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第30話 銀髪弓使いの幕間 その15

 何とも言えない感覚が通り過ぎた事を感じったヴェルフであったがちょっとした気になる箇所があった。


「しかし最初のゲームでラストでオリジンとは――最後が付けられたタイトルはゲームでは定番な事かもしれないけど」


 遊んだ事があるゲームのタイトルを表面に出さずに脳裏に留めていたヴェルフにエクストが口を挟んだ。


「ラストオリジンがタイトルとなっているのはストーリーの内容とゲームの生みの親が関わっている」


「そうなのかい」


 驚いたヴェルフはどんな意味なのかと考えようと思ったがエクストがそのまま語り続ける。


「後にラストオリジン・ファンタジーワールドとなるゲームの前にも様々なゲームを作成した様ですか、その全てが同じものをコピーしたものと言われたそうです。その開発者は最後のオリジナル作品を作る。その様な意気込みが含まれて開発したゲームが認められた。最後のその思いが込められた故にラストオリジン・ファンタジーワールドがタイトル名となった」


「最後の作品のつもりで作った、だからラストと」


 納得できる話であったと思えたヴェルフであったが、それを理由としてある疑問が生じる。


「なら二作目であるツインファンタジーワールドはどうしてラストオリジンを外したんだ?」


 それ程の覚悟で臨んだ結果が報われた部分を取り外せた事に違和感を抱いたヴェルフ。


 ――ラストオリジン・ツインファンタジーワールドは長すぎるだろう。

 ――けどそれでも残すべきと思うぜ。

 その部分が追加されたタイトル名を想像していたヴェルフに向けてエクストが答える。


「二作目と言いましたが、正式な意味では二作目ではないからと推測されている」


「どういう事だい?」


 そこら辺の事情に詳しくないヴェルフはエクストが何を言いたいのか分からない為に話の続きを聞いた。


「少々、ラストオリジン・ファンタジーワールドとツインファンタジーワールドのネタバレを口にしますがよろしいですか?」


 エクストからいきなりそう言われたヴェルフは数秒考えた後に答えた。


「別にいいぜ」


 少々と口にした以上、過剰なネタバレな事を口にしないだろうと予想したヴェルフにエクストは語り始める。


「まずラストオリジン・ファンタジーワールドには二種類のモードがあるのは知っていますか?」


 質問されたヴェルフはラストオリジン・ファンタジーワールドの事を詳しく知らない為に言葉として現れそうになったが――学校で聞いたあるモードの事を思い返すと、その言葉を一度飲んだ後に別の言葉を表した。


「もしかして、オフラインモードとオンラインモードかい?」


 その言葉に少し驚いた仕草を見せながらサングラスに触れたエクスト。


「知っていましたか、しかし物語としての意味は知らないでしょう」


 エクストの言葉は正しく、二つのモードがある以上に引き出せる情報をヴェルフは持っていない為に頷いて肯定する。


「詳しく説明する気はないので端的に言いましょう。ラストオリジン・ファンタジーワールドは幻想の世界を冒険する物語。そしてあるタイミングで気づくか、気づかないか。それをターニングポイントとして二つの物語に分岐する」


 そう説明されたヴェルフであったが聞こえた言葉がそのまま進んだだけでは進路が塞がれるような気持ちであった故に言葉を返した。


「つまり、幻想の世界を冒険するゲームなのかい」


「そうですが、開始した当初は主人公を含めた全ての人物が幻想ではなく。普通の世界と誤認している」


「そのタイプの物語か、そしてその事に気づくと」


 ストーリーの展開を想像するヴェルフにエクストが答える。


「故に世界の真実に気づいて物語は大きく動き出す、しかしそれはオフラインモードにおける話」


 その言葉を聞いたヴェルフは少し前にエクストが話した事が脳裏を過ぎる。


「もしかして気づかないパターンはオンラインモードに繋がるのかい?」


「正解です、オンラインモードは世界が主人公が幻想である事に気づく事がなかったまま進んだ世界線の物語。故にオンラインゲーム版のタイトルはアナザーファンタジーワールドです」


