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第27話 銀髪弓使いの幕間 その12

 何時の間にか付けられた自身の異名の由来がどんなのか気になっていたヴェルフの問いにエクストが応じた。


「由来は貴方がコロシアムでの試合がモルスとの戦いを除くと全てが敵対したプレイヤーの殲滅せんめつの結果で終わっている。そしてプレイヤーの中で最も戦輪せんりんを自在に操りし者と周囲から認識されている。

 故に殲輪せんりんの二つ名が付けられた。そう書かれていましたよ」


「そういった理由か」


 聞き終えたヴェルフはモルスとの試合以外は全滅で試合を終えている事を自覚していた。

 その為に意外としっくり来ると思い、異議や否定の感情が現れる事はなかった。


「けど戦輪使いは俺以外は見ないんだけどな」


 しかし自身の武器を他の人が使っている場面を一度も見た事がないヴェルフは全プレイヤーで一番うまく扱えると言われてもその自覚が生まれる事はなかった。


「私は何度か見ましたがそれは気にしなくていいでしょう、二つ名はあくまでプレイヤー側が付けた名なんですから」


 エクストは落ち着いた口調でそう言うとレイヴンが繋ぐ様に喋り出した。


「武器に関しては気にしなくていいと思いますよ、わたしの武器もわたし以外見かけた事は一度もないですから」


 レイヴンの話を聞いたヴェルフはある部位が過る。


「確かに翼は……」


 それはレイヴンがゴブリン達を葬り去った時に使用した一部分であったが……


「武器は別にあります……翼は武器でないです――わたしの相棒です」


 不機嫌で埋められた声で抗議すると呼応するが如くレイヴンの背中に黒き翼が出現。

 抗議の意を示す様にはためかせ――散った黒き羽が周囲を舞う。


「そうだよな。悪い」


 駄目な事を口にした事に気づいたヴェルフは即時に謝る。

 しかし同時に――


 ――ならさっきの戦いは武器さえ使用していない。

 得物を振る事なく三十のゴブリンを殲滅した事実をヴェルフは認識した。そのただ中――レイヴンのご機嫌な声が聞こえる。


「ですけどその誤解は嬉しいかもしれません!」


 そう言いながら背中の翼をパタパタと動かしていた。


「?」


 レイヴンの急激な感情の変化についていけないヴェルフは疑問符が頭の上に現れる心境となった。


「レイヴン――貴女のけい……」


 自身の世界に入っている様子にエクストは論する色で話しかけたその刹那――目の前にパネルが出現。

 他の二人の前に出現しており、意識がそちらに向いた。

 パネルに表示されているのはこれから始まるイベントに関してであった。


「イベントの地点が決まりましたか」


 突然発生した出来事に見えるが平坦な口調で状況を口にするエクスト。それを聞いたヴェルフとレイヴンも慌てた様子を見せないが三人がそう対応するのは当然であった。

 何故なら遠見の眼のバグと紫を纏ったプレイヤーの事を説明している時に届いた運営からの知らせの中にイベントが発生する事も含まれて事前に把握していた為である。


「ここに留まって正解でしたね」


 フィールドマップを見ながらレイヴンはこの場にいた理由を口にする。

 イベント情報を見た当初、町に戻る事を考えていた。しかしイベントに向けて事前に準備する事がなかった三人はフィールドでイベントまで待機する事を決めた。

 理由は町にいるよりもイベントが起きるエリアに近いフィールドで待機していれば他のプレイヤーよりも早く到着して有利な地点を確保できる、その可能性に賭けていたからであった。


「そうだな。ここの先のフィールドか」


 今三人がいる地点は町とそのイベントが起きるフィールドの中間点の位置である。

 詰まる所――町からよりも近い場所であった。


「わたしは()()転移できないんで先に行きますね」


 言葉の意味を汲み取れた二人は何も言わずにレイヴンを見送る事にした。


「今回は協力ではなく。奪い合いでいいんですよね?」


「そうですよ。今回のイベントは先のモンスター達よりレベルが低いのでそれがちょうどいい。私も前で戦いたいので」 


「確かにそうだろうな――今回はマノンちゃんとフォスちゃん参戦か」


 エクストの意見に同意しながらパネルにイベントに参加すると表明した知り合いのプレイヤー名を口にするヴェルフ。その間にレイヴンもパネルを見ていた。


「モルスちゃんも参加するみたいです」


「ほう死神も参戦――面白い事になりますね」


 パネルを見ながら愉悦を纏った声でエクストはその状況を歓迎していた。


「何が面白いんだい?」


 妙な事を口にしたエクストにヴェルフは問いを投げる。


「実力が匹敵するメンバーを含めると名前付きが既に八人参戦するようです」


 そんな事を唐突に口にしたエクストだがヴェルフには心当たりがあった。


「マノンちゃんとフォスちゃんか」


 口にした二人が自身に匹敵する実力者である事をヴェルフは知っていたからである。


「なら後二人いるんだろう?」


 人数が合わない事を指摘するとパネルを消してサングラスに触れながらエクストは答える。


「私の知り合いですよ」


「成程」


 得心を得たヴェルフに別の声が届いた。


「では」


 それはレイヴンであり、ヴェルフが目を向けると――背中に生えた黒羽がパタパタと動いている。それはまるで手を振るような動きであった。


「あんな動きもできるのか」


 それを感心してみる最中にレイヴンは足に力を入れる――合わせる様に黒羽が身体に収納される。

 それを直視したヴェルフは慌ててる動きに思えた。


「お先に失礼します!」

  

