第29話 銀髪弓使いの幕間 その14
「成程――アカウントを増やせば手間こそ掛かるが二つのゲームの世界を好きに往来できる。貴方はそう考えたと」
エクストが答えた事がヴェルフが伝えたかった全てであった為に頷いて肯定する。
「従来のオンラインゲームであればその手は可能でしょう、しかしツインファンタジーワールド――それどころではない。次世代VRゲーム機NEW WORLD2のオンラインゲームではその手は絶対に不可能ですよ」
「絶対に――不可能」
そこまではっきりと言うエクストにヴェルフは何を根拠として? そんな疑問が現れた。
「ヴェルフも理解していると思いますよ」
「俺も」
そう言われたヴェルフだが内側に現れたのは引き続き疑問だけであった。それは顔に出たのかエクストは呆れた様子を見せる。
「そもそもどうして不可能なんだい」
ヴェルフはその事を不服に感じながら改めて問う。
「――最初の場面をスキップしたのですか?」
するとエクストは何かに納得した様子を見せ始めた。
「最初……スキップ?」
しかし何を起点にそんな事を言い出したのか理解できないヴェルフは疑問の声を放つとエクストは答えた。
「NEW WORLD2とのインターネットサーバーに初めて接続した時にイベントの様なものがありました」
またしても唐突な事をエクストが話した。しかし内容はヴェルフにも覚えがあり。唐突に暗くなった為にとても驚いていた。
「もしやヴェルフはその場面をスキップしたのですか」
言われたヴェルフはオンラインモードをさっさと始めたいとスキップしていた、故に「そうだけど」と返した。
だが誰にも話した事がない為にエクストから指摘されて正解を当てられた事を不思議に思った。
「成程、ならLODCの事も知らない、そしてNEW WORLD2のアカウントに関しても調べてないと」
エクストが淡々と述べたそれも正解であった。
――LODC?
同時に連なるアルファベットがヴェルフの脳裏に届いたが何を意味するか分からなかったが今はそれよりもアカウントの事が気になっていた為にスルーした。
NEW WORLD2のアカウントにログインが困難となった事は一度もない為に彼は一度もインターネットで検索した事がない。
過去の出来事を読み取る様に指摘するエクストに疑問を感じた最中に――連続して指摘された事で、不自然な点があった事に今更ながら気づいた。
「そういえば、アカウントのIDやパスワードを設定していないな」
口にしたそれらはインターネットと関わる際には重要なものである。しかしその情報をVRMMOを遊ぶ際に自身で決めた事や入力した覚えが一切なかった――その事が疑問として咲かせたヴェルフにエクトスは答えた。
「貴方が抱いた疑念は私も考えましたよ、故に軽く調べると答えは簡単に見つかりましたよ」
「どんな答えなんだい?」
指摘された事で興味を感じたヴェルフはエクストが何を言うか待つとすぐに現れる。
「サーバーで管理している様です」
「元からそういうものではないかい?」
インターネットゲームがどの様に管理されているか詳しく知らず、調べる気もないヴェルフだが、サーバーに関してそういった役割があると認識しており、呆れながら言葉を向ける。
「貴方の指摘も間違っていませんがNEW WORLD2では言葉通りと考えるのが分かりやすいでしょう」
「分かりやすい?」
「ええ、言ってしまうとNEW WORLD2のゲーム機本体にはプレイヤーのデータは一切入っていない、入っているのはゲームのデータだけですよ」
「なら俺達はどうやってここに来る」
初耳の情報であったが納得できると感じながらも疑問を口にするとヴェルフに対してエクストは答える。
「ゲーム機から放たれたプレイヤーの脳波をサーバーが感知して自動的にアカウントと接続、その脳波のプレイヤーのデータをゲーム機にインストール、アカウントを介して私達はここに招かれる」
「細かい工程はまだありますが、そこまでの説明は必要ないでしょう」
と、エクストから言われたヴェルフは指摘された事がそのまま当てはまる為に何も言わなかった。
しかし気づいた事がありそれを口にする。
「アカウントがサーバーからゲーム機の中に――ならどのゲーム機を使ってもアカウントは同じになるのかい?」
「そういう事です、私が今使っているVR機を他の人物が使用したとしても私のアカウントに繋がる事は決してない。故にパスワードもIDを設定する必要が無い」
「エクストのアカウントに繋がる事はありえないか」
NEW WORLD2で個人の情報の管理方法を初めて知ったヴェルフは大まかな内容を理解した。
それは詰まるところ――エクストがアカウントの話をする理由となった根本的な意味を把握したも同然であった。
「なら俺のアカウントを俺以外が触れる事は不可能、新しいアカウントを作成する事もできないか」
「そうですね、アカウントを消す事も可能ですが細かい手続きが必要。もう一度アカウントを作成した所で前のアカウントと後のアカウントを行き来するは不可能、故に変わる事は何もない」
「そしてその仕様がツインファンタジーワールドの二つの世界を行ったり来たりする事を不可能にするってわけか」
自身が口にした事に納得する様に頷いたヴェルフは周囲を見る。
「にしてもモンスターが現れないな」
フィールドであるのに敵と遭遇する事もなく、会話を続けられる状況に対する疑問をヴェルフが口にするとエクストが応じる。
「同じ道を進んでも日毎にモンスターとの遭遇率が異なる。どうやら前作からの仕様な様です、また戦闘が起きてるとそちらに引き寄せられるモンスターもいる」
「今日はこの場所はモンスターが通らない、近くで戦っているプレイヤーがいるって事か」
モンスターが出るフィールドで戦闘するのは当然の事だとヴェルフはその事に意識は向かわない、意識が向いたのはエクストが何気なく言葉に入れた単語であった。
「前作ってどんなゲームなんだい?」
詳しく知らないヴェルフの言葉にエクストは即時に返答する。
「タイトルはラストオリジン・ファンタジーワールド」
そのゲームをプレイした事がないヴェルフであったがその名は学校で聞いた覚えやインターネットでその名を見た覚えが確かにあった。
「VR専用ゲーム機が発表された初報のpvから場面が公開されていたゲームですよ、そして世界で初めて発売された最初のVR専用ゲームソフト、それがラストオリジン・ファンタジーワールド」
熱意が込められたエクストの声に乗せられた内容が伝わると自身が想像していた以上に重要な位置にあるゲームとヴェルフは認識した。
「正に全ての始まりとなったVRゲームか」
そしてヴェルフは率直に感慨深さを示す言葉を表に現した。