「アナザーか、成程な」


 その展開に領得できたヴェルフに向けてエクストはそのまま言葉を続ける。


「そして幻想の世界と気づかない()()()


 しかし聞こえた言葉に気になった点が現れたヴェルフは話に横やりを入れた。


「新たな……主人公は変わるのかい?」


「変わります、主人公だけなく、周りの人物も一新する。故に新たな展開が始まる」


 元より細かく聞く気はなかったヴェルフはエクトスの言を理解すると何かを喋る気はなく続けて流れる言葉に耳を傾ける。


「冒険者達は世界の果てに辿り着く、しかし気づくと今迄得たものも記憶も全て失った状態で見知らぬ街の立っていた、その世界こそツインファンタジーワールドの舞台……この世界は世界で独自の歴史を刻んでいますが……それはゲームの中の本を見て自身で調べてください。

 とは言え幻想の世界から更なる幻想の世界に続いている事になる。しかし何もかも失った状態なのでアナザーファンタジーワールドのデータを持っていても、そのデータは引き継げない。全プレイヤーが同じ土俵で始まる」


「だから説明もなく、その場に立っていたのか」


 チュートリアルを終えた後に特に説明もなく町に移動していた事を思い返しながらヴェルフは言うとそれに関わる事をエクストが話し始めた。


「ラストオリジン・ファンタジーワールドは他の登場人物からこれからするべき事を言われ、使命に目覚めていくことになりますがアナザーファンタジーワールドではその様な展開はない、冒険者として冒険する、それは今作も同様。故にツインファンタジーワールドは二作目でありますがラストオリジンではなく、アナザー側の続編と言えます」


「だからタイトルからラストオリジンが外れたか」


 かれこれ会話を重ねた事でおおよその意味をヴェルフは理解する。


「とはいえ、オンラインモードの続編が先に出たのにはシンプルな別の理由がありますよ」


「別の?」


「ラストオリジン・ファンタジーワールドの続編を希望する人も多いですが同様にアナザーファンタジーワールドの続編を希望するプレイヤー達が多かったから、分かりやすい理由ですよ」


 サングラスに触れながら語ったエクストにヴェルフは軽い笑みを浮かべる。


「それは――シンプルだね」


「しかし残念な事も同時に起きています」


「残念?」


 唐突にそんな事を口にしたエクストはそのまま続ける。


「ラストオリジン・ファンタジーワールドのオンラインのサービスが終了する」


「確かに残念だ」


 遊んでいたゲームがサービス終了した経験があるヴェルフはそれがどの様な意味をあるのか十全と理解する。


「同時にオフライン版も発売されますが、まあそれはいいでしょう」


 話を聞いて興味を抱いたヴェルフはプレイする気こそ起きなかったが何故終了する事になったか尋ねた。


「だけど何故終わる事になったんだい?」


「そこまで私は調べてません、とは言っても十中八九ツインファンタジーワールドが始まったからでしょう」


「ツインファンタジーが?」


「ええ、私はアナザーファンタジーワールドを遊んだ事はありませんが、ツインファンタジーワールドは全てを引き継いでいると言っているプレイヤーやそう書いている者がネットに多くいます。故にアナザーを遊ぶプレイヤーが減ったのでしょう」