 声が届くよりも先にレイヴンは強烈な音を出しながら跳躍した。その飛距離は十五階建てのマンションを超える程であった。

 そして勢いが衰え始めると同時に黒羽を展開したと同時に――横に急加速するがヴェルフは違和感を感じる。


「何を……」


 目的地とは異なる場所に加速する光景を見たヴェルフは疑問を口にすると同時に――青空を過る飛翔体を確認する。

 それはレイヴンの近くで消えたが距離が遠すぎる為に()()()()では確認できなかった。


「【とお……】」


 気になったヴェルフは遠見の眼を使用しようと考えたが――エクストの一声が届いた。


「レイヴンのメッセージが届きました」


 上空にいるプレイヤーから情報を確認できるなら使用する意味が無いとスキル発動を取り消した。


「空飛んだ状態でもメッセージが出来る様だね」


 軽口を叩いたヴェルフを尻目にエクストはレイヴンの知らせを口にする。


「どうやら飛翔した矢先に空飛ぶモンスターと遭遇」


「あんな高い場所にモンスターがいるのかい」


 想像した事がないヴェルフは愚直にその驚きを口にする。


「私も初めて知りました」


 自身も知らない事を明かしたヴェルフはレイヴンからのメッセージの続きを口にする。


「攻撃を回避したら別のプレイヤーが地上から放った矢がモンスターに当たった。それが今起きた事の様ですね」 

 

「矢か」 


 矢なら空を飛ぶモンスターに最適だと認識しそうになったヴェルフだが――


「どうして矢を当てる事が出来たのだろうか?」


 遥か上空のモンスターに命中した事実に強い疑問を抱いた。


「当てる事が出来たからでしょう」


 その疑問にエクストは淡々と答える。


「まあそうだろうね」


 一周回って冷静になったヴェルフはエクストの言う事が全てかもしれないと思えた。


「可能なプレイヤーは私が知る限りは一人しかいない」


 そのままエクストは既に聞いた名を口にする。


「弓聖のアーチャーが今の矢を放ったと考えられる」


 ――また二つ名プレイヤーか。

 今日はよく異名を持つ者の名を聞くとヴェルフは感じた。

 

 ――やっぱり普通とは違うか。

 同時にヴェルフはプレイヤースキルの高さに驚かされた。

 とはいえそれだけでは根本的な部分が分からない為にその部分を聞いた。


「何であんな距離のモンスターを狙ったんだい?」


「おそらくイベントに向けてのウォーミングアップの為」


「遠くの敵を狙い撃つ練習――」


 エクストの予想を理解できたヴェルフだが疑問はあった。


「なら地上のモンスターでよくないかい?」


「それは私も同じ意見ですよ」


 同じ事を考えであったとエクストは明かした。


「更に増えますか」


 そのまま続ける様な事を口にする。

 僅かな言葉であったがそれを聞こえたヴェルフはある予想が完了していた。


「二つ名とそれに匹敵するプレイヤーはこれで九人の様だね」


 アーチャーがこれから開始するイベントに参戦する。それは確定的に明晰されたものであるとヴェルフも既に察していた。


「おそらく十人ですよ」


 しかしエクストは予想人数を一人追加した。


「なんで増えるんだい?」


「アーチャーがいるとなると雷刃らいじんのレイが参戦する可能性が高い」


 初めてヴェルフが聞いたプレイヤーの名であったが二つ名の方は聞き覚えがあった。


雷刃らいじん……始まりの七人の一人」


「それですね、レイとアーチャーはよく行動を共にいる。

 故にフレンドなのかもしれない。レイヴンからの情報です」


「あの子からか」


 どうしてエクストがそんな事を知っているのかと聞いた直後から疑問が生じていたヴェルフは即座にその理由を知る事になった。


「それとレイヴンからのメッセージには続きがありますよ」  


「続き?」


 状況の整理は完了していた故に何の事かとヴェルフが思う間にエクストは喋る。


「普通のプレイヤーなら寄らない高い場所に倒せるモンスターがいた理由。レイヴンも気になってた様で既に運営に質問をしていた様です。

 私達が気にしていると察する事ができたのでしょう」


 レイヴンがこちら側の思考を読めた理由を話したエクストはヴェルフが口を挟む間を置かずにその内容を明かした


「雰囲気として用意したようです」


「雰囲気――それだけなのかい?」


 口にする暇がなかったが隠し要素で倒せば面白い事が起こるとも考えていた為にあっけらかんとしていた。

 そんなヴェルフにエクストはサングラスに手を当てながら平常運転な様子で応対する。


「それだけですよ」

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