事を言われたセリニは困惑の声色で言葉を返した。


「そうよ、今から話す事が重要なこと」


 ――重要……なら今迄話していた事は……雑談……。

 心の奥底でアルーセの言葉をその様に解釈をしたセリニ。

 

 ――筑波つくばさ……爽陽さやちゃん以外とした事ない。

 家族以外と長い話をした事は初めての友達である筑波爽陽を除くと経験した事がないセリニはちょっとした感慨を抱く。

 目の前の少女がそんな事を考えていると思ってもいないアルーセは自らが話したい事を紡ぎ始めた。


「わたしの聞きたい事にはある前提があるのよ」


「?」


 唐突にそう言われたセリニは頭の上に疑問符が現れた。


「まずそれを聞くけど」


「なん……ですか?」


 アルーセが何を言いたいのか解せないセリニであったが一先ず話を聞く事にした。


「まだ実装はされていないけど、ギルドに入る予定はある?」


 アルーセが話したのはこの場に欠片たりとも関わりがないゲームの要素が関わる内容であった。


「ギルド……」


 今の状況とは関係ない事が耳に入ったセリニは多少の不意を突かれたが動揺せずに考え込んだ。


 ――爽陽さやちゃんは何も言っていないよね。

 ツインファンタジーワールドにはギルドが後に実装される。その話を筑波爽陽がしていた事をセリニは覚えており、オンラインゲームでのギルドがどの様なものなのかは大凡おおよそ話していた。

 しかし話した当の本人は「あたしは今回はパスよ」とギルドに興味なさそうな印象であった。


 ――わたしは……どうしよう。

 オンラインゲームならではの要素である故に興味が湧いていた――だが同時に見知らぬ人と出会う機会が増えると考えてしまい。二つの感情が相克している事を自覚しながらもとりあえずセリニはアルーセの問いに答える事にした。


「予定は……ありません」


 少し考えたセリニであったが聞かれる前の心境をそのまま口にする事にした。

 

「そうなのね」


 その言葉に反応したアルーセであったが軽い笑みを浮かべており、どこか喜んでいる様に見えた。


 ――なんだろう?

 その様子を不思議に思えたセリニは何かあると考えた。

 するとアルーセが次に言いそうな事が脳裏を過る。

 

 ――わたしを今度実装されるギルドに……誘おうとしている?

 アルーセとは今先に出会ったばかりである。それなのにギルドに関わる事を向ける。

 その様な事を口にする理由はおのずと限られとセリニは思えた。


 ――どうしよう……どうしよう。

 いきなりギルドに誘われるとは一切合切考えていない故に困惑が全身を駆け巡る心境となっていた――そんな最中にアルーセの声がセリニの耳に届いた。


「ならミストフォロスに入るのかしら?」

 

「――え」


 されども聞こえたのは全く想定していない言葉であった。


「それともわたしと同じで創作機関そうさくきかん?」


 続けざまにアルーセが言い放ったのはやはり知らない単語が含まれた言葉である。


「あ……あの」


 相手が何を言いたいのか一切理解できないセリニは周囲が暗雲で包み込まれるような気持ちとなってしまう。

 そんな彼女の状態を見たアルーセは何かに気づいた表情を見せると改める様子で口を開いた。


「もしかして、ミストフォルスと創作機関の事を知らないのかしら?」


「は……はい……」


「ギルドと違って他のゲームでは見ない要素だから()()()()()()ならそれはそうよね」


 納得した様子を見せるアルーセ。

 対してセリニは耳に届いて気になったある部分について思わず言及した。


「始めたばかりなの……分かる人には分かるんですね」


 自身が一言も口にしていない事を言い当てられたセリニであったが動揺は全くない。


 ――アーチャーさんにも言い当てられた。

 ツインファンタジーワールドで最初に会話したプレイヤーから同じ様な事を既に言われていた為であった。


「そうよ。セリニちゃんの場合は始まりの狩人セットを装備しているから、推測できたわ」

 

 ――アーチャーさんも……同じ事を。

 当てられた理由も同一だったとセリニが思う最中にアルーセは言葉を紡ぎ続ける。


「髪飾りは新しいみたいだけどね」


「!」


 軽い調子でドロップアイテムを装備している事を指摘されたセリニは全身を震わす。


「え……えーと……これは」


 他人から身に付けている装飾品の事を指摘された経験が現実でもゲームでも今迄なかったセリニはどう言葉を返せばいいのか判らずにひたすらに当惑する。


「似合っているんだから、恥ずかしがらなくても大丈夫よ」


 そんなセリニは言葉を向けるアルーセ。


「――」


 向けられた言葉の意味を理解したセリニは一瞬言葉を詰まらせる。


「あ……ありがとうございます」


 しかし褒められているだけだと気づいたセリニはとりあえず礼を言った。


「町に戻ったら注目されるわね」


 その様な事をアルーセは前振りも無しに言い放った。

 

 ――どうして?

 耳朶を通じて身体の奥底までアルーセの言葉が届いた。しかし思考を回してもそうじて理解できなかったセリニの内には疑問が一滴となって零れ落ちる。


 ――聞くのは……アルーセさんに悪いよね。

 抱いたそれを外に出す事を考えていたが聞こえた言葉の色はとても明るいものであった。

 それに対して否定の言葉を向けることが出来なかったセリニは抱いたその疑問は胸間きょうかんに仕舞い込んだ。


「どうなるんで……しょうね」


 咄嗟に口にしたのは何も込めていない空っぽな言葉の羅列――それをアルーセに向けたのは紛れもない事実だ。


 ――ごめんなさい。

 アルーセにその言葉を向けた事に罪悪感を抱いたセリニは――心の中で謝罪した。

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