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第34話 銀髪弓使いは確認から

「その……初対面ですよね……わたしと……アルーセさんは……」


 少し前に似たような事を口にしたと思いながらもセリニは自身に話しかけてきた女性に対して再三感じていた疑問を続けて向ける。


「あの……それなのにわたしの事を……知ってるのはどうしてです?」


「疑問を抱くのは当然よね」


 セリニが感じていた事は当然の結論としたアルーセはそのまま言葉を続ける。


「分かりやすく言ってしまうと、わたしがあなたが戦う姿を見かけたからよ」


「わたしの……戦い……を……」


 成り行きを省いて言われた事で驚きそうになったセリニであったが今遊んでいるゲームはオンラインゲームである為に誰かに見られている可能性に気づいた事で感情を表に露わにならなかった。


 ――ですけど……いつの時?

 しかし見られたタイミングがいつなのか即座に浮かばない為にセリニは困惑する。

 その疑問に回答する様にアルーセの声が届いた。


「二十匹くらいのゴブリン集団に襲撃された時よ、あなたにも覚えがあるわよね?」


 知らない者が聞けば唐突な事であった――されどもセリニにとっては唐突ではなかった


「ゴブリン集団……」


 この場に再び足を踏み入れる前の時間軸にてセリニは集団と表するに値するモンスター達と戦っていた。


「あの時の……」


 その瞬間の事を指摘されたセリニはその時の出来事を回視する。


    ※      ※      ※


 強烈な威圧感を感じたセリニは既に発動していた偽り黒羽(いつわりこくば)を使用して広場からの早期離脱に成功していた。

 そのまま木に着地した後にする事は既に決めている。

 経験値を稼いでレベルを上げ、そして手に入れたスキル【暗影あんえいへの序開じょかい】を試す事であった。

 その為には当然モンスターを探す必要があり、幸先よく杖を持つゴブリンを見つけたセリニは不意打ちで戦い幾度も放った蹴りによって容易く倒す事に成功する。

 だがその周囲に十体を超える数のゴブリンが展開されており、大きな音を上げて倒した事もあって全員に気づかれてしまった。

 普通に考えると不相応で危険な状況であり、即座にその場から離脱する事が推奨される状況である――しかし目に見えるモンスターが既に倒した事がある見た目のゴブリンばかりであった事を把握すると勝機は十全にあると感じれた。

 そして一人で複数の敵との戦いを楽しみたいと自身の欲求を優先したセリニは逃げずに戦う事にした。

 そして戦いは始まり――途中で新たなゴブリンが現れる混沌とした状況に悦と共に受け入れながら倒し尽くして、その後も戦闘に明け暮れてたその果てに離脱した筈の広場に戻ってくる事になった。


    ※      ※      ※

  

 ――戦いの事ばかりを考えていたから。

 ――周りを全然見てなかった。

 ゴブリン集団を相手にしていた時の心境を思い返すと別のプレイヤーから見られている事に気づかなかった事は当然だとセリニは一人納得する。


 ――今だけじゃなくて……後でも同じ事が起きそう。

 プレイしてから一日も経っていないのにも関わらずに他のプレイヤーに見られてしまった事実を受け止めたセリニだが同時に自身の心臓の音が大きくなっている事に気づいた。


 ――もっと他の人がいない事をしっかり確認して。

 動揺に呑まれそうになった為に今後の方針を考え始めたセリニだが。


 ――それは駄目……。

 その考えは即座に自身の内で棄却すると決めた。


 ――他の人を気にし過ぎて……わたしが……倒れたら……本末転倒だよね。

 耐久性を高めにするステータス方針であるのなら、周囲を確認している間に攻撃を受けても然したる問題ではないかもしれない。

 だがセリニはHPに振らずに攻撃を避ける。それを念頭に置いたステータスにしている為に一度でも攻撃を受けたら倒される危険性があった。

 なのに戦い以外に意識を向け続けるのは――正に愚の骨頂だ。


 ――どの道……対人戦もするつもりだったから。

 そもそも自身は最初から他のプレイヤーと戦う事を前提条件に弓を選んでいた。


 ――慣れないと駄目だね。

 初心を思い出した事でセリニの心は落ち着いた。

 

 ――それにいつも誰かに見られるわけないよね。

 ほとぼりが冷めた事で常に他のプレイヤーの視線がある。それを当然と考えている自分自身に気づいたセリニは恥ずかしさを感じた。

 そんな最中に――


「ゴブリン集団の事は思い出したかしら」


 アルーセの声が頭の中に届くとセリニは反射する様に返事をした。


「あ……はい! ですけど……アルーセさんがいた事は確認もしていなかったし、知らなかったです」


 ゴブリン達との戦いに集中していた事もあって他の人を全く認識していなかったセリニは正直に話した。

 

「やっぱりね」


 するとアルーセは予想の範囲内であった様子を見せる。


「わたしが見たのは馬車で逃げている時でほんの数秒だったわ」


「馬車?」


 この場に影も形もない存在を言及されたセリニは何処かに隠れているのかと周囲に目を向ける。

 だがやはり相も変わらず影も形もなかった。

 そんな様子を見ていたアルーセは微笑みながら今の状況に関して紡ぎ始める。


「今は必要ないから町にあるわ」


「そう……ですか」


 どの様な時に必要なのかと刹那だけ頭に浮かんだセリニであったがそれよりも聞きたい事があった。


「その……アルーセさんは……何でここに……二回も来たんですか?」


 今も目の前にいる唐突に現れたプレイヤーであるアルーセ。しかし彼女はゴブリンの魔法を受けた事によるダメージで一度はこの場から消失した。

 HPが0になった為に町に戻った事までは想像できる。

 されども如何いかなる手段を使ったか不明ながらもこの場に舞い戻ってきた。

 その理由は想像の範囲を超えていた為にセリニはその事がとても気になっていた。


 その点を指摘されたアルーセは少しの合間を挟んだ後に銀髪の少女の疑問に答えた。


「二つあって。一つはセリニちゃんと話したかった――もう一つは助けてもらったからお礼を言いたかったからよ」


 笑みを浮かべながら自身の事訳ことわけを告げたアルーセ。


「――え」


 真っ直ぐな色味が乗せられた言葉が届いたセリニであったが想定さえしていない内容だった。

 それ故に――困惑の感覚がより深化しんかする事となってしまった。

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