 新しく、そして面白いゲームがあればそちらに移行する。その気持ちを了知したヴェルフは特に言う事はなかった。


「もしくは最初からその予定だったか」


 そうエクストが言うとヴェルフは意見を口にする。


「何か根拠があるのかい」


 一瞬、陰謀論かと考えたヴェルフだが何かあるのかとエクストに尋ねた。


「サービス終了する日の次の日がメガロスクエストが開始される」


「メガロスクエストか」


 ここでそのゲームイベントが絡むとは思わなかったヴェルフは多少の驚きを感じる。


「とはいえ、あくまで推測の域を出ませんからここまででしょう」


 話を終わらす事を宣言したエクストにヴェルフは異論を感じずに頷いて応じる。


「しかしNEW WORLD2インターネットの最初の場面をスキップする人がいるとは」


 いきなりエクストはその様な事を話し始める。


「別にいいだろう?」


 言われた事は事実だが悪影響は特にないヴェルフは淡々と

応じる。


「ええ、それを問題と感じません、しかし同時に理解できました」


「?」


 ヴェルフが疑問が生じる中で好き勝手に喋るエクスト。とりあえず聞き手はそのまま耳を傾ける。


「人によってLODCの扱いが三分されている事に」


 ――さっきも言ってた。

 ――ツインファンタジーでは聞き覚えがないな。

 意味が判らないアルファベットの並びを再び口にしたエクストに疑問を抱いたヴェルフ。


 ――何らかの確信があるんだろう、きっと。

 とは言ってもエクストが意味がない事を話すとは思えなかったヴェルフはLODCが何を現わしているのか聞こうとしたその瞬間――場の空気を砕く衝撃音が鳴り響いた。


「誰かが戦っていますね」


 音が聴こえた距離はそこまで近くない為に警戒する必要がないと判断したのか無感情に話すエクスト。しかし身体は衝撃音が聴こえた方向に向けている。その方向は町側であった。


「そうみたいだ」


 ヴェルフも衝撃音が鳴った方向に目を向けた刹那に木が倒れる音が響いた。


「中々派手な事をしている様ですね」


 エクストが言った事に同意するヴェルフであったが、同時に興味を抱くような声色だと気づくとある予想ができた。


「まだイベントは始まらない、なら見てみますか」


 ヴェルフが予想した言葉を口にしたエクストはそのまま言葉を紡ぐ。


「もしかしたら、貴方が遠見の眼で見たプレイヤーかもしれませんよ」


「そうなのかい?」


 その言葉は予想していなかった為に驚きとなって現れる。


「私達が話している間、この付近でレベル上げを続けている。ありえるかもしれませんよ、既に別の場所に移動している事も考えられますが」


「確かに」


 希望的観測を前提としている事は百も承知であったがエクストが話した通りの可能性も十分考えられると思ったヴェルフ。


「なら」


 よってヴェルフは早速動こうと衝撃音が鳴った方向に進もうとするが――それを阻む様にパネルが出現する。


「イベント開始ですか」


 ヴェルフと同様にパネルが出現していたエクストは記されている内容を口にする。


「行くか」


 からりとした声でヴェルフはイベントに参加する事を表明する。

 

「俺が探しているプレイヤーではないかもしれないからな」


 自身が動く事で起こる包含ほうがんは未だに捨てていないヴェルフであったがイベントが起こってしまった以上、そちらを優先する事にした。


「メガロスクエストで交差する可能性にかけるよ」


 多くのプレイヤーが参加するイベント。それに銀髪で紫色の服を纏う少女が参加するか分からないヴェルフであったがそれでも確信を得たかの様に断言する。


「ええ、そうなるでしょう」


 サングラスに触れながら肯定したエクストはパネルを操作。


「では名前付き同士で競争を開始しましょうか」


 放たれた淡々とした色合いはそのままに――エクストはパネルを操作した後にスキルの名を言い放つ。


「【領域転移・光耀集束こうようしゅうそく粒落りゅうらく】」


 言の葉が過ぎると瞬く間にエクストの身体は白き光に包まれる――同時に天に上る如くその場から霧散する。

 残されたヴェルフはその光景を見送る。


「領域転移・光耀集束こうようしゅうそくじゃなくてそっちか――最初からやる気あるな」 


 エクストがどの様な効果を発揮するスキルを使用したのか理解していたヴェルフは思考を向ける事なくパネルの操作をする。


「特別なスキルを持つと派手に移動できてうらやましいぜ」


 自身では不可能な事に対して軽口を向けたヴェルフ。


「俺も始めますか」


 転移したエクストを追う為に自身の移動手段である移動スキル名を口にする。


「【領域転移】」


 声が森林に届くと同時に魔法陣がヴェルフの真下に出現。それが集束して消え去ると同時に発動者の姿も消え去った。


 それはプレイヤーが広場から姿をいなくなった合図――故に漸く静寂な空間を満たす条件が整った筈であった。

 しかれどもそれは刹那の夢の様に霧散する――その狼煙は微かな風で揺れる短草が奏でる歌とは異なる。生ある者によって激しく揺らされる百草ひゃくそうによる合唱であった。

